絵空事 -vana- 第14話「瑠璃の月」
縺れた足に躓きながら、おれは家の外に出た。すぐに、聳える山を見上げた。
「――っ!?」
刹那、悪寒が背筋を這い上がった。
幾千、幾万もの鬼火が山の辺りを漂い、まるで山が蒼白く燃え上がったかのようだった。
みだりに立ち入ることを禁じられたはずの神域に、多くの人が踏み入ったことを、山の神が怒ったように見えた。或いは――地が血で穢されたことを、やはり神は怒ったのかもしれない。
その事実に慄き、ただでさえ縺れていた足からは力が抜けた。
ただ、ちからなき己を呪った。
――助けること