ドラゴンクエストYOUR STORYはデビルマン以下なのか。以下でした。【ネタバレ有り】
警告
本稿には映画ドラゴンクエストYOUR STORYの致命的ネタバレが含まれます。どうせ見ないって人と、地雷原とわかって突っ込んで爆発四散する遊びをするタイプの人以外は読まないでくださいね。
序
「いやーこの映画はデビルマン以下だわ」
ちょっとひねくれた映画好きが過敏に反応する言葉だ。おれもそうだ。
デビルマン以下だとぉ何言ってやがんでいデビルマン以下の映画なんてごまんとあらあ。だいたいデビルマンは楽しめるって時点でテラフォーマーズより圧倒的に上なんだよ!デビルマン以下っていうやつに限ってデビルマン見てねえし!おらっ!実写テラフォーマーズを見ろッ!キカイダーリブートでもいいぞ!
と吹き上がってしまう。
今話題のドラゴンクエストYOUR STORYもそんなちょっとつまらない映画にありきたりの評判が聞こえてきた映画だった。
おうそれならこのおれがこの目で確かめてやらぁ!ちょうどワイルドスピードスーパーコンボと一緒に見れるじゃねーかいくぞー!!うおおおーー!!
デビルマン以下でした。
もう実写テラフォーマーズ以下だし、覇穹封神演義やけものフレンズ2にすら及ばないよ。
というかありとあらゆる創作物でこの下をくぐっていくのは理論上無理。なぜならドラゴンクエストYOUR STORYは物語ではないんだよ!!
な、なんだってー!!
ドラゴンクエストYOUR STORYは物語ではない
いきなりこんなこと言っても正気を疑われるんですが、未来世紀ブラジルってあるじゃないですかあっ未来世紀ブラジルのネタバレ食らうのやな人いますぐ閉じてね。あの映画ラストで主人公が拷問にかけられてピンチってなったとき助けがきてディストピアから脱出してイエーイサンキューラブアンドピース!!ってしてたらそれが全部拷問に使われた薬物による幻覚だった。っていうオチで終わるじゃないですか。
ドラゴンクエストYOUR STORYはそのイエーイサンキューラブアンドピースを100分に伸ばした映画です。
最後ミルドラースの代わりになんか出てきて、この映画はDQVをリメイクしたVRDQVを遊んでたオッサンの幻覚を見せられてたっていうバラシがあるんですよ。その時全ての疑問が解けるんですよ。
なんでダイジェストだったの?
そういうゲームだから。
なんで劇伴は豪華なのに当て方が下手くそなの?
そういうゲームだから。
なんで世界の描写が小さくて主要キャラ以外人がほとんどいないの?
このゲームがそういう描写に留まってるから。
なんでご都合主義が起きるの?
ゲームだから。
なんで結婚出産がRTA状態なの?
このゲームでそういう事になってるから。
なんで主人公は本当の気持ちを自己暗示で抑え込んでたの?
このゲームにそういう機能がついてるから。
なんで主人公はプレイヤーっていう記憶がないの?
このゲームに現実での記憶を消してキャラになりきる機能がついてるから。
なんで?なんで?なんでこここうなの?なんでこれこうなの?なんでこうなってんの?なんでこんなことになってんの?
これはそういうゲームだから。
なんでこの映画つまんないの?
それはね!!このVRDQVってクソゲーがつまんないからだよ!!
