見出し画像

連載ビートルズ 全アルバム解説 pt.2

ミュージシャンにも色々なタイプがいて、自分の好きな音楽だけを追求する人や(自己満足型)、時代の流れを意識してトレンドに乗ろうとする人や(トレンド型)、多彩にアイデアを生み出して何種類ものサウンドを生み出す人や(カラフル型)、アイデアが枯渇して苦しみ始める人(収縮型)…etc 色々な人がいます。ビートルズは周囲から色んなことを期待されて、その要請に色々応えないといけなかったという意味でトレンド型でありカラフル型でした。

そんなビートルズはどのアルバムも素晴らしくメロディに溢れた名曲が並んでいますが、その中身はさらに二種類に分けられるのではないかと私は思います。

それは
①本人たちが本当にやりたかった音楽。
②周囲の要請でそれを作らなければならなかったという仕事的音楽。

そして、意外にも仕事でやらなければならなかった②の音楽の方がクオリティが高かった…というのが面白いところなのですが、それについてまた後日に書きます。

さて。本題です。

ビートルズは3rdアルバム「A Hard Days Night」でいきなりその音楽的頂点を極めることになりました。ビートルズの魅力って何?それは豊富なメロディとハーモニーです。それを抜群のレベルで完成させました。何より、この「A Hard Days Night」はメンバー四人が伸び伸びと本当に何の制約もなく音楽をやっているそのイキイキ感に満ち溢れています。そして、そのイキイキ感を最も出しているのがここではジョン・レノンなのです。

先に書いてしまうと、ビートルズはジョン・レノンが音楽的というよりも芸術的、政治的な方向性に向かっていくことによりバンド全体の音楽も運命も何もかもが変わっていくことになるのですが、「A Hard Days Night」このアルバムは純粋に、天真爛漫に音楽をパーっとやってくれるビートルズが体験できる数少ないの一つだと思います。そして、純粋に音楽だけをやるジョン・レノンというのはすでにこの頃が最後になりつつありました。

※「仕事的音楽なんて、まっぴらごめんだ。オレたちは自分のやりたいように音楽をやるんだ」というシンプルなビートルズは1968年の「WhiteAlbum」で再び帰ってきますが、しかし、その時はもう四人はバラバラでした。四人が一体で純粋…という数少ないアルバムが「A Hard Days Night」なのです。

ビートルズはこの頃すでにスーパースターの階段を登っていました。人気ミュージシャンに待ち受けている試練それはコンサートです。各地をコンサートして回るツアーです。世界的な人気者になったビートルズに待ち受けていたのは壮絶なワールドツアーでした。

特にアメリカでの成功とアメリカでのツアーはビートルズのビジネスの根幹を支えることになり、ビートルズは仕事として「アメリカ人にウケる、アメリカで売れる」音楽を作ることが求められ始めます。4thアルバム「For Sale」を聞くとアメリカン・フォーク、アメリカン・カントリーの音楽性を聞くことができますが、これはビートルズがビジネス的な要請を受けてそれをこなした結果だと思います。

イギリスのリヴァプールから飛び出してプレスリーごっこをやっていた少年の姿はもうここにはありません。「For Sale」のジャケットを見てください。ここにはもう立派な世界的ミュージシャンの、ビジネスマン(アイドル)としての風格溢れる四人が写っています。そして、四人はしっかりと目線をこちらを向いてくれています。そのうち段々とこちらを(ファンの方を)見てくれなくなるので、ジャケにも注目しながらこの後を追っていきたいと思います。
(続く)

(※2014年FACEBOOKの記事を転載)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?