見出し画像

10年絵を描き続けたいおれが断食体験に行った話

はじめに

冬コミが終わり、正月をダラダラと過ごし、メシと酒が寝ることの次くらいにすきなおれがついに「飲み食いしたくねえ……」などと思ってしまった。これは好機。かねてより興味のあった断食に出かけようと思い立った。

結論からいうと、4泊5日で体重が4kg減って、内臓脂肪もかなり減って、腹回りもかなりサイズダウンした。満腹になる量が減ったし、食事をゆっくりするようになった。ストレスは解消され、体は軽くなり、執筆への意欲は増した。人間何も食わんでも何日か生きられる実感を得たし、これから緩やかに健康になっていくんじゃないかという希望を得た。いいことずくめだったのでおまえにも紹介したくキーボードを叩く次第だ。

お世話になったのはアイウェルネス伊豆高原
ここを選んだ理由は療養所を起源とするのが第一。断食宿をいくつか調べてみたところスピリチュアル~な感じに怪しいところが多いが、ここは健康増進のみを謳っている。また東京からアクセスのしやすさが第二、ちょうど行きたかった伊豆というのが第三、料金が安い(特に初回は体験コースと銘打ち充実したサービスを安価に受けられる)というのが第四といったところ。

準備から到着まで

ワークマンのボストンバッグ(1200円)に詰め込んだのは下着と靴下4日分、部屋着上下、パジャマ用ジャンプスーツ。動画や電書用の大型タブレット。ニンテンドースイッチ。紙とペンとイラスト教本。
東京から東海道本線、伊豆急行線に揺られ、13時ごろに伊豆高原駅で下車。宿に電話をかけると迎えのミニバンをやってくれる。ものの数分で迎えが到着。同じミニバンには一緒にもうひとり乗り込んだ。伊豆の繁忙期は夏で、真冬は全体的に少ないということだ。
宿につくと簡単な説明を受け、部屋に通され部屋着に着替える。器械によるマッサージと、人の手によるマッサージを受けたら入所面談。体組成計でいろいろ測られたり腹回りをメジャーで計られたりして「あはー、メタボですねー」とかなんとかいわれる。まあそういうのは自覚があるからいいんだ。
そんなこんなしてその日の入所者が集まった17時から初回オリエンテーションを受ける。WinXPのノートPCで。ひっさびさにみたわあの起動画面。

施設

アイウェルネス伊豆高原は本館と百年杉館からなる。フロントやレストラン、風呂などホテルとしての機能を百年杉館が持ち、マッサージルームや面談室など療養所としての機能を本館が持っているようだ。百年杉館はその名の通り杉の香が立ち込めるログハウス風の作りでキレイで新しい。一方本館はあらゆる部分から昭和後期を感じさせる古い作り。宿としての機能は両館とも持ち合わせており、希望した部屋(和室と洋室、そしてそれぞれのグレードが選べる)によりどちらの館が決まる形になっている。おれは昭和感がものすごい本館の和室に泊まったのだが、どの部分もきれいにしてあり、総じて確かに古いがボロくはないという印象だった。
ほぼ全館に無線LANが行き渡っており、もし部屋の電波状況が悪ければルータを無料貸出してくれる。つまりデバイスを持っていけばヒマは潰したい放題だ。電波強度はスマブラのオン対が全く支障なく遊べたレベル。
風呂は温泉が引いてあり、洗い場8畳、湯船8畳くらいの広さ。そもそも人が少ない、加えて男性はさらに少ない、さらにみんな好き好きな生活パターンで活動しているので、入居中だれかと風呂で出会うことはなかった。独り占めだ。ウッシッシ。更にいうと女風呂から音が聞こえたことも一度もなかった。もちろん露天風呂もあるのだが、こちらは開く日と開かない日がある。

食生活

断食コースでは前半断食、後半補食、最終日の朝に通常食を食べてチェックアウトとなる。おれは4泊5日だったので1日目と2日目が完全断食。3日目と4日目が補食。
入所前日から食べる量を減らしておいて、当日も朝から何も食べずに宿へ向かう。水分は多めにということだったのでペットボトルに入れた水を電車の中でちびちびやっていた。これで意外と腹が減らず、そのまま昼もスルーして宿へ入った。宿内では所定の位置にある浄水器から水筒に水を汲み、部屋のポットで沸かして、備え付けの粉末茶が飲み放題。粉末茶がなくなってもフロントに言えば無限に補給されるというなんともありがたいシステム。まあ後半ずっとお湯飲んでたんですけど。お湯美味しい。
あと断食中はペットボトル1本の酵素ジュースなるもの(味は甘みのある酢のドリンク)が与えられ、これを飲んでるだけで空腹感はなかった。

