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これからも変わらず静かに続けていきたい担当美容師さんとの心地よい関係



私を励ましてくれた担当美容師Aさんにお礼を伝えた時の話です。

*

いつも同じのAさんは、いつもの通りゆったりと流れる時間の中で、にっこりしながら待っていてくれた。

その日、私はタブレットでファッション誌を読み漁るのもほどほどに、タイミングを見計らって母の介護をしていた時に励ましていただいたお礼をAさんにすると意外な答えが……

「私も母を亡くしたので」

お母様とLINEでやり取りしている話を聞いたのは数年前……絶句した。

「えっ……」

鏡越しに目が合ったままAさんは優しく頷いている。

Aさん、いつも声の大きさも同じなのに、一度だけ少し声のボリュームを上げたことがある。私を励ましてくれた時だ。

「その時に出来ることを精一杯やったんですから、後悔することはないです。大丈夫です」

Aさんが経験者として励ましてくれたことを私はこの時初めて知った。

何か聞けばきっといろいろ話してくれたと思う。だけど私はこれ以上言葉が出なかった。

Aさん、いつも同じに見えるけれど、悲しみを抱えながら仕事をしていたこともあったのだ……

「寂しいですよね」と言うと、「寂しいですね」と深く頷きながら手を休めることなくしみじみ言うAさん。

……もしかしたら、私がAさんに対して「いつも同じ」と思いながら安心感を得ているのと同様に、Aさん自身も普段と変わらない日常に励まされながら様々な試練を乗り越えてきたのかもしれない。

鋏の音を聞きながらAさんを見ていたら、これまで以上に親近感が湧いて、あらためて「ありがとう」を伝えたら、Aさんの笑顔がすごく素敵で……ますます好きになった。

「こんにちは」から始まって「お気をつけて」まで、まるで巻き戻しをして最初からを繰り返しているみたいに時間が流れる。

自分が信じる「当たり前」というのは実際には非常に貴重なもの。

いつの間にかAさんと築き上げてきたこの絶妙な距離感と心地よい関係性を、これまでと同じように続けて行くことが出来たら私は最高に幸せだ。

さて、今回は既に予約は済んでいる。
美容院でのひとときをいつも通り静かに、そして大切に過ごして来ようと思う。


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