絵空事 -vana- 第6話「蔓延る根」
神域の山の麓に下りると、既にひと気は無かったが、山に行ったことが分からないように、念の為、少し遠回りをして帰った。
戸を開けると、おれを捜していたらしい朱鳥と鉢合わせになった。
「葵。――少し前に銀翅さまがお前を訪ねてくださったぞ。だというのにお前は、何処に行っていたんだ。」
「そうだったのですか、ごめんなさい。川の近くで遊んでいました。――銀翅さまなら、先程偶然お会いしましたよ。」
「そうか。それなら良いが…。」
「長く話せないので、また改めてお出でになるそうです。」