日程後半、補食は10時と17時の二回。基本は玄米の三分粥と野菜スープで、回を重ねると少しずつ献立が豪華になっていく。最終的には季節の野菜の煮物やところてんがついた。この補食がなかなかのもので、三分粥とはいえ玄米なのでゆっくりよく噛む事ができる。あっもしかしてこれからの食事ずっとこれでいいんじゃないか?と錯覚するほど食いでがあり、5日間空腹感とはいっさい縁がなかった。
最終日は晴れて普通食ということでパンとサラダとキンメの煮物というとても人間らしい食べ物にありつける。
補食、普通食ともに味付けが良くて、断食中ということもありゆっくり美味しくよく噛んでいただける。ここ大事なポイントだと思います。

朝から昼

朝起きたら8時に体操が開催される。気功ナントカ十八ナンタラとかいうボジャーンとしたビデオを手本に軽い体操をするのだが、これは合う合わないあるなーと思いおれは初回きり参加せず、部屋でひとりラジオ体操をしていた。
9時ごろからマッサージルームでゴウンゴウンされたり、人の手でマッサージされたりする。もうこれだけですぐ10時や11時になってしまう。
ところで伊豆高原はそもそも観光地なので、観光スポットが随所にある。そしてこのアイウェルネスでは無料で任意の場所まで送迎をしてくれる。事前に行きたいところを調べておけば昼間は遊び放題できるというわけだ。そうでなくとも宿のほうで毎日日替わりのプログラムを用意してくれていて、おれの場合火曜のシャボテン公園、水曜のピラティス教室、木曜の城ヶ崎海岸とランプミュージアムに参加させてもらった(いずれも無料)。
外出送迎は基本的に11時出発、2時半回収なので用意されたプログラムに乗っかっていればあれよあれよという間に夕方になってしまうという寸法だ。腹が減ったという気持ちになるヒマすらない。

だが重要なことにこれら朝の体操やお出かけプログラムは参加自由。参加しなくてもなにか言われることはない。マッサージも一回ブッチしてしまったが特に何も言われなかったのでたぶん同じ扱いなのだろう。つまりこの宿、強制参加イベントは何一つないのだ。
さらに宿泊中スタッフが部屋に入ることは無い(掃除やシーツ替えはしたかったら自分でする)ので、要するに一日中部屋で寝ていても、なにか作業をしていても、誰も何も言わない。自由!完全なる自由!こころが…ときはなたるる……

ところで風呂は温泉と書いたが、事前に「断食中は3分以上の入浴は厳禁」と注意される。立ちくらみが起きやすくなり、下手すりゃヤベーのだとかなんとか。だがなんやかんやいって各々の体調と相談しながら~みたいな濁し方をされたので自己判断でいけるということだろう。おれの場合5日間立ちくらみは起きなかったが、確かにこれもっと行ったら立ちくらみになるなみたいな予感みたいなものは感じた。
あとロビーに手足までグニグニしてくれるマッサージチェアがあって暇さえあればグニグニされてた。

ところで宿には洗濯機と乾燥機が設置されていて、自由に使うことができる。4泊分の着替えを持ち込むことはなかったかもしれん。話に聞くと2週間くらい長期滞在する人もいるんだとか。えっそれじゃあ1週間完全断食じゃん。さすがにそれは大丈夫なの。

宿の消灯は21時なので以後は部屋で過ごす他ない。といっても前述の通りwifiは完備されてデバイスは持ち込んでるし、テレビもあるし、何よりおれは絵を描いてればどんどん時間がすぎていくタチだ。だが何も食べていないし、昼間動いたしで眠気はかなり早くやってくる。ビビるほど早くやってくる。具体的には21時でもう眠い。連日ちゃちゃっと顔洗って歯みがいてオヤスミーといった感じだった。あまりに早く寝すぎて翌日6時とかに目が覚めてしまうわけだが。

結局宿のプログラムに身を任せ、空いた時間をゲームや絵で潰して風呂入って寝るを毎日続けたらあっという間に5日たってしまった。
空腹感による苦しみは一切なかったし、終わったらあれが食べたいこれが食べたいみたいな欲求も出なかったし、暇で暇でしょうがないということもなく、充実した5日間だった。

4日目の夜だけバカみたいな大風が吹いて全然寝られなかったけどな!

最終日

そして最終日の退所面談にて結果発表。その時点で体重は4kg、体脂肪率も数%減、腹回りもがっつり減という結果に満足しながら朝から金目鯛をいただき、チェックアウト。初回体験では近所の赤沢温泉への招待券を貰えるのでチェックアウト後に温泉へ送ってもらい、そこでひとっ風呂浴びて(なかなかガッツリした風呂だったがここでも立ちくらみは出なかった。結構しっかりした朝食いただいたからかな)改めて駅へ向かって帰宅の途についた。

帰ってきてから晩飯を食うにあたり食べる量というか食べられる量がかなり減ってることに気づいた。ほしかった成果はまさにこれなので大満足な結果に終わった。これがこれからの健康増進の足がかりになってくれるだろうし、これから10年後も元気に絵を描き続けるための礎となるだろうと強く確信を持ち、おれはひさびさの缶チューハイをカシュッとやるのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?