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北千住の銭湯跡地の客席から。(ふりかえり。)

もくじ

0.終演しました。
1.「壊す人」として
2.主宰がいっぱい
3.鵺みたいな感慨
4.さいごに

0.終演しました。

出演させて頂いた舞台PityChan『世光ちゃん。ぎらぎら♡』が無事に全公演終演いたしました。


(舞台写真はすべて大口葉さんによる)

ご来場いただいたお客様、観には来られずとも公演のことを気にかけて下さった皆さま、誠にありがとうございました。

BUoYの皆さま、頼もしいスタッフの皆さまと、ほんとに明るくて楽しくて素敵だった出演者の皆さんと、心強く頼もしいPitymanの劇団の皆さん。

そしてなにより今回躊躇わずに破綻を追い求めた、緻密で詩的で果敢なボスの山下由さんに、心からの感謝を申し上げたいと思います。

本当にありがとうございました。

開演から1時間後に客席からおもむろに現れる人でした。

観に来てくれた方にそこはかとなく寺山修司(『観客席』)を感じてもらえたりして、「役者みょうり」と思いながら、しみじみ美味しいお酒を頂きました。

藤田りんごさんは同い年でした。

***

1.壊す人として

"Now I am become death, the destroyer of worlds."

というのはオッペンハイマー博士がかつて原爆の実験に成功した時の心境を思い出すのに引用したインドの叙事詩の一節で、顔合わせの日に台本の初稿に

「松本くん 劇を壊す人。」


という登場人物の説明を見つけてから、(「何言ってんだ」という気持ちを呑み込みながら、)このフレーズが何となくずっと頭から離れませんでした。

というと、もちろんそれは大げさですが、しかし自分が登場するまでの1時間でじゅうぶん舞台上の演劇は進んでいるし(それもかなり繊細に)、それを自分も客席でおもしろく観ているので、

「このまま終わってもいいんじゃないか?(わざわざ壊さなくても)」と、しばしば思ったものでした。

どっこい、打ち上げで山下さんのお話を伺うに、昨年夏の第8回せんがわ劇場演劇コンクール(Pityman『ぞうをみにくる』)で審査員の方から

「作品として綺麗にまとまりすぎているんじゃない?破綻を目指してみたら?(川村毅さんみたいな、)」と言われたのが元で

「じゃあ壊してみよう!!!」

と、今回こういう構成(1時間やってそれを30分かけて壊す)にしたとのことで、

「もらったアドバイスをすぐに実地の公演で試すガッツと腕力」に、劇団主宰としての山下さんのタフネスを垣間見ました。
(山下さんは小柄だけど元ラガーマンだので大きいです)

そんなPityman・山下さんが、今回の公演を経て、これからどんな作品をつくっていくのか、楽しみだなぁと、一観客としてわくわくです。

銭湯で、アーティスト写真みたいな。

***

2.主宰がいっぱい

「一生演劇続けていくと思ってる?」

というのは、僕が稽古に合流した時に帰り道で山下さんからなんとなしに聞かれた一言だったですが、年齢が近いこともあり、抱えている悩みや焦燥感は近いものがあるんだろうと、ちょっとドキッとしながらも「願わくは(続けたい)、でもいろいろな問題はありますね」としみじみ話したように思います。

奇しくも今回の座組には劇団の主宰者がPitymanの山下さんの他に小林涼太さん(ピストンズ)、池内風さん(かわいいコンビニ店員飯田さん)がいらっしゃって、そういう兄さんたちの話を聞いたり、捕まえて持ち上げたりしたのも、しみじみいい時間でありました。

(劇団を主宰している人がたくさんいる現場でした。)

(自分と歳の近い主宰の先輩を見ていると勝手に落ち着く。)

小林さん

池内さん

自分の団体だとどうしても余裕のかけらもなく殺気立ちパツパツになってしまうところ、こうして外の現場へ呼ばれてみると頼れる(甘えられる)お兄さんお姉さんがいるというのは本当にありがたいことだと思いました(池内さんにはいつかぶっ飛ばされる)(メガネをかっぱらってしまったから)。

みなさん大好きです。

***

3.鵺みたいな感慨

観に来てくれた一緒に演劇をやっている鈴木くんが

こう評してくれて、「言い得て妙だ」としみじみ思いました。

たしかにどっちでもないものな、と思います。

「これ!」というプロフェッションがない器用(でもない)貧乏ということでもあり、自分で劇団やってたら(制作業務も含め)結局全部自分でやらないとどうにも回らないという事情もありつつ、公演を終えてみてあらためて

俳優か演出か制作か、そのどれでなくともただただおもしろい演劇をつくっていたい。

としみじみ思いました。

とすれば「やれと言われたらなんでも人並み以上にやれなくちゃいけない」という先代の松本幸四郎の気概にならい、ご縁や機会がある限り、役者でも演出でも制作でもドラマトゥルクでもアシスタントでも記者でも、出来うる限りいろんなことをしていよう、と思います。

それが最終的に全部まとまってスパークするのが自分の劇団だったらいいな、と思います。

足りないものも沢山あり、至らない面も沢山あり、それでも演劇をやりたいと願っているのは他ならぬ自分だので。

もっともっといろんなものやことを整えながら、しかし粘り強くやっていこうと思います。

(平泳ぎ本店もよろしくお願いします。)

***

4.さいごに

公演が終わってもなお、(割とあんまし思わない方ですが)人並みに「寂しいな」と思う位に、居心地がよくて、ほんとうに楽しい座組でした。

初めて会う人ばかり、僕自身は稽古にも遅れての合流でしたが、なにしろ山下さんを筆頭にコツコツと丁寧に演劇をつくる稽古がいとおしく、京王線で稽古場へ向かうのも日々楽しみでした。

(われながら幸せそうな顔をしている)

重ね重ね、この作品に関わらせて頂いて、いろんな出会いがあって、本当にありがたく、楽しかったです。
ありがとうございました。


今回関わったすべての人の健康と、ますますのご活躍を心から祈って。
(演劇への)愛と真心を込めて。
いつかまた会えるのを楽しみに。

草々



シャーロットさーん!!!!!


松本一歩

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