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Youtubeが「子供向け」だった時代は、2020年に終わりを告げる。

最近「Youtube、始めてみない?」というお誘いを受けることが増えた。そこで一度しっかり勉強してみようと思い、調べたことやその時に感じたことを記録していくことにする。まずは「なぜみんなYoutubeをやりたくなったのか」「大人向けのメディアに成長してきた背景」について考察してみる。

 かつてYoutubeは見逃したテレビ番組やミュージックビデオを、オンデマンドで視聴できる違法転載コンテンツの集積所にすぎなかった。少なくともぼくにとっては。Youtubeでしか観られないオリジナルコンテンツは、子供向けのものか、過激なドッキリや内輪ウケを狙っただけのクオリティの低い番組ばかり。たまに良質なコンテンツに巡り合うことはできても、それ以外はノイズでしかない。まるで砂漠の中のオアシス状態。探し物が明確ではない限り、自分から積極的に探しにいく気にはなれなかった。(自転車のパンク修理の仕方とか、見た方が早い特定のHow to モノは動画で探すことも多かったが、、、)

 テレビでは流せる番組数に限りがあるため、最大公約数を求めてマス向けのコンテンツを作る。そこに多くの人に宣伝したいスポンサーが付くから、潤沢な制作費を使ってハイクオリティな番組作りができる。だけどスポンサーのリスクを回避するため、コンプライアンスは厳しくなる。制作サイドも消極的になり、必要以上の自主規制を強いられる。これが「最近のテレビってつまらないよね」と言われるようになった所以だ。そこにYoutubeの可能性がある。テレビで扱えないような、時に過激で、ニッチなテーマを深く掘り下げる番組作り。でもニッチな番組では、収益があがりづらいから予算がかけられない。これがYoutubeのジレンマだった。

 それが、ここ数年で変わり始めた。一番の理由はYoutubeに広告出稿する企業が増えたこと。2017年、国内の動画広告出稿総額は1093億円だったが、今年は2000億円を超えると予測されている。これはGoogleが、中小企業でも出稿しやすい広告メニューを用意したこと、そして大勢の人に闇雲に宣伝するよりも、「自分たちの商品・サービスに合わせたターゲットを絞って宣伝した方がコスパがいい」と考える企業が増えたことが関係している。つまり、ニッチなことが広告価値を高める要因になりうるのだ。これはアマゾンのロングテール(販売機会の少ない商品も幅広く取り揃えることで、顧客の総数が増え、結果として売上げが大きくなる戦略)と似ている。しかも小売業と違い、デジタルコンテンツでは配送コストもない。だから少数に深く愛されるコンテンツは、今後もどんどん需要が高まっていくだろう。また市場の拡大にともなって、Youtuberの収入もうなぎのぼりに増加している。2017年にGoogleからYoutubeの動画配信者に支払われた総額は219億円。今年には579億円を突破する勢いだという。これに加えて、Youtuberには動画内でステマを行う企業案件、グッズ販売などの収入源があり、年間10億円を稼ぐようなYoutuberも誕生した。

 金を稼げるということは、そのために予算をかけられるということ。Youtuberには、テレビとは違った制作費の使い方をする人も多い。たとえば、「100万円分宝くじを買ってみた」とか「1000万円プレゼント企画」というもの。コンテンツとしては、少し下品な気もしなくもないが、テレビにはないインパクトがある。こういった企画やYoutuberのテレビ出演が続いたことで、Youtubeは「金が稼げる場所」という認識が広がっていった。そしてテレビタレントやプロスポーツ選手を始めとした、知名度や高いスキルを持つ人材が流入し始めた。Youtuberは他のチャンネルと差別化を図るために、自分たちの強みがもっとも生かせる領域でコンテンツを作る。だから、ビジネス、スポーツ、アウトドア、車、DIYといった、趣味やライフスタイルを深掘りするチャンネルが増えてきたのだ。予算があれば、動画のクオリティはどんどん向上する。いまのYoutubeには、そんな好循環が生まれている。

 とまあ、ざっくりとした流れはこんな感じだろう。2019年は、Youtubeの成長曲線で閾値になる年だったのではないかと感じる。2018年にチャンネルを開設したお笑い芸人キングコングの梶原(2020年4月現在のチャンネル登録者数 189万人)や、総合格闘家の朝倉未来(99.4万人 )が大きな成功を収めたことで、テレビタレントやスポーツ選手の参入が一気に加速したからだ。今後、Youtubeがメディアとしてどういう成長を遂げていくのか、ますます楽しみになってくる。

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