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音楽コラム ボブ・マーリィって何者?


「ボブ・マーリィって何者??」
ボブ・マーリィの本名は、ロバート・ネスタ・マーリィ。

彼は子供のころから、ラスタファリというアフリカ回帰志向の独特の宗教思想(?)を学んでいました。しかし、その思想性は初期の音楽活動には出ていません。初期の音楽はウェイラーズという名前のコーラスグループでの活動で、とてもシンプルなボーカルサウンドでした。


転機が訪れたのは、コーラスグループを一旦解散させて、ボブがアメリカに渡ってからです。奥さんになるリタという女性の後を追って渡米するのですが、1960's当時のアメリカでボブ・マーリィは大きく二つのものを吸収することになりました。ひとつは当時アメリカで全盛だったロック・サウンド。そして、もうひとつはマルコムXの思想でした。その二つを吸収した後ボブ・マーリィはジャマイカへと帰国します。


ジャマイカに帰ったボブ・マーリィはまったく別人になっていました。ゆったりしたボーカルサウンドは捨て去り5人編成のバンドを結成。歌詞もラブソングは歌わず「黒人よ立ち上がれ!アフリカへ帰還するのだ!」というような政治的メッセージを含むものになっていました。髪型がドレッドヘアになったのもここからです。この5人編成バンドがいわゆるボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズであり、初期のコーラスだけやってたウェイラーズとは区別されます。ベースとドラムを担当するリズム隊には「ジャマイカの奇跡」と呼ばれたカールトン・バレットとファミリーマン・バレットのバレット兄弟を迎え、名実ともにジャマイカ最強の軍団として世界へ飛び出すことになりました。


ちなみにバレット兄弟は当時アップセッターズという別グループに在籍していて、それを勝手にボブ・マーリィがスカウトして引き抜こうとしたために大ゲンカになり、「おい、ちょっとツラ貸せや」みたいになって、バレット兄弟の親分リー・ペリーに呼び出されたボブがしこたま怒られたらしいのですが、最後はなぜか丸く収まって、ボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズのアルバムはプロデュースがリーペリー、リズム隊がバレット兄弟という結果的にジャマイカ最強の布陣になって作られています。


1970'sに生まれて猛威を振るったパンクロックなるジャンルも実はこのジャマイカのレゲエの影響下にあり、後に登場するヒップホップなるジャンルも最初の種火を付けたのはジャマイカ人でした。それまで白人の文化がジャマイカに伝来して影響を与えていたのが逆になり、カリブの孤島ジャマイカから発せられるカルチャーがアメリカ、イギリスなど白人の文化に影響を及ぼすようになりました。


ボブ・マーリィが特別視されるのは彼の言動によって実際に政治に影響を与えたりしたことで、アフリカの独立運動にも影を落としました。「音楽が世界を変える」ということをかなり現実に近い形でやっていた稀なミュージシャンでした。似たような立ち位置にジョン・レノンがいましたが、不思議なことにジョン・レノンもボブ・マーリィもほとんど同じ時期に死去していて、この2人の死をもってカウンターカルチャーとしての音楽シーンは終わりを告げ、1980'sという新しい時代を呼び込む形になっています。

https://youtu.be/-Eu1KivMilk


最後に。ボブ・マーリィのアルバムは結構な枚数があり、どれから聴けばいいか迷うところですが、2000年以降に発掘された未発表音源がついた2枚組の「デラックス・エディション」のシリーズは全ておすすめです。特に「Burnin'」のデラックスエディションのライヴ音源などはどうしてこれが未発表だったのか理解に苦しむほどの内容であり、バレットブラザーズとボブ・マーリィの歌声の組み合わせはまさに至宝の音源と思います。



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