フリーランスフォトグラファー(職人)とのお取引ついてのお願い

親愛なる私を使って下さる皆様。
いつも仕事の依頼をして頂き誠にありがとうございます。
どこの馬の骨かも分からない私に依頼をして頂くこと自体が言葉では言い表せない程幸せで有り難いと思っております。
その気持ちを、長年培って来た技術や皆様が磨いてくださったセンスで御社のお役に立てる様、全力で仕事をさせて頂いております。
しかしながら最近、新たな取引先や世代交代の度に、こちらからは伝え辛いとても悲しい状況が増えて来ております。
まずは私の本心をお伝えし、お互いが納得の上で気持ちの良い環境となる事を願い、この様な文章を作成致しました。
どうかお時間のある時にでもご一読頂けますと幸いです。

撮影に関しまして、ご依頼頂き対価を頂いている以上、今まで培って来た技術を余す事なく使い、「お金を払って良かった」「対価以上の満足度だった」そして、「楽しい現場だった」と思って頂ける工夫を常に心掛けております。
また、作業につきましては、一見ゆっくり行なっているように見えますが、実際は安全なども考慮しつつも無駄がなく、休憩の時間も惜しみながら常に頭と体をフルに使い続けているという事に気付いて頂けると思います。
言い換えるならば、マラソンランナーが大会でフルマラソンの自己ベストタイムを狙いながら笑顔で走り続けているようなものと思って頂けると少し分かりやすくなるかも知れません。
しかし、最近の企業の体質なのか、引き継ぎや、日々の現場慣れなどから、「いつも走っているからこの人は疲れない」もしくは「お金を払っているんだから走るのが当たり前」と捉えてしまう人が多くなった気がします。
テレビ中継などで、お茶の間からテレビの中のランナーに向かって「もっと早く走れ」と言うのは、本人の自由です。
しかし、実際に全力で走り続けている本人の所まで行って、「もっと早く走れ」とは、余程の知識や経験、またはその方との深い信頼関係がない限り言えないと思います。
また、「なんとなく走り方が変だから直して欲しい」「靴下のバランスが左右違うから、一旦停まって整えて欲しい」など、例えが難しいのですが、「とりあえず流れを止めてでも何かしらを言う事が仕事」と思い込んでいる方も、ランナーが置かれている状況を考えれば御門違いとご理解頂けると思います。

ですが、私達職人は、形が違えどこの様な心ない言葉を言われる事が増えて来たことを実感しています。
そして同業者を始めとしたライター、スタイリスト、メイク、モデルなどからも同じような悩みを耳にするようになりました。
また、そう言った方は、実務よりもコスパや数字を重要視するからなのか、マラソンのゴール間際で「あと10キロ走って欲しい」「今日は時間内に60キロ走って欲しい」など、気軽に無理難題を言われる傾向にあります。
それは、マラソン経験の浅さから発せられる言動だと思います。
ですので、この様な要求を受けた場合は、どうにか納得して頂けるように説明し、それでも納得頂けない場合は時間の許す限りその場で実践し理解を得る為に努力はしますが、それでも納得頂けない場合は、私は一言「やってみます」と答えます。
この言葉には、私の仕事を理解されていない悲しみと、冷たい言い方になりますが、この程度の理解度の方に、経緯を説明する時間すらも、実務に充てたい事。また、他のスタッフを含めた現場のムードを崩したくないと言う思いが含まれています。
そして、それらの要求は現実的には無理な事が多いので、最終的には撮影後、事務所に戻っての画像処理や、皆さんが見えない部分で辻褄を合わせる事になります。
また、このような方を時間を掛けずに納得させるには、私の知識レベルでは「怒る」しか思い当たりません。
ですが、そんな事をしたところで、当事者も私も嫌な思いをするだけなので、結果的には上司や大元のクライアントに相談。もしくはそこまでの要求は完璧にこなし、今後の関係性も考えつつ身を引く事になってしまいます。
そう思うと、昔の職人はその手間を省く為にわざとアシスタントなどを「怒鳴り」、現場に緊迫感をを与える事で現場スタッフ全員の貴重な時間を管理し撮影をスムーズにしていたのかなと最近思うようになりました。
会社と言う性質上、有能な方が出世していく事は仕方がないとは理解していますが、もし、私たち職人と仕事をするのならば、
「リスペクト」と言う大前提を忘れないでください。
また、マラソンに例えたのは、厳密には異なる事は承知の上ですが、誰しもマラソンの辛さは知っているからです。
そして、知っているはずのマラソンでさえ、そのような思考になってしまう恐れがあるのです。
私達職人は、現状を感謝しつつも奢らず日々努力を続ける事が今に繋がると実感しているので、相手に対しては「リスペクト」から入ります。
ですので、どうか今一度「リスペクト」をお願い致します。
そして、これからも「より良いものをお客様に伝える」為に、精一杯頑張りたいと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します。