連載・奇書解読 現代魔術の源流「黄金の夜明け団」入門 を読む 第2章編
フリーメーソンのルーツの一つ、19世紀に結成された黄金の夜明け団。
謎に包まれたその活動経歴を明らかにする著作、現代魔術の源流「黄金の夜明け団」入門。
その内容を紹介していく連載です。
今回が第2章の紹介となります。
まず、この第2章では、黄金の夜明け団が結成された歴史背景について言及してあります。
19世紀よりも前の世紀には心霊術・幻想術、霊視・幻視の能力者の出現が多くあったことを指摘しています。そして、かなりそれらが具体的に書かれてあります。これはなかなか珍しい記述と言えます。
霊能力者がいたとか、そういうことは普通の歴史書には書かれないことです。無視されて当然のことであり、まともな歴史家は取り合おうともしないです。
しかし、ここでは、それがかなり詳しく書かれている。なぜか。オカルト団体としての共通ということもあるかも知れませんが、それ以上にその当時のオカルト主義が無視できない社会現象的な大きさだったことが伺える内容です。
まともな歴史家はオカルトを無視する。ところが、そのまともさが、逆に仇になる場合があります。ある奇怪なことであったとしてもそれが一定の数や量を超えてくると立派な社会現象でありムーブメントです。この第2章において、著者のチック・シセロはこの霊能力者の多出を軽く見るのではなく、その深刻さを指摘しているのです。
このことは別の面でも大変に重要なことで…この霊能力者な多発という奇怪な歴史背景を理解して初めて、哲学者カントの「純粋理性批判」が、「あの当時」に書かれた意味というのがわかると思うのです。話が脱線するのでここではこれ以上触れないでおきますが、18世紀から19世紀にかけてかなり大きなオカルト・ムーブメントがあったことがこの第2章でわかります。
そして、その巨大なオカルト・ムーブメントの中にあってヘルメス団体、フリーメーソン たちはどのような立場を取ったのか、ということが書かれてあります。
フリーメーソンたちは誰かを英雄崇拝したりするのではなく、自己中心的な思想になるのでもなく、あくまで自分自身の霊的な成長を求めた。数多くのオカルト団体があったにもかかわらず、後年に黄金の夜明け団が人数は少なかったにもかかわらず、西洋オカルテイズムの中でも圧倒的な支持を得たのはその人間性や志の高さにあった…としています。
そして、黄金の夜明け団が結成されていく過程、その主要メンバーが次々と紹介されていきます。資料としてはまさに超一級品と言って良いでしょう。
そして、結成から分裂、解散に至るまでにどのような経緯があったかを、ここでは客観的な視点で解説。
黄金の夜明け団の結成された当時の歴史背景から、解散に至るまでの問題点などを浮き彫りにさせる第2章。大変に読み応えがあります。
次回は第3章の紹介をしたいと思います。
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