再発見ジャケットアート 第二回 ロドニー・マシューズの世界
アーサー・C・クラークをはじめとするSF文学が華やかに咲き誇った第二次世界大戦後の世界。SFムーブメント、SFファンタジーの多くの作品が生まれました。「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」「スターウォーズ」etc 日本の「ウルトラマン」や「ドラえもん」などもこの流れの中に入ると思います。
そうした宇宙SFブームは時間軸的には「未来」を示すはずですが、古代神話の復活や、古典的な文学センスの復興といったことも同時に起こりました。古代的な神話世界などが不思議と宇宙的未来とシンクロしていく光景がありました。それこそドラえもんは恐竜世界に行ったりアトランティス神話のような世界に行ったり、ウルトラマンは古代怪獣と戦ったり。なぜかSFと古代神話は真反対のように見えてよくマッチするのです。
とても眺めていて面白いと思うのが、ジャケットアートの作家、ロドニー・マシューズのデザインです。
ロドニー・マシューズの世界は基本的にSFです。
しかしそうとも言い切れないところもあります。幻想ファンタジーのジャケットデザインには動物や昆虫が登場します。それがとても神話っぽいのです。
動物や昆虫が変化(へんげ)して。
空間は宇宙観あるけど。
でもどこか神話っぽい。
それがロドニーの世界です。
デザインというか描写というか絵のタッチというか。それはすごく独特で、Ammon Duul II、URIAH HEEP、ASIA、MAGNUM、PRAYING MANTISなどのヨーロッパのロックバンドのレコードジャケットをあちこち手がけてきました。おそらく日本のロックファンに最も馴染みが深いのはPRAYING MANTISの1stアルバムでしょう。
この未来的なんだか古代的なんだかよくわからない世界観がとてもユニークなのと、とても繊細なデザインや鮮やかな色使いはとても魅力的だと思います。一枚でいいから原画が欲しいなと思ったこともありましたが、個展が開かれたとか聞いたことがないので、長年のファンの私もレコードを手に入れて眺めるまで、です。
そのロドニー・マシューズはLPからCDになった時にものすごく怒っていました。
「CDなんて、なんだあの大きさは?!アートであることを拒否している!」
そんなロドニーの怒りの声は届くことなく時代はCD化の波へ。しかしそのCDもやがてダウンロードやYouTubeの方へと移り変わっていきました。
ところが。
何やら最近、よくわからないニュースが聞こえてきます。レコードの生産が復活している? にわかには信じられないし、私の周囲でレコードなんか買ってる人いないから何かの間違いだろうぐらいにしか思わないのですが、もしそれが本当だとしたら、今のこの時代にロドニーはなんとコメントするだろうか、なんてことを考えます。
ダウンロードは便利だしとても良いと思いますが、このジャケットアートの魅力が入っていく隙がありません。
デジタルサウンドとジャケットアート。
どこかに両者がうまく融合できるところはないものかと思う次第です。
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