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絵空事 -前日譚-

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自創作『絵空事 -十六夜月と銀の翅-』シリーズの【-irreal-】の前日譚にあたる物語たちです。【蒼ノ章】【白ノ章】【紅ノ章】【玄ノ章】【黄ノ章】に分かれております。
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#白ノ章

絵空事 -vana- 第1話「葵の葉」

とある一族に伝わりし伝承 されど偽りか真かは、当事者にしか判らぬ噺 *** 「…なあ、ガ…

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絵空事 -vana- 第2話「葵と銀」

『…。飯…』 やがて、よい香りにつられたように、少年が目を開けた。 「もう少しででき上が…

絵空事 -vana- 第3話「落ちた穂」

――辺りはまだ暗い。 ゆるやかに目を開けると、いつものとおり、誰もが眠っていた。 ごろり…

絵空事 -vana- 第4話「鉄と葵」

そうしておれは、山で出遭った夫婦に礼を言い、山を越えた。 「おいあんた、見ねぇ顔だな。何…

絵空事 -vana- 第5話「根差す葵」

一方、その頃。 山に戻った銀翅は、十六夜に問いかけました。 「十六夜は、彼の何処がそんな…

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絵空事 -vana- 第6話「蔓延る根」

神域の山の麓に下りると、既にひと気は無かったが、山に行ったことが分からないように、念の為…

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絵空事 -vana- 第7話「葵と悠」

複雑な気持ちを抱えたまま、その日は夜を越えた。 「――銀翅さまのこと。気になるのか?」 翌朝、見兼ねたように、そう尋ねられた。 「ん、ああ。」 物思いに耽りつつ、ぼんやりと返事をした。 「わかるぞ。あのお方はとてもお優しい方だからな。――私は、玄鋼さまよりも銀翅さまのほうがすきだ。」 村に広がる噂を当然耳にしているだろうに、意外にも好ましく思っているらしい。 「悠。――お前、そんなに銀翅さまのことがすきか。」 傍らの少女に、そう問いかける。 「お前とはなんだ。姉上と

絵空事 -vana- 第8話「匣の外」

「――また、あのガキのとこ行くんか?」 出る間際、十六夜にそう尋ねられた。 「ああ。そうす…

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絵空事 -vana- 第9話「白の匣」

おれは、銀翅と並んで途を歩きながら、なんと声をかけたものかと考えていた。 『…。』 銀翅は…

絵空事 -vana- 第10話「根の戒め」

『ああ、そうだ。朱鳥殿には、…』 山に向かいかけた銀翅は、思い出したように言った。 『村の…

絵空事 -vana- 第11話「葵の青」

数日経た後、葵が山を訪ねてきた。 「来たか、葵。」 『銀翅さま、瑠璃さま。おはようございま…

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絵空事 -vana- 第12話「響く音」

季節は秋になった。 「銀翅さま、近頃あまりお見えにならないな…。」 「ああ…。」 銀翅が最…

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絵空事 -vana- 第13話「朱色の鳥」

――からん。 何かがぶつかる軽い音がして、おれは目を開けた。 「――葵。どうかしたか?」 …

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絵空事 -vana- 第14話「瑠璃の月」

縺れた足に躓きながら、おれは家の外に出た。すぐに、聳える山を見上げた。 「――っ!?」 刹那、悪寒が背筋を這い上がった。 幾千、幾万もの鬼火が山の辺りを漂い、まるで山が蒼白く燃え上がったかのようだった。 みだりに立ち入ることを禁じられたはずの神域に、多くの人が踏み入ったことを、山の神が怒ったように見えた。或いは――地が血で穢されたことを、やはり神は怒ったのかもしれない。 その事実に慄き、ただでさえ縺れていた足からは力が抜けた。 ただ、ちからなき己を呪った。 ――助けること