パートナードダンスはパーキンソン病の運動・認知リハビリテーションに最適である

Madeleine E. Hackney博士
エモリー大学医学部准教授
アトランタVA視覚・認知神経科学リハビリテーションセンター研究員

—English belows Japanese—

パートナードダンスは認知機能を働かせ，精神を刺激する，運動による対話です．

パートナードダンスはパーキンソン病の運動・認知リハビリテーションに最適であるパートナードダンスは認知機能を働かせ，精神を刺激する，運動による対話です．

パーキンソン病の進行は認知機能に影響を与えます．
•治療法は？身体機能と認知機能のトレーニングを同時に行うことで，認知機能は改善します．
　•動物実験の結果は，
身体的課題と認知的課題を組み合わせた
リハビリテーションを行うことが，
脳の構造・機能に対して長期間良い影響を
与えるために最善である可能性を
示しています.
これは，神経の可塑性によって
もたらされます．

私たちが何をする時であっても，運動と思考は互いに結びついています

•運動と認知の統合：
•考えていることは行動となって現れます．また，脳の運動システムは精神的な処理にも積極的に関わっています．

神経の可塑性
•脳には，経験に基づいて脳細胞間での結合を変化させる力がある
•解剖学的，分子的，遺伝的，構造的，機能的レベル
•結合の増加，神経栄養因子と神経伝達物質の放出
•皮質再現の再構成，シナプス形成，シナプス増強
•脳を新たな活動や経験に挑戦させましょう
•神経細胞間での新たなシナプス結合
•神経細胞間でのより良い情報伝達
•挑戦を「継続する」ことによって，良い作用は増強します．すなわち，定期的な運動ー認知　運動療法が大切です！

ダンス療法：改良されたタンゴ
•パートナーダンス：洗練された，それでいてとっつきやすい ，触覚によるコミュニケーション方法です．•リーダー（運動の計画者：IG）とフォロワー（外部からの合図に従って動く人：EG）の間で，運動の意図と目標を伝達します．加齢モデル・疾患モデル両方の運動能力トレーニングにおいて，ダンスや他の情報伝達性トレーニングでは，複数の身体感覚が相乗的な補助をもたらします．

ダンスは，精神を刺激し，認知機能を働かせます

ダンス：説得力のある認知機能リハビリテーションの手法
•ダンスは，想像と創造的動作を行わせることで，認知プロセスを働かせます
•ダンスは空間機能や他の認知機能を改善させる可能性があります
•心血管フィットネスを増量すると，空間学習に関連する脳活動に変化が生じました

ダンスの構成要素は認知機能に良い作用をもたらす可能性があります

記憶
➡️手順の記憶

注意/ワ-キングメモリ-
➡️パートナードダンスはリアルタイムで合図を受け止める

遂行機能
➡️計画，組織化，セットの転換

視空間認知
➡️パートナー間の空間的関係，セットの転換

創造性
➡️芸術，新しいステップ

➡️➡️➡️➡️➡️認知機能トレ-ニング

​

パートナードダンスは運度による対話ですか？

どのように行われますか？

パートナードダンスでは，触覚による人と人との相互作用（HHI）によって，身体機能と認知機能が統合されます

HHIは非言語コミュニケーションにより，触覚システムを刺激します
•手，体幹，腕において力を掛け合うことによって，パートナー達は感覚的/触覚的なコミュニケーションをします．これによってパートナー達は，協調した身体運動を行う際の，運動の目標を共有します．
•HHIでは，リーダーは腕や体幹への圧力や接触を通して，
フォロワーに運動の目標をはっきりと伝えなければなりません．
•フォロワーはリーダーの運動の意図を読み取って実行します．
•しかし，フォロワーは「逆リード」をする，すなわち瞬間的にリーダーのように振る舞うことができます．
•フォロワーは，リーダーによって作られた運動プログラムを改良することができます
　ーこれは，治療の場面で見られること

人と人との相互作用による運動操作

•リーダーによるリード，フォロワーによる追従と逆リードが行われる時には，意識から運動への変換が行われます．また，触覚による人と人とのコミュニケーションが思考過程に影響を与えます．この行為の明確な目標は，コミュニケーション・会話です．
•パートナー達が触覚フィードバックを積極的に感じ取り，認知機能を働かせることにより，共同の目標に到達することができます．

