ツバメのお節介
ツバメの季節がやって来ました。
ツバメは大慌てで1年間の情報収集をするのです。
ツバメがいなかったこの1年にどんなことが起きたのか知らずにいられないのです。
知らないことが嫌なのです。
根掘り葉掘り聞きまわります。
「へー、あの子登校拒否になったんだ。」
「あら、あの子、そんな子には見えなかったけどね、一年前は。」
「えー!あの人とあの人、喧嘩していた時期があったんだ。」
「なんと!グレていたんだね。そんなことがあったんだ!」
最初は面白おかしく話していた人たちも、だんだんこの1年間を思い出すことになって、思い出したくないことも思い出したりして、思い出したくないことって大体良くないことだから気分がグレーになってしまうことになりました。
ツバメは全くあっけらかんに自分が知らないことが気に入らないので、なんでも細かく聞き回りました。
もう過ぎたことで、仲直りしていた人たちも、なんだかよそよそしくなったり、
グレるのはやめたのに話題に上っちゃったから急に世に中が嫌になったり、
登校拒否は卒業したのにまた学校が嫌になったりと、困ったことがたくさん起きました。
そんなことはおかまいなしに、ツバメは聞き回っています。
ツバメはただただ自分が知らないことがあるのが嫌なのです。
スズメが言いました。
「それを知ったから 何?」
スズメはずーっとここに住んでいます。
全て見ているのです。知っているのです。
忘れようとしている人も知っているのです。
「それを知って何をするの?」
ツバメは困ってしまいました。
知った、その先がなかったからです。
知ったからといって 何かするわけでもなく、ただ、自分が知らなかったことを知りたかっただけだから。
ツバメが困った頃、もう飛び立つ時期がやって来ました。
ツバメは慌てて飛び立ちました。
「また、来年ね!」
大きな声で誰にともなく言って、ツバメは飛び去ってしまいました。
後に残された人たちは、引っ掻き回されて、嫌なことを思い出す事になりました。
やったことは事実。受け止めなければいけません。
そして、毎日を大切にしようと決意するのでした。
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