見出し画像

【🍓】きっちりと上下を揃えて姫君は書きつけた。

晴れぬ夜の月待つ里を思ひやれ同じ心にながめせずとも 

女房たちにやいやいと言われ、もとは紫色だったがすっかり色あせた紙に、さすがにしっかりしているが少々古めかしい筆跡で、きっちりと上下を揃えて姫君は書きつけた。

角田源氏1 「末摘花」 270ページ

深窓の令嬢ってどうよ?きっとすげー趣きがあって儚げなヒトなんじゃね? と勝手に思い込んだ光君は常陸宮親王の忘れ形見だというお嬢様に鼻息荒く猛アタックしてバンバン和歌を書き送ります。姫君の侍従がお嬢様に代わって返歌を拵え、それを姫君が書いたのですが、紙は古くて色褪せちゃってるし下手とは言わないけれど古めかしい筆跡で「上下を揃えて」書きました。

とあるのですがこれはどういう事? と思いまして。(調べました)

源氏物語の頃は散らし書きが「イケてる」書き方だったようです。

             晴れぬ
              夜の
待つ         
              里
             思ひや


     同じ心に
          ながめせず
              と

きっとこんな感じなるらむ

(皆さんこれを脳内で縦書の続け字に変換してくださいね〜。)

ところが光君が受け取ったのは

  晴れぬ夜の 月待つ里を思ひ
  やれ同じ心にながめせずとも

二行書きで
同じ文字数

というひと昔もふた昔も前の書法で書かれたものだったので光君は「あ゛ー、ダメだこりゃ」とすっかりげんなりしてしまった模様。勝手な思い込みで勝手に懸想しては勝手に幻滅する本当に勝手な困った奴=光源氏、なのですがこの返歌の書きぶりを目にしていろいろと判ったに違いない。

Top画像を探したのだがなかなか素敵な「散らし書き」に出会えずちょっと淋しかったです。散らし書きはおろか、筆書きや続け字や、縦書きすらできない自分も、誰も画像を上げていない事も。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?