実験システム
•パートナードステップ課題をこなすペアの例
•右がリーダー，左がフォロワーです
• 特別に作成した運動検知装置
•中心部に6軸の荷重センサー
•両端には球形のゴム製取っ手がついています

すべてのペアは，比較的小さな力（10-30 N）の伝達によって課題をこなすことができました．
•A. ペア間で伝わる力は，予測しにくいステップを踊る時，熟練ダンサー同士が踊る時に大きかったです．
•B. ペア間で伝わる力の最大値は，初心者ダンサー同士が踊る時に比べて，熟練ダンサー同士が踊る時に，統計学的に有意に大きかったです（p = 0.01）これは，予測しやすいステップ，予測しにくいステップのどちらを踊る時も同じ

結論：協調的な身体運動を行う時，パートナー間で運動の目標（いつ，なにをしたいか）を伝達することは，比較的小さな力によって可能です
•この小さな力の強さは，踊り手の運動経験によって異なります
•この力は，運動の目標をはっきりと伝えるための合図となります

熟練ダンサーが，触覚による相互作用によってパートナードステップをこなすロボットを評価しました
(Chen et al., Plos one 2015
•熟練ダンサーは，触覚による相互作用のみでロボットと踊ることができるでしょうか？
•ダンサーは，ロボットが自分にうまくついてきていると思えるでしょうか？
•ロボットとの相互作用は，「ダンスのようで」，楽しいものでしょうか？

実験システム，ロボット”Cpdy”およびダンパーシステムについて
•目隠しされた熟練ダンサー（10人）が，Codyの手を持って，ドラムの音に合わせて前進/後退のステップをしました
•ロボットの移動に対する入力ゲインは「高」「低」に変更できます
•Codyの腕の硬さは「高」「低」に変更できます
•ダンサーとロボットの間で伝達されている生物力学的な力を計測しました。

主観的なダンスの質とコミュニケーションに
ついてのアンケートを実施しました

「全くそうは思わない」から「強くそう思う」までの5段階の選択肢から回答を選んでもらいました
Chen et al., Plos one 2015
ダンスの質についてのアンケート
質問：ロボットは・・・
カテゴリー
運動の意図の伝達
接触をうまく保てていた
コミュニケーションをしやすい相手であった
私が行こうとする方向を理解できていた
私が望んでいるスピードを理解できていた
私の移動したい距離を理解できていた
一緒に動きやすかった
姿勢をよく保っていた
良いタイミングで反応してくれた
運動の技術
私に突進してくることはなかった
重すぎた
私が望んでいるスピードで動いてくれた

高齢者とロボットとのパートナードステップ相互作用．その実現可能性と高齢者による受け入れ
•平均年齢71.5歳の，16人の健康な高齢者を対象とした研究です
•参加者はロボットの手の部分に力をかけて，ロボットをリードしました
•参加者はパートナーダンスを元にしたエクササイズの相手として，ロボットを受け入れました
•ロボットとのダンスは，役に立ち，行いやすく，楽しいものと感じられました
•「私はダンスが大好きです．．．もし踊る相手がロボットしかいなければ，私達
結果
•ロボット”Cody”を，目隠しされた熟練リーダーが触覚刺激で伝えるステップのタイミング，大きさ，方向へ反応する（フォロワーとして受けとれる）ように，プログラムすることができました
•ダンス専用ではないコントローラーを用いましたが，触覚による相互作用のみで行われるパートナーダンスの協調運動を制御できました
•社交ダンスがそうであるように，触覚刺激のみによる情報伝達でも，複雑な動きを伴うパートナードダンスを実行するのに十分でした
•リーダーを務めた人達は，ロボットとのダンスは人とのダンスと変わらないと答えました．
•生物力学的な計測では，人間とロボットの間で運動の同調が認められました．

