見出し画像

痛風

薬剤師の中野さんに痛風についてについて、『どんな病気なのか』、『どんな症状がでるのか』、『予防のポイントは?』などを伺ってみました。

関節の痛みの中で、特に激しいとされるのが、「痛風」です。

痛風は、古代ローマ時代から「関節の中に毒素がたまる病気」として知られてきました。主に西洋において盛んであった病気とされ、歴史上の有名な人物たちの中にも、痛風に悩まされた人が多くいるようです。
日本には、明治時代以前にはなかったらしく、戦後の食生活の変化に伴って浸透してきた病気であるといわれています。

痛風という病名は、まるで風が吹くように強弱をつけて痛みが全身を襲うことに由来するとも、吹いた風が体に当たっただけでも痛むということに由来するともいわれ、諸説あるようです。

昔から、『風が吹けば桶屋が儲かる。風が吹けば親指に激痛が走る』。と言われていました。

痛風の痛みは、正確に言うと「痛風発作」という発作のことを指します。痛風発作とは、ある日突然腫れと激痛を起こします。前日まで何も症状がなくても突然やって来るのが痛風発作です。

痛風の背後には、「高尿酸血症」という病気が潜んでいます。高尿酸血症とは、体内でつくられる尿酸が増えすぎている状態です。
尿酸は体の新陳代謝により発生する老廃物です。通常、体内の尿酸は産生と排出のバランスを保ちながら、一定の量に保たれるようになっていますが、尿酸が過剰につくられたり、排出がうまくいかなくなったりすると、体内の尿酸は一定量を超えてしまいます。こうして血液中の尿酸の濃度が7.0mg/dLを超えた状態が高尿酸血症です。
高尿酸血症は、それだけでは自覚症状はありませんが、尿酸濃度が高い状態が続くと、血液に溶け切れなかった尿酸は結晶化して、関節や組織にたまっていきます。関節にたまった尿酸結晶に対して免疫細胞が反応し、炎症を起こして痛風となるのです。

親指が痒いのが水虫で、痛いのが痛風。父指を疎かにしては、いけませんね。

痛風の患者は、高尿酸血症の患者さんの増加とともに男性を中心に増加しており2013年の調査から100万人を超えています。初発年齢は30歳代が最も多く、40歳代・50歳代と続きます。特に30歳以上の男性では有病率は1%とされているので、「100人に1人」は痛風になることになり、決して珍しい病気ではないことがわかるでしょう。

95%は男性で、女性は痛風になりにくいと言われています。女性ホルモンには尿酸を排泄する働きがあることから、患者数は男性が多いと考えられます。

症状の特徴

とにかく激痛

赤く腫れている

熱を持っている

歩けなかったり

仕事も手につかない程の痛みが襲いかかるため、なってからでは遅いのです。この痛みは骨折以上の痛さといわれ、あまりの痛みに歩行不能になったり、靴下さえ履けなかったりすることもあります。はじめての発作はだいたい1~2週間程度で自然におさまりますが、治療せずに放置しておくと再発をくり返します。

発作の起こりやすい場所

足の親指の付け根(最も多い)

足首 足の甲 膝 手首 ひじ

足が多く、痛みが起きるのは一度に一ヵ所だけで、複数起きることはあまりありません。

痛風の原因

痛風の原因となる高尿酸血症は、生活習慣、とくに食生活が大きく関わっています。
尿酸は「プリン体」が分解されてつくられます。

プリン体とは、細胞の新陳代謝やエネルギー代謝によってつくられる物質ですが、食品からもプリン体をとっています。

プリン体は高カロリー食、レバーやエビなどの動物性食品、アルコール飲料などに多く含まれているので、これらの食品のとりすぎはプリン体のとりすぎにつながるとともに、アルコールは体内でのプリン体の合成を促し、尿酸の排出を抑制することがわかっています。
さらに、高カロリー食や多量の飲酒が招く肥満も、痛風の大きな危険因子となります。肥満は尿酸の排出を悪くするため、体内の尿酸量が増えやすくなります。

激しい運動や精神的ストレスも尿酸値の上昇を招くといわれています。とくに激しい運動で大量の汗をかいたときは、体内の尿酸値が一時的に上昇します。このときに水分を十分に補給しないと、血液中の尿酸濃度が上昇したままになり、痛風につながります。

また、身内に痛風の人がいると掛かりやすいとも言われています。

痛風の予防

  痛風を予防するポイントは、おもに次の4つです。

1. 肥満を解消する


痛風傾向のある人は、体重が増えるたびに血液中の尿酸値も増え、逆に体重が減ると尿酸値も減るといわれています。

2. 適度な運動を心がける

ウォーキングやサイクリング、水泳などのゆったりとした、いわゆる有酸素運動には尿酸値を下げる効果があるといわれています。激しい運動はかえって尿酸値をたかめることがあるため、注意が必要です。

