伝説の。

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伝説の、と言ったら何を思い浮かべるだろうか。


人それぞれ違うだろうが、わたしは間違いなく
After the Rain 武道館公演 と答える。


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一言で言うならば、最高だった。夢のような景色だった。

そう、この伝説の始まりは2017年の3月1日の告知放送から。


「ボクら、After the Rain そらる×まふまふ 2人で、 日本武道館公演決定しましたぁぁぁあ!!!!」


信じられなかった。と言うより、大きすぎる衝撃に思考が停止した。

武道館なんてそんな大舞台、歌い手とは無縁だと思ってたそんな場所に、まさか連れて行ってもらえるなんて思ってもいなかったから。
アーティストとしての1つの大きな壁はここだと思う。
(今となってはどんどん急速に大きくなっていく中で、幕張メッセ、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、東京ドームと様々な名だたる会場に規模を広げていっているが、当時にすれば武道館は、それはそれは、もう凄いことだったのだ。)

歌い手界隈全体が盛り上がり、沸いた。2人は色んな方からのたくさんの驚愕のコメントを貰ってた。


初めは反対されたのだ。
今とは違いまだ遠征に理解のなく、時期的にも、親は猛反対。東京なんて遠いところ1人で行かせるなんてさせない。そう言って話すら聞いて貰えなくて。

でも、
行かないとダメだって思った。
親に土下座してでも、行かなきゃダメだって。
この2人の武道館に立つ姿は見届けないとダメだ。
説得させるためには何らかの結果でださないと と、死ぬ気で勉強して順位を何十番もあげた。もうそれしか見えてなかった。

それぐらいこの公演へのかける思いは大きかったし、期待していた。


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前日は、偶然というにはあまりにもロマンチックな出来事が立て続きに。
武道館の屋根の上に綺麗な二重虹が架かる。
After the Rainだ、そう呟くしかない。
2本の虹が明日から始まる公演を祝福しているように感じた。

そして、
彗星列車のベルが鳴る のミリオン突破。
この奇跡の重なりが私の心をより震えさせた。武道館公演の良いスタートをきる。


当日。
「武道館」そう掲げられた看板の下に、
大きく存在感を放つ「After the Rain」の文字。
その看板を見ながら同じリスナー達とリハ音を聴いた。



夏の空を浴びてた。



会場の中に入れば、
白いもやで覆われていた。
360度ステージ。中央にはカチコチ…とリアルタイムの音を立てて刻む時計つきの大きな箱型オプジェ。
2日目は、1日目と変わり半時計周りで秒針が動く。
AtRの2人とリスナーの、時を、刻んでいた。

自分の席についてすぐ、2人の結成ブログを読んだ。落ち着かなかったのだ。


「音楽のパートナーとしても友人としてもこれ以上ない人間に出会えてよかったな〜。直接言うのは恥ずかしいからあんまり言ったことはないけどね。」


「たび重なる悪意や暴力にボロボロにされてしまい 絶望していたところに手を差し伸べてくれたのがそらるさんでした。人の目がどうしても怖くて電車にも乗れないくせに、この間ステージで前を向いて笑うことができたんです。」


2人の始まりを読んで、これから誘われる世界への準備をした。


リスナーの一体感は凄かった。
予定開演時間近くになれば、立ち上がる人々。灯るペンライトたち。

そして、始まるコールの声。

時計の秒針に合わせて、

『ごー!よん!さん!にー!いちっ!!!』

しかしなかなか2人は出てこないのだ。
会場の、この公演を、2人を、心待ちにするみんなで笑いあった。何度も さんにーいち と、同じコールをした
これ以上の暖かく今かと期待する熱量が集うことがあるのかと。
あの温度感、空気感、音、声、笑い、今でも忘れられない。忘れることが出来ない。




中央の箱がゆっくりと、開く。
AtRの2人が、確かに武道館の舞台に立ってた。
この事実に、涙が止まらなかった。私はこれを見に来たのだ。これを見るために、この数ヶ月必死で頑張ってきたのだ。


2人は、着ている羽織をはらりと翻す。

伝説の幕開けだ。


360度ステージをクルクルと駆け回る。
ギターをガンガン掻き乱す。
夏に染ってゆく。

2人はすれ違う度に、想いを確かめるように、共有するように、ぶつけるように、ハイタッチをする。


桜花ニ月夜ト袖シグレでは、後にも、たぶん先にも今までで1番の満開の桜が咲いていた。
満開の愛の桜が、2人を余すことなく全面から取り囲んでいた。
「綺麗だよ、ありがとう」って2人は遠くを見つめるようにはにかむ。