今後の研究
•ダンスでは，身体的要素と認知的要素が統合されています．ダンスは，たとえロボット相手に踊るものですら，エクササイズの最中や直後に行われるコンピュータを使った認知機能トレーニングよりも魅力的で，また楽しいかもしれません．
•今後の研究では，ダンスに本来備わっている”人と人との相互作用”がもつ，精神刺激作用，認知機能動員作用，そして神経保護の可能性について明らかにし，そしてこれらの「会話」をリハビリテーションの技術として利用できるようにすることが望まれます．

Why partnered dance might optimize motor and cognitive rehabilitation in Parkinson’s

Madeleine E. Hackney, PhD
Associate Professor, Emory University School of Medicine, Department of Medicine
Research Scientist, Atlanta VA Center for Visual and Neurocognitive Re

Partnered dance is cognitively demanding, mentally stimulating movement conversation
•PD epidemic impacts cognition
•Therapy? Simultaneous combination of physical and cognitive training to improve cognition.
•Animal literature shows rehabilitation combining physical and cognitive challenges may be most effective in inducing beneficial, lasting effects on brain structure and function through neural plasticity

Movement and thought are intertwined in everything we do
•Motor-cognitive integration:
•cognition is embodied in action, and the motor system actively engages in mental processing

Neural plasticity
•Brain’s ability to modulate connections between brain cells, based on experiences
•Anatomical, molecular, genetic, structural, functional levels
•Increased synthesis, release of neurotrophins and neurotransmitters
•Reorganization of cortical representations, synaptogenesis, and synaptic potentiation
•Challenge brain with new activities & experiences
•New synaptic connections form between neurons
•Better communication between neurons
•Benefits increase when challenges are “on-going”, ie. Regular motor-cognitive movement therapy!

Dance therapy: Adapted tango
•Partner dancing: sophisticated, yet accessible system of tactile communication that conveys motor intentions and goals between a “leader” (planner of movement: IG) and “follower” (externally cued mover: EG).
•Dance and other communicative training likely provide a synergistic multisensory adjuvant to motor skills training in both aging and disease models
 

Dance relationship to mental stimulation and Cognition Demand

Dance: cogent vehicle for delivering cognitive rehabilitation
•Dance engages cognitive processes through imagery and creative movement
•Dance may improve spatial function and other aspects of cognition
•Increased cardiovascular fitness modulates brain activations associated with spatial learning

Dance components may contribute to cognitive benefit

•HHI stimulates the tactile sensory system via non-verbal communication
•Interactions forces from hands, torso or arm form a sensory/tactile communication channel about movement goals between partners during cooperative physical interactions.
•HHI requires leader to convey explicit motor goals to a follower through pressure and contact at arms or torso.
•Follower infers and enacts motor intentions of the leader
•However, followers can “backlead,”-momentarily acts as leader
•follower can produce a refined version of the movement structure initiated by the leader –SEEN IN THERAPEUTIC SITUATIONS
 

In Partnered

Experimental setup, CODY and the model of the damper system
•Blindfolded expert dancers (N=10) performed a forward/ backward walking step to drum beat while holding Cody’s end effectors
•HIGH and LOW admittance gain of the robot's mobile base controller
•HIGH and LOW stiffness of Cody’s ARMS
•Measured biomechanics of interaction

RESULTS
•Cody, a robot, could be programmed to respond to (i.e., follow) touch cues given by a blinded, expert human-leader that indicated timing, amplitude and direction of steps
•Admittance controller nonspecific to dance enabled cooperative motion during partner dance using only haptic interaction
•Touch information alone was sufficient to perform partnered dance with complex movements, similar to what social dance teaches
•Human leaders reported dancing with robot more or less similar to dancing with a human.
•Biomechanical measures indicated motion synchrony between the partners.
•Expert dancers rated their physical interaction with the robot favorably when human-robot biomechanical metrics of synchrony were greatest and when interaction forces were lowest

Future Studies
•Physical and cognitive elements are integrated in dance. Dance, even with a robot, may be more engaging and enjoyable than computerized cognitive training during or serially after exercise.  
•Future research should investigate mentally stimulating, cognitively engaging, and potentially neuroprotective properties of HHI intrinsic to dance and leverage these “conversations” as an engaging form of rehabilitation