ダニエル・デネットによる投資家4階層@トマスさんのブログより

1. ダーウィン型投資家
 最も基本的なダーウィニズム≒自然淘汰というのは、人間的な意味では全く何も「考え」てはいない。するのはコピーを作ることだけだ。

 ランダムな突然変異を何も考えず試し、失敗してもそれを何ら顧みることもなく、ただ死ぬ。たまたま優れていたあるいは運が良かった個体が、やはり何も考えず自分のコピーを作り、結果としてこの世に残る。

 これを投資にたとえるなら、何も考えずに根拠のない全力ギャンブルを行い、失敗したらすぐに退場するような最低レベルの投資家であろう。たまたま儲かることがあったとしてもやはり単なる偶然であり、いずれ退場する。

一般に使用される表現では?
(投資家ではなく)ギャンブラー
退場を繰り返す人
入金しては溶かす人
ギャンブル依存症
自分が何をやっているかわかっていない人
次のレベルに上がるために必要なのは?
最低限の自制心
最低限のリスク管理
最低限の勉強
2. スキナー型投資家
 オペラント条件づけで有名なスキナーの名にちなむこの型の動物は、学習によって、死と繁殖による世代交代を待たずとも、本能的に組み込まれていない課題に適応することができる。

 鳩やネズミが、エサの出るボタンを憶えて何度も押すことができるように。しかし、やはり人間的な意味では「考えて」いるとは言いがたい。

 これを投資にたとえるなら、最低限のリスク管理はでき、少なくともすぐに退場することはない。経験に学ぶこともできる。しかし、それはあくまで事後にうまく行ったか行かなかったかがわかるという程度に留まる。

 適当に「手法」を試しては、たまたまうまく行った手法を繰り返し、たまたまうまく行かなかった手法は嫌になってやめる。本人がどう思っているかはともかく、もっと上手い投資家の基準では「考えて」いるとは言えない。

一般に使用される表現では?
いわゆる下手な人
手法マニア
勝った話ばかりするけどトータルでは負けている人
ちょっと環境が変わるとすぐ勝てなくなる人
次々に違うことを試しては失敗している人
次のレベルに上がるために必要なのは?
事後ではなく事前に考える
自分のモデル・仮説を持つ
3. ポパー型投資家
 反証主義のカール・ポパーにちなむこの型の動物は、脳内に何らかのモデルを持ち、事後でなく事前に考えることができる。たまたまそれが間違っていることがあるとしても、最初から上のふたつよりは、成功する可能性の高い行動ができる。

 投資にたとえるならば、市場に事後的に反応するだけでなく、テクニカルであれファンダメンタルズであれ、なんらかの仮説≒モデルを元に自分の目標価格を持ち、市場価格との差を取りに行く投資家であろう。

 仮説が間違っていることももちろんあるが、その場合も、ダーウィン型のように退場するわけでも、スキナー型のようにまた全く別の手法を探し始めるわけでもなく、外れた仮説を捨て、モデルをよりよいものに修正していく。

一般に使用される表現では?
(いわゆる普通の)投資家
同じことをやり続けている人
自分のスタイルを確立している人
(失敗したとしても)自分で考えている人
次のレベルに上がるために必要なのは?
歴史からも学ぶ
二次思考を行う
4. グレゴリー型投資家
 この型の動物は人間のみ。環境中の物理的・精神的な道具を取り入れて活用し、他の型の動物とは全く違ったレベルの相互作用を行う。とりわけ重要なのは他の人間とその言葉であり、要するに文明を持つ動物と言ってしまってもよいだろう。

 投資にたとえるならば、やはりこれが最高級の投資家であろう。

 歴史つまり自分以外の経験からも学び、個人の経験を越えるスパンの事象にも対応できる。いわゆる二次思考ができ、他者(が集まった市場)の抱く、時に間違ったモデルや仮説を、自分のために利用することもできる。

一般に使用される表現では?
いわゆる上手い人
なぜかいつも勝っている人
経験ではなく歴史に学ぶ人
下手な人をカモにしている人
市場が財布状態の人
次のレベルに上がるために必要なのは?
そんなものはない
まとめ

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