覇穹封神演義に失礼
YOUR STORYの劇中ゲームVRDQV(仮称)はつまらなかった。
そもそもDQVの物語を100分に詰め込むことなんて無理でしょ。じゃあどうするか。そうだね、ダイジェストだね。
子供時代スキップが発見されたRTAのごとくただエピソードを置いていくだけ。そこに至る伏線というか前提条件すら提示されず、会ったことのない人に「お久しぶりです!」って言われて顔を赤らめてさっき会った人に「背中を預けられる相棒が最高のパートナー」とか言って求婚して結婚して子供ができて出産して石化して子供が育って石化がとけてゲマ倒して天空の剣なげるの。
もうダイジェストなんてレベルじゃないの。年表よ年表。
年表ですらない子供時代スキップや各種イベントスキップが発見されたRTA。
DQVを深く理解してないと理解できないシーンの連続。
DQVを深く理解しているとこれ以上ない我が国の言葉では表すことのできないような侮辱と冒涜を受けるオチ。
最悪のデッドロックが発生してるんですよあれこんなアニメどこかで…。
けものフレンズ2に失礼
戦闘シーンだって「ベギラゴン!」って言ったら火がボーって出てさあ。「ラリホーマ!」って言ったら相手が全員倒れてさあ。強そうな魔法ってバギクロスとメラゾーマくらい。メラゾーマだって火球投げつけてボーンだけどね。アイテムだって名前が出てきたのはやくそうとてんくうのつるぎくらいか…。あとはなんかビョンビョンジャンプしてクルッと回って斬りつけるとパーンて弾けて消える魔物たち。
これが劇中ゲームであるっていう伏線は一切なくて、マーサとプサンが一度ずつ「今回は」って言葉を使うだけ。ループものかな?ちがったね。
ラスボスがミルドラースじゃないっていう伏線は一切ない。マーサのこぼした「今回のミルドラースは…」という言葉を伏線として捉えられるひとはとても広い心をもっているのでもうこんな記事読んでないで恵まれない子どもたちを助けにアフリカへ飛ぶべき。
スラリンがワクチンだったっていう伏線も一切ない。ただ子供時代からずっと主人公についてきてて、ちょいちょい思わせぶりに石の隙間に滑り込むだけ。あ、スラリンはミルドラースの代わりにラスボスとして登場してくるコンピュータウィルスへのワクチンプログラムなんですよ。ははは。おもしろいね。すっごーい。「おれはワクチンだ(声:山寺宏一」
劇伴はDQの名曲を使ってるから鉄板なんだけどV以外のIVとVIとVIIの曲もあったかな…?とにかくはいこのシーンにはこの曲ね!このシーンはうーん…この曲!ってあてはめていっただけのヘッタクソな使い方。まあOSTは買ってもいいんじゃないかな!
はい、ここ盛り上がるシーンですよーとガイドさんが旗を振るかのようにかかるDQのテーマは寒気がしましたね。
あれ…戦闘がワンパターンで敵がワンパンでそもそも存在しない伏線を回収しそこねてエピソードはなにも解決せず名曲を聞くと寒気がする…おれこんなアニメを…どこかで…。
デビルマンに失礼
ここに上げたVRDQVの問題点はほんの一部にすぎない。1シーンあたりの問題点があまりにも多すぎて書ききれない。
でも大丈夫。この無数の問題点はドラゴンクエストYOUR STORYの問題点ではない。だって劇中ゲームVRDQVがそういうゲームなんだもん!VRDQVがそういうゲームだからなー!っかー!ちょっと正確に再現しすぎたわー!つらいわー!っかー!
