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連載ビートルズ 全アルバム解説 pt.1

昨年末に書いたビートルズの記事が好評だったみたいなので、もう少し詳しく突っ込んだ記事を書いてみたいと思います。

ビートルズはその音楽スタイルとキャラクターをコロコロと変えたアーティストで、「前半と後半」あるいは「前期・中期・後期」などその活動時期を分けて捉えることができます。

私は残された約10枚のアルバムを2枚づつに区切って眺めた時に最もよくビートルズの変化がわかると思っているので…その私流の捉え方で解説させていただきます。興味ある方は長文お付き合いください。

ビートルズのまず最初の2枚はデビューアルバム「Please Please me」とセカンドアルバム「With The Beatles」です。いわゆるアイドル時代の2枚ですが、この2枚に共通しているのは黒人音楽大好き少年の姿勢を思いっきり表現した…ということです。これは同時期に同じくイギリスからデビューしたローリングストーンズやザ・フーもみんな同じでした。この頃のイギリスは、いわゆるエルヴィス・プレスリーを聞いて育ったロック第二世代の時代で、早い話、みんな一斉にプレスリーごっこをやっていたのです。

エルヴィス・プレスリーはアメリカの南部メンフィスに戦前に生まれた白人でした。まだキング牧師もマルコムXもいない戦前のアメリカ南部。そこは黒人差別は当たり前の世界で、軽蔑こそあれど黒人を手本にするなどというのは考えられない世界でした。黒人はどんなに頑張っても調理の厨房からは出られないと言われた時代。しかし、そのアメリカ南部で「何言ってんだ、あいつらのやってる音楽は超カッコいいじゃないか」と周囲の批判をもろともせず、トラックの運転手だった若きプレスリーは、「黒いリズムで黒く歌う」という黒人を手本にした音楽をやって見せたのです。そして、これが世界中で売れました。今でこそマイケル・ジョーダンやエディ・マーフィーの黒人が人気スターですが、その最初の下地を作ったのは間違い無くエルヴィスでありその勇気と行動は賞賛して余りあるものだと思います。そして、若き日のビートルズもローリングストーンズもこのエルヴィスの作った波に乗ったというわけです。

ビートルズの最初の二枚は「黒人のソウル、ロックはサイコー!」という弾ける無邪気さが特徴です。


それまでは美しいけど退屈なクラッシック音楽や民謡、あるいは宗教音楽なんかがメインだったわけですが、ここにエルヴィスのJailhouseRockやビートルズのI saw her standing thereが鳴り響いたのですから当時ビートルズを聴くやつは不良と言われたのはよく想像できます。

で、問題はこの後です。

例えばローリングストーンズは黒人音楽が大好きで大好きでたまらず、そのままその音楽路線をずっとまっすぐに進みました。ストーンズの1969年の「Let It Bleed」を聞くと「これが白人って嘘だろ。」というレベルにまで黒くなってしまいました。しかし、ビートルズは違いました。彼らは黒人音楽路線をこの二枚であっさり終結させ、次の路線へと移ります。この身軽さと転身の速さが他のグループとの最大の違いとなっていきます。(続く)

(※2014年のFACEBOOKの記事を転載)

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