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団地のキッチンが好きだ~キッチン選びエッセイ

私は独身時代から、中古戸建を購入した現在に至るまで、5つのキッチンを経験しました。
そして、いつしか団地タイプのキッチンに憧れるようになりました。

キッチンの好みは人それぞれなので「おすすめ」などはできませんが、

料理が好きで
キッチンのことを考えることが好きなので、
キッチンやその選び方についてエッセイとしてまとめてみました。

現代のキッチンができた背景(簡潔に!)

近代的なキッチンが広まる前、戦前の農村住宅では台所は床上空間と土間空間に分かれていました。
そのため調理はしゃがみこむ動作が多く、流しは冷たい土間にひざをつけたまま洗うなど、重労働を伴ったといいます。

現在のようなキッチンが普及し始めたのは、ステンレスの流し台を用いた昭和31年(1956年)に公団晴海団地のDK(ダイニングキッチン)が取り付けられたことから始まります。

出典元:ステンレス流し台の普及 | キッチン・バス工業会 (kitchen-bath.jp)


ダイニングキッチンの誕生 ~狭い空間で使いやすく

現在のキッチンの原型であるDK(ダイニングキッチン)は、日本住宅公団(現・独立行政法人都市再生機構)の設計課が考えたものです。

団地の狭く限られた空間でも、国民の生活の質を上げるため「近代的な台所」を目指し試行錯誤の末、ダイニングキッチン(台所兼食事室)という新しい概念が誕生しました。

設計には、日本初の女性建築家の浜口ミホ※さんという女性が関わっていたことが大きく影響しています。

※日本で最初の女性建築家とされ、戦後の住宅改善に貢献。 
特に住宅で裏方に追いやられていた台所を機能的で明るい場所に引き上げた功績で知られる。公団住宅に採用させたステンレス製の流しは今日のシステムキッチンのはしりとなった。

出典元:浜口ミホ - Wikipedia

そんな昭和30年代にモダンの象徴だったダイニングキッチンは、平成ではシステムキッチンへと進化し、現在では、さらにさまざまなタイプへと設計されています。


 画像引用元:リクシルリフォームネット/キッチンのスタイルキッチンスタイルの種類
https://www.lixil-reform.net/encyclopedia/kitchen/style/


団地のキッチンに憧れた理由 

私は独身時代のワンルームや1LDK、家族ができてからは2LDKと、長年賃貸アパートの小さなキッチンを使ってきました。

そのため、とにかく物を増やさず、使いやすく収納する方法を考えていました。少ない収納と限られたスペースで、いかに衛生的に使い勝手よく物を配置するのか?

そんな時に、まさに日本住宅公団が考えた団地についているタイプのキッチンは便利そうだと思いました。

  画像引用元:goodroom/団地の暮らしかた
https://www.goodrooms.jp/journal/?p=19656


ダイニングキッチンが生まれた歴史を知った今となっては、必然の流れですが、見た目はともかく実用的だなと感じました。


前面の壁に棚や調理ツールをかける工夫ができるため、かがんだり引き出しを開けたりせずに、手を伸ばすだけで使うツールがとれて便利です。

画像引用元:UR賃貸住宅/URくらしのカレッジ
https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/201710/000105.html


広くても使いづらいキッチンがある

では、団地タイプのキッチンは、狭い部屋に住んでる人にしか意味がないのか?と言えば一概にそうとも言えない実感があります。

私は狭いアパートのキッチンを、理想の団地タイプに近づけながら使っていました。そのキッチンに慣れた頃、実家のキッチンを使うと使いづらいことに気づいたのです。

実家は注文住宅で、収納も十分あるのに、狭い自分のキッチンよりもなぜか使いづらい。
原因はスペースが広いかわりに狭い家で用いられるような、まとまった収納の工夫がされていなかったことと、導線を無視した配置でした。

キッチンを広く作れるからといって、単純に面積を増やすと家事の導線が増える。また、収納家具もたくさん置けるため、収納場所が広がる原因にもなるのです。

キッチンの形はその時流行りのL字型でしたが、母は最近リフォームで同じ形よりもコストをかけてもI型に変更しました。

理に適ったデザインの使い心地

団地のように工夫したキッチンは、新築住宅のようなおしゃれなデザインではないことを除けば、使い心地は最高でした。

1DKや2LDKのキッチンは狭いため、水切りカゴが置きづらく邪魔になります。そのため少しでも吊り下げて乾かし、使いやすい収納も兼ねることで一石二鳥の効果があります。

耐荷重が必要なマグカップや鍋などを置く棚は、賃貸では穴が開けられず無理でしたが、それでも十分実用的で省スペースな収納が確保できました。

「使いやすいキッチン=無駄な動きが少ないキッチン」
これを念頭において設計された団地のキッチンは、狭い部屋に暮らす者の、まさに理に適ったお手本でした。

流行は、流行遅れかロングセラーのどちらかに変わる

団地タイプのキッチンの良さを語りましたが、現在の流行のキッチンはどうでしょうか?これは本当にそれぞれの使い方によって、選ぶのが1番としかいいようがありません(笑)

もしも食洗機があるなら、水切りを考えたツール掛けの用途の半分は不要になるし、そもそもあまり調理をしない家庭なら、食材や冷凍庫の収納は必要でも調理器具の収納は少なくて済みます。
小さい子どもが多いなら、やっぱり対面タイプの方が安心など、個人やその家庭により千差万別だからです。

ただし、先に述べた実家のキッチンのように当時は良かれと思って作ったものも、一昔前の作りの方が使いやすかったというパターンもあります。

流行りは廃れるか、定番になるかの2択です。
今流行っているデザインは本当に長く使いやすいものかを精査する必要があるかもしれません。

使い方と自分の物差しが重要

これまでのことを踏まえた上で、キッチン選びはそれぞれのタイプの特性を知り、自身の生活に合うキッチンを選ぶことが重要です。

私は長いアパート暮らしの末、築27年の中古戸建を購入しました。
購入時はキッチンの配置も、やはり重要視し、団地キッチンのような壁付タイプが物件の決め手にもなりました。


キッチンはリフォーム済みでしたが、既存の吊り棚に水切り台と、調理ツールやフライパンなどがかけられるポールを設置してもらいました。
何といっても、壁付タイプの良いところは省スペースであること!キッチンに人が居ても後ろのスペースは余裕の広さで動きやすい。

我が家のキッチン(日常のままでスミマセン)

このキッチンを毎日使う今、まだ小学生の子どもがいるので対面ではないデメリットもありますが、ダイニングと隣接しているため横目で相手をしながら調理をしています。


そんな今のデメリットも数年すれば解決でき、好きな調理に集中できる点や、お菓子作りの際に急に増える洗い物の置き場にも困ることなく満足しています。


料理をする人にとって、自分に合ったキッチンは最高のパートナーのようなもの。
これからキッチンを選ぶ方が、最高のパートナーに出会えることを願っています!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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