そう、ありとあらゆる「つまらない」という批判から逃げるためにDQVを劣化リメイクした架空の劇中ゲームVRDQVが用意されているのだ。もし誰かがゲームをプレイしているという描写が「現実世界で本物のDQVをプレイする佐藤健」だったらまだギリギリセーフだった。それなら「こんなのDQVじゃない!ここもあそこも違うじゃないか!」っていう怒り方ができた。しかし、ドラゴンクエストYOUR STORYはわざわざ名作DQVを劣化リメイクした架空の劇中ゲームVRDQVをプレイする成人男性の話だ。怒りようがない。架空の人が架空の世界で架空のゲームをやってるんだからそれはもう全部そういうゲームだからで片付いてしまう。あまりにもひどい。無だ。
ドラゴンクエストYOUR STORYがつまらなかった?しょうがないよ。そういうゲームを映画化したんだもん。ま、それはDQVじゃなくてDQVを劣化リメイクした架空の劇中ゲームVRDQVなんだけどね(笑)。
これは視聴者を愚弄しており、DQVへの冒涜であり、全てのゲームと全ての制作物を侮辱して、劇中劇というギミックを踏みにじった、制作陣からのFUCK YOUだ。
しかもこんなものを「これはお前の物語だ」って投げつけてくるの。無を投げつけられエンディングを呼び出しmovie end.です。こんなものはおれの物語じゃない。監督と脚本家の物語だ。ドラゴンクエストおれストーリーはファミコンやスーファミでDQやってる思い出だよ。
こんなものを実写デビルマンと比べるなど失礼だ。実写デビルマンは確かにいろんな不幸が重なってああなってしまったが、実写デビルマンには実写デビルマンを作るぞという強い気概を感じられる作品だった。あと見ててなんだかんだ言って楽しい。デビルマンを見ろ。いや見なくていいです。
さいごに
俺はエンドロールを見るのが好きだ。スタッフの名前が小さな英語だらけで全然読めなくてもエンドロールが好きだ。作中で印象強く使われた劇伴のメドレーがかかり、ああこんなシーンがあったこんな事もあったと今見た映画のあれやそれやを反芻させてくれる。映画への感想はエンドロール中に言葉になる。それが楽しかったにせよつまらなかったにせよ、どんなに凸凹でも一瞬一瞬を懸命に生きた俺たちの平成だからな。それを「お前のやってるドラクエって、醜くないか?」と綺麗に整地していったQuartzer。お前ら平成ライダーに負けたからってまさかドラクエの方に来てるとは思わなかったよ。PARTY-P.A.R.T.Y.-
蛇足
DQVがウィルスに破壊され、青年は自室で呆然としていた。
「僕はやっぱり勇者なんかじゃなかった…主人公でもなかった…これはゲームの世界で…みんな作り物だったんだ…」
ピキュイーン!!
「ぶっ飛ばすぞ!」
「誰かいるんですか!?」
ベランダに現れる紫のターバンを巻いた無精髭の濃い中年。
「私は…勇者だ」
「あなたが…勇者!?そんなヒゲが濃いのに…」
「だまらっしゃい!佐藤くん!」
「佐藤くんって誰です!?」
「私はね。勇者なんだ。勇者で主人公だ。だがドラゴンクエストのではない。偽物だからここにこうして閉じ込められている!だが君は…ドラゴンクエストの主人公じゃないか!」
「違うんです…ドラゴンクエストはただのゲームで…僕はただのプレイヤーだ」
コントローラを取り落とす青年。
「佐藤くん」
「佐藤くんじゃないですし勝手に入ってこないでください!」
「私も佐藤なんだけどね」
「面倒くさくなるんで黙っていてくれませんか仏!!!」
中年はコントローラを拾い、青年に握らせる。
「ドラゴンクエストはただのゲームかもしれないが、ドラゴンクエストYOUR STORYは…君の物語だ!君の冒険は本物だ!」
「!」
「みんなが待っているぞ!」
「……!はい!ありがとうございます!」
再びスーファミの電源を入れる青年。
メインテーマとともにタイトル画面が写る。
「ぼうけんのしょが…残ってる!これはあの時の…!」(ここで回収できるようどこかで伏線張っといて)
「どこかパパスにも似ている人だったな…そうだ、お名前を!」
振り返るとそこにはもうターバンの男性の姿はなく、DVDケースが落ちていた。そのタイトルは「勇者ヨシヒコと魔王の城」。ピロッとつけられた付箋には『劇場版決定』の文字。
青年は再び主人公の姿となり、再びDQVの世界を取り戻すためウィルスへ戦いを挑むのだった。
というシーンがあれば100億点だったんだけどね。
あ、パパスのぬわーっ!はなんと2回聞けます。やったね。
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