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連載・奇書解読 現代魔術の源流「黄金の夜明け団」入門 を読む 序章編

現在、広く人気を呼んでいるタロット占いや占星術占い。いわゆるスピリチュアル、インスピレーション系の占いや秘術。

こういったものは、一見すると、怪しく掴み所のない、実体のないようなものに思えます。

しかし、実際にはそうではありません。

それらは確かなルーツと歴史を持ったものであり、正面切って紹介される機会が少ないだけで、実はかなり長い歴史を持っているというのが本当のところです。占星術に至っては3000年もの歴史があり、その解釈の仕方や教義は数千年前と全く変わらないという驚くべきものです。

それら占星術の知の体系。

それらをベースにして独自の教義、秘術、理論を作り上げていった集団がヨーロッパに存在しました。薔薇十字団や黄金の夜明け団と呼ばれる秘密結社がそれに当たります。

特に黄金の夜明け団は短期間で解散した小さな集団だったにもかかわらず、その教義・マニュアルは今も世界中から関心を持たれています。研究書物の出版も後を絶ちません。黄金の夜明け団のメンバーだったアレイスター・クロウリーなる人物によってタロットカードは広く知られるところとなりましたし、クロウリーについての人気もまた高まるばかりです。

この黄金の夜明け団とは、そもそも一体どんな集団だったのでしょうか?

それを解説した、現代魔術の源流「黄金の夜明け団」入門という本があります。

この本の内容を8回にわたり連載として解説してみたいと思います。

まずこの本の序章では、黄金の夜明け団が結成された経緯と内容が紹介されています。1888年に結成されたということ、当初のメンバーは350人だったこと、結成の目的など、です。そして、その中に以下の文章があります。

元祖黄金の夜明け団が3派に分裂してからまるまる1世紀が経過した現在、今ほど黄金の夜明け団に対する関心が高まっている時代もないでしょう。これは魔術というタブー視された題材から秘密のヴェイルと迷信の霧を取り除こうと決意したイスラエル・リガルデイーの尽力に帰すること大です。魔術といえば原始的な学問もどきに過ぎないという悪評が主流であった時代において、魔術は精神の訓育にして現代心理学の一部門たりえるとし、汚名返上に努めようというのがリガルデイーの願いでした。(p.22)

黄金の夜明け団の目的とは、過去数千年に渡って引き継がれてきたヘルメス学などを通じて霊的経験、内的進化、魔術、哲学の研究を求めるものであるとこの序章では書かれていますが、しかしそれはいたずらに迷信を信じたりするのではなく、現代心理学の一部門としてもそれは捉えられるのではないか…との見解が示されています。

黄金の夜明け団が結成された20世紀初頭当時は、まさにフロイトやユングという心理学が登場した時期でしたし、ユングはその研究の多くを錬金術や占星術に注いでいくことにもなりました。

あくまで迷信ではなく学問の立場を取りたい。その態度が示されており、なおかつ魔術といううわべだけの言葉に惹かれて興味を示したりインターネット上での知識だけでそれを理解したかのようにする人たちも牽制してあります。

要は、真摯な学問として、黄金の夜明け団の歴史と教義に触れて欲しい…という序章になっているのです。

この序章の文章を胸に刻みながら、次回、第1章から続けて紹介してみたいと思います。



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