「間違いなく僕が、世界で1番楽しい体験をしたのかな、と」
「(オレが1番だよ と自分を指さす)」
「いやいや僕ですよ」

と幸せの競い合いをして、
その後に おかしいね って笑い合う2人が愛おしくて、愛おしくて、したかなかった。

私の幸せはこれなんだな、と心から思った。


そして、夢のような2日間の最後を締めくくるのは、「彗星列車のベルが鳴る」
2人も、リスナーも、熱の昂り具合は最高潮を超えていた。あつかった。

「さーよーなーらーのセリフもなくー」
と大事そうに目を瞑って歌い始める。

____世界中の星を集めても、霞んでしまうぐらい君は綺麗だ


紛れもない、AtRの世界だった。

2人からも 終わって欲しくないな 最高だったよ ありがとう という気持ちがいたいほど伝わってきた。
なぜわかる?とか、そんなものは問わないで欲しい。声が、表情が、熱量が、この全てを表していたのだ。


あの夏の空の向こう側。


そう歌い上げたとき、
2人は大きな パァン! と音が立つような固いハイタッチをした。

そして流れるように、自然に、


ハグをした。


そらるさんから近寄っていき、軽くポンポンとしたハグ。

普通に、離れようとしたのだ。

そうしたら、
まふまふさんが瞬時に、離れようとしたそらるさんを、
また強くぎゅぅうっと抱きしめ返す。

なんというか、お互いの貢献を讃え合うものから、情熱的なものに変わった気がした。

軽いハグじゃ名残惜しかったのかもしれない。
それだけじゃ足りなかったのかもしれない。
彼から、ぎゅってしてくれた嬉しさからかもしれない。

なんにせよ、離してあげることができなかったのだ。
逃せなかったのだ。
抱きしめ返すことしか出来なかったのだ。
それしか選択肢がなかったのだ。
あの行動は脳は通してない、反射だ、本能からだ。

幸せって顔をしてた。
こっちが恥ずかしくなるぐらいの、目を瞑って唇をかみ締めた幸せっていうクシャってした顔。
強く抱きしめられたそらるさんは、片足をあげるぐらいの体制を崩す。
声にならない、言葉に出せない、溢れ出る想いを伝えあってた。
ハグをしないと、どうしようもないぐらいの想いだったのだ。
もう、こうするしか、どうしようもなかったのだ。
2人は、武道館公演の成功を心から喜んでいた。
安心していた。感動していた。
2人だったからこその独特な特別な感動だ。

会場はどよめきあった。
私は自分の見ているものが信じられずに、ただ立ち尽くした。唖然とした。理解するのに時間が必要だった。
状況が分かった途端、崩れるように泣いた。
でも、この大切な終わりは見ないと、という使命感から頑張って立った。止まらない涙を拭った。
もう何もかもがどうしようもない、そんな空気感。


2人はマイクを置く。
バックミュージシャンはもういない。
ステージには、2人しかない。

手を固く繋ぐ。

会場がシン…と、静まりかえる。

「ありがとうございましたっっ!!」と2人の声が響き渡る。汗を飛ばすように深深とお辞儀をする。

お互いの方にしっかり顔を向けて目を合わせ、最後を噛み締めるように、ハイタッチをする。

そして、階段を降りていく。
後ろは一切振り返らずに、前だけを向いて、進んでいく。
2人は進んでいく。

世界で1番かっこいい背中だと思った。後ろを振り返らない大きな2つの背中がただひたすらに、かっこよかった。眩しかった。

出会ってくれてありがとうって思わず口から零れた。そして自分も2人に、出会えてよかったと思った。これは偶然であり必然だ。


終演後は、同じように応援する仲間達と泣きあった。抱き合った。お互いここまで大変だったけど、来てよかったねって。

私は生きる希望をもらえた。
明日からも頑張ろう。

「一生好きでいる」なんて、そんな不確かなことは言えないけど、2人のことはずっと好きなんだなって思う。そんな大きな矛盾が言いたくなった。

ふと、武道館を振り返る。


キラキラしてた。内側から光ってた。この公演の素晴らしさを表すかのように。


今でも思い出す、そんな伝説の夏の日。
2人は、ずっとずっと、進んでいく。


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この人となら音楽を共にしてもいい。舵を任せてもよい。
そして、武道館というステージで感極まったハグが出来るような人物に出会える人がこの世の中に何人いるだろうか。
“いざとなったらこの人”そんな人に出会えた2人が、私は心底羨ましい。

サインを貰って喜んでるような1ファンだったところをスタートとし、
「この人、僕の相方です」と堂々と隣に立つまで上り詰めた漫画のようなお話が現実にあるだろうか。
“音楽のパートナー”という位置づけではあるが、“音楽は人生”と言っている人にとって、
それはもう人生に値するパートナーなのだろうな、と思う。

知れば知るほど、大好きになる。
そんな2人を今日も応援していく。





改めて、結成4周年おめでとう🌸
あなたたち2人のユニットを応援してきたこの4年間は、濃くて、濃くて、とても楽しかった。
色々な経験と、新しい感情を教えてくれた。
2人ならどこまででもいけるよ。
これからも雨の後の世界をずっと見せてね。
大好きです。


まりん。