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寝ずの番

※注意)
本記事は死生観に関わることなどショッキングな内容が含まれています。通常記事とは異なる雰囲気となっていますのでご注意ください。実際の出来事に基づいた日記としての記録であり、現在闘病中の方やそのご家族の方の尊厳を傷つけたり、他人の宗教観を否定する意図はございません。

また、今回の 記事に関して”スキ” を押していただけるのであれば、それは必ずしも賛同やGoodという意味ではないと受け取らせていただきます。単純に「読んだわよマーク」もしくは「あしあと」であるのだと感じるようにいたします。どうぞご安心ください。多くの方の目に触れぬようにとタグも付けておりません。

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人生の最後に何を残すか

義母には生前大変お世話になりました。
初めてお会いしたときは
私はまだ20歳くらいだったと思います。
どこの馬の骨ともわからぬ若造を
温かく迎えてくれたのを覚えています。

明るくパワフルで推しが強い人でした。
有無を言わさぬその強引さには定評があり
「この人の言うことならば大丈夫」と思わせるような
そんな力に溢れた人でした。

仕事にも家庭にも真面目で料理好き
引退後は大好きな山に出かけたり
ご夫婦でテニスに興じることもありました。
一緒に旅行したことも何度もありました。
実に情けない話ですが、私たち夫婦は最後まで
色々な面で甘えさせていただいていました。


最後に伝えるべき言葉とは

亡くなる2日前に、もう最後になるかもしれないから
と顔を見てお話ができる機会をいただきました。

この状況でどんな話をすれば良いのか
若いころの自分なら迷っていたかもしれません。
ですが、私はゆっくりと順番に
次の話をさせていただきました。

現在の家庭の状況、
子どもたちのこと、
これまでの思い出
沢山の感謝、
これからの約束、です。

話をしながら握り返されたその手は力強く
最後までパワフルな人だったという印象です。

私の話が終わった後、私の目を見ながら
義母はあることを語りました。

それは私からすれば小さな小さな出来事の話でした。
しかし、義母の中にはずっと後悔の念があったと言い
ずっと謝りたかったと言っていました。

私は本当に思いもしない言葉に、ただただ
「大丈夫、気にしてませんよ。大丈夫です」としか
言い返すことができませんでした。
それだけ何でもない小さなエピソードの一つでした。

おそらく悔いの残ったまま
最後を迎えたくはなかったのでしょう。

告白と懺悔をすることで
義母が自分自身に赦しを与えることができ
思い悩んでいた自責の念が晴れたのならば

私が最後に会って話ができたのも
何か意味のあることだったのかと
そういう風に思います。

誰でも死せるのならば

亡くなるというのは幸せなことだと思います。
周囲の人から惜しまれながら、人間としての
尊厳ある最後を迎えることを意味するのが
亡くなるということだと思います。

昨年の夏に私の父と呼ばれる男が死にました。
酷い言い方かもしれませんが
その時の心情は以前の記事で書いた通りです。

人というのは死にます。

突然、死を迎えてしまう人間もいます。
全ての人間が幸せに亡くなられるわけではないのだと
私は感じました。

生命の終わりは分け隔てなく等しく人間に
与えられる事実です。逃れようのない事実に対し、
真剣に向き合うにはどうすればよいのでしょうか。

死を迎える人に向かって
「頑張って」「きっと良くなる」
「あきらめないで」と希望の言葉をかけることが
どれだけ残酷なことなのかと私は思います。

心無い薄情な人間だと思うでしょうか
倫理観のない無教養な愚か者だと思うでしょうか
どう思われたとしても構わない
そんなことよりも大事なことが私にはあったからです。

それは命あるうちに、偽りのない愛を伝えること

そして、残された者がしっかりと前を見て
歩いて行けることを証明すること。
そうすることで、いらぬ心配を残さず
最後の準備へと向かえるのではないでしょうか。

いなくなってしまった後でどれだけ感謝や愛情を
表したとしても、もう本人に伝わることはありません。

伝えるべきことは伝えられるときに
伝えなければ伝わることはない
ということを学んだのです。

寝ずの番に

故人を偲び、線香番。
少し不謹慎かと思いましたが
長い夜です。誰かに聞いて欲し
かったのかもしれません。

今、この時の体験や感情を
noteに残しておこうと思ったのです。

いつもの記事も、リアルな記事も
束の間の空想も含めて
全部が1gou_radioです。
まぎれもないリアルな日常なのです。

おわりに―

測り知れない暗闇の不安と闘い続け
苦しくも最後まで気丈であった
義母の冥福を祈ります。
どうぞ安らかに







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