見出し画像

プリンス追悼

プリンスが登場した1980年代はまだまだ音楽の世界にも未開拓分野がたくさんあった時代でした。エレキシンセサイザーは進化する、リズムマシンは進化する…その頃は「打ち込み」という言い方でしたけど…そういう新しい時代の中でYMOとかいろいろ出てきた時期でした。ポストモダンという言葉が流行った時代です。
プリンスという人は率直に言えば、黒人音楽の中から出てきたポストモダニズムだったと思います。伝統とか古いものを特別視せず、かといって革新だけがすべてではない。すべてを並列に見て取り入れていく冷めた視点がありました。プリンスの音楽には情熱がない・・・とボクは思います。熱くない。むしろ冷めている。音楽とかプリンスそのものをプリンス自身が一線引いたところから客観的に眺めているみたいなところがあったと思います。熱狂的なプリンスファンというのがあまりいないのはそのせいではないかと思いますしボクも別に好きなアーティストではありませんでした。音作りは凄いなとは思っても、どこかのめり込めない。友達になれない優等生クンみたいな立ち位置だったように思います。プリンスが深く影響を受けたらしき人もあまり思いつかないし、プリンスに影響された後継者というのもまた思いつきません。
ところでマイケル・ジャクソンやデヴィッド・ボウイが亡くなったときは「実は昔から好きだったんだ」的な人が続々出ましたが、プリンスの場合はそういう人はあまり出てきません。世界各地で追悼が行われていますが、その追悼の方法がみんなクールなんです。言葉は特に発することなく照明をパープルにしたり、ゆったりとパープルレインを弾いてみたり....etc
プリンスという人は本当にクールでした。ファンにも言い難い距離感がありました。そして、そのクールさや距離感をわかって、みんなちょっとだけクールに距離を置きながら、それぞれのやり方で追悼している。その光景を見てボクは感動しています。

(2016年4月24日のFacebook記事を転載)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?