やる気なくて、ルーズで下手くそな、孤高の世界
飲み屋とかうどん屋とかでもそうですが、めっちゃ古ぼけて椅子も机もカウンターもボロボロなのに、なぜかめちゃくちゃ美味しいという店があります。超名店と呼ばれるところにそういうところは多いです。
すごく綺麗で完璧すぎる高級なお店。そこの調理法とか店舗内装もすごいかもしれませんが、それはお金をかけたら真似できることは多い。
しかし。
あのボロボロの汚らしいのにめちゃくちゃ美味いというお店の場合は、真似するのが難しい。ルーズでだらしないけど味に深みがあるというのは、これは真似するのは至難の業なんです。
ローリングストーンズの何がすごいかというと、彼らは、黒人のダーティーでルーズで、ほんのちょっとズレたりハズしたりするメロディやリズムを完璧に真似できたことにあります。
鮎川誠がNHKの音楽番組に出てきて言ってたのが「キース・リチャーズもね、あんなに長年ギターを弾いててね。なんで上手にならないんかなあって思いますよね。あの上手にならないところがすごいんですよね。」とか言ってて、そうそう(笑)と笑ったことがあります。
ズレたりハズしたりちょっと間違ったりしたら、そこには不思議な温かみがふわっと出たりしますが、ストーンズはそれができる。あれはもう天才としか言いようがない。
クラシックのピアノやバイオリンの高度な演奏もすごいけど、もっとすごいのはビル・ワイマンのやる気のないベース、ねじれまくるキースのギター。全然存在感を出さないのに確かにそこにいるチャーリー・ワッツのドラム。あれがすごいんです。
「ビル・ワイマンって、ライブ映像見てても、指、動かないですよね。あれって演奏してるんですかね。」
「してないやろ。」
「じゃあ何やってんですか?」
「観客席の女の子をステージ上から見よるだけやろ。」
「やっぱりそうなんですね。」
ローリングストーンズ
1976年
「BLACK & BLUE」に収録されたCherry On Babyという曲が大好きです。
何その、やる気のない演奏。
下手すぎるダラダラした演奏。
ジャマイカのレゲエソングのカバーなのに。
ジャマイカ人よりだらだらしてる。
その下手くそでやる気なくて
ルーズとだらし無さこそが。
孤高のストーンズの世界。
なのです。
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