3. 水分を多く取る

尿酸が少しでも体外に排泄されやすくなるよう、1日2リットル程度の水分摂取を心がけるだけで、尿酸値は下がります。水分は甘いジュースやアルコール飲料ではなく、水やお茶でとるようにしましょう。
これは昔から行われている予防法で、ヨーロッパで紅茶やコーヒーをたしなむ習慣が生まれたのも、元々は痛風の予防や緩和が起源であったとも言われています。

4. アルカリ性食品をとる

尿が酸性になると、尿酸が十分血液に溶けず、結晶になってしまいます。結晶化を防ぐためには、肉類や魚類などの酸性食品を多く摂るのではなく、野菜や海草、貝類、豆類、乳製品などといったアルカリ性食品を多く摂ることが大切です。

自分でできる発症時の対処法

温めたり、もんだりすると逆効果。無理に歩き回るのも禁物です

患部を心臓より高い位置に置き固定

患部を冷やす

家にある痛め止めを飲む(バファリンやイブなど飲んだことのある薬が安心)

痛風に対する治療

痛風に対しては、主に薬を使って痛みや腫れを和らげます。

痛風の痛み、発作を止める薬

非ステロイド系抗炎症薬NSAIDs

 :インドメタシンやジクロフェナクなど。市販の鎮痛薬でも有名ですね。

ステロイドの内服薬

 :抗炎症ホルモンを直接内服することで、腫れを抑えます。

コルヒチン

 :コルヒチンは、痛風発作(発作的に起こる痛風の痛み)の緩和および予防の目的で使用されます。 痛みや腫れを引き起こす白血球のはたらきを抑えるため、痛風発作が治まります。また痛風発作には予兆が出る場合があるため、本格的な発作が始まる前にコルヒチンを服用すれば、発作を抑えられることがあります。ただし、コルヒチンはあくまでも発作を抑える薬のため、痛風の根本的な原因である尿酸値を下げるはたらきはありません。

コルヒチンの副作用には、主に腹痛・下痢・嘔吐などの消化器症状、末梢神経炎(まっしょうしんけいえん)などがあります。痛風の前兆症状や痛風の鎮静化にはコルヒチンが有効と考えられていますが、副作用などの点から少量、短期間で使用することが一般的です。

この時期は、赤紫色に変色し腫れも強く、動くのもままならない方もしばしば。なるべく運動をしないこと(特に激しい運動はお控えください)。

局所を冷やすこと(冷やしすぎて凍傷には注意が必要)

しっかりと痛み止めを使うこと(初発の方は、診断も含めてクリニックへの受診をお願いします)が特に大切です。

なお、痛風の初回発作の時には、尿酸値を下げる薬は原則つかいません。発作がある時期に使うと、発作が長引いてしまうことが多いためです。(今まで継続的に薬を内服されていた方は、発作時も内服していただいてかまいません。)

 尿酸値を下げる薬

尿酸値を下げる治療薬には、尿酸の生成を抑える“尿酸生成抑制剤”と尿酸の排泄を促す“尿酸排泄促進剤”があります。

<尿酸の生成を抑える薬>

ザイロリック(アロプリノール)

1964年から痛風治療に使用、尿路結石の治療にも有用。作用が長続き。腎不全患者には過敏性血管炎を生じることがあるので注意。

フェブリク(フェブキソスタット)

日本で創生された薬。2011年に承認された薬剤。適応症は「痛風」「高尿酸血症」で強力な生成阻害を有する。

臨床試験で血清尿酸値の治療目標値6.0mg/dL以下の高い達成値を示す。腎機能が軽中度に低下しても減量しなくてもすむ

ウリアデック(トピロキソスタット)

2013年に日本で承認された薬剤

 <尿酸の排泄を促す薬>

ベネシッド(プロベネシド)

初めて対処療法から根本治療を可能にする。1951年より使用。

パラミヂン(ブコローム)

非ステロイド系抗炎症薬NSAIDsの一つで日本で開発。尿路排泄作用もある。

 ユリノーム(ベンズブロマロン)

現在我が国で最も多く使用されている尿路排泄促進剤。

1日1回投与で作用を維持。肝機能検査の義務づけ。

ユリス(ドチヌラド)

最近2020年承認日本で開発された薬。肝障害を出したくない場合、腎機能が低下しているけど使いたい場合に。

 痛風の薬と言い、水虫の薬 ネイリンと良い、日本の開発した薬が威力を発揮していますね。

親指日本チャチャチャですね

急に尿酸値を下げる治療薬を使用しはじめると、かえって痛風発作が起こりやすくなる可能性もあるため、3~6か月程かけて徐々に尿酸値をコントロールしていきます。痛風の薬にはさまざまな種類があるため、どの薬を使うかは医師と相談しましょう。

繰り返しますが、これらの薬は痛風発作を抑える薬ではありません。毎日服用して体内の尿酸を減らし、痛風発作を予防する薬です。

また、何回も痛風発作を繰り返してしまう方は、痛風発作を下げる薬である「コルヒチン」を長期間投与することで、痛風発作を抑える方法もあります。

尿酸値を改善する薬をしばらく内服することで痛風発作は予防されます。その間に生活習慣を治していただくことで、お薬をなくすことなくすことができます。

中野さんのテキストを動画で↓(コンブリオTV)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?