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読書ノート 「華厳経入法界品 上」 梶山雄一他 訳注

 「本書は、『大方広仏華厳経』の終品「入法界品」のサンスクリット語原典から現代語への初めての全訳の試み」である。

 内容は、善財童子が五十一の善知識人を訪ね、悟りの教を学び、最終的には悟入(悟りを開いて真理の世界に達すること)する。

 登場する人々の名前が良い。例えば、善財童子を旅立たせる文殊菩薩はこのように説明される。

 マンジュシュリー(文殊師利)菩薩 ダニヤーカラ大都城(覚城/福城/服生城)の東、ヴィチトラ・サーラ・ドヴァジャ・ヴェーハという林(荘厳幢娑羅林)において、「法界の真理の光輝」という経を説く

 「マンジュシュリー」という「音」が先にあり、それに呼応する形で「文殊」という漢語が当てられたのだろうと推測がつく。すべての漢字の前にはサンスクリットの音が存在するということを感じることが出来る。

 五十一人プラスアルファの名前はこうだ。

メーガシュリー、
サーガラメーガ比丘、
スプラティシュティタ、
ドラヴィダ人メーガ、
ムクタカ長者、
サーラドヴァジャ比丘、
アーシャー優婆夷、
ビーシュモーッタラ・ニルゴーシャ仙、
ジャヨーシュマーヤタナ、
マイトラーヤニー、
スダルシャナ、
インドリエーシュヴァラ、
プラブーター、
ヴィドバーン家長、
有徳の長者ラトナチューダ、
香料商サマンタネートラ、
アナラ王、
マハープラバ王、
アチャラー優婆夷、
遊行者サルヴァガーミン、
香料商ウトパラブーティ、
船頭ヴァイラ、
ジャヨーッタマ、
シンハヴィジュリンビター、
遊女ヴァスミトラー、
ヴェーシュティラ家長、
アヴァローキテーシュヴァラ、
アナニヤガーミン、
マハーデーヴァ神、
大地の女神スターヴァラー、
第一の夜の女神ヴァーサンティー、
第二の夜の女神サマンタ・ガンビーラ・シュリーヴィマラ・プラバー、
第三の夜の女神プラムディタ・ナヤナ・ジャガッド・ヴィローチャナー、
第四の夜の女神サマンタ・サットヴァ・トラーノージャッハ・シュリー、
第五の夜の女神プラシャーンタ・ルタ・サーガラヴァティー、
第六の夜の女神サルヴァ・ナガラ・ラクシャー・サンバヴァ・テージャッハシュリー、
第七の夜の女神サルヴァ・ヴリクシャ・プラプッラナ・スカ・サンヴァーサー、
第八の夜の女神サルヴァ・ジャガッド・ラクシャサー・プラニダーナ・ヴィーリャ・プラバー、
森の女神ステージョー・マンダラ・ラティシュリー、
シャカ族の女ゴーパー、
菩薩の母マーヤー王妃、
天の娘スレーンドラーバー、
ヴィシュヴァーミトラ童師、
長者の子シルパービジュニャ、
バドローッタマー、
金細工師ムクターサーラ、
スチャンドラ家長、
アジタセーナ家長、
シヴァラーグラ婆羅門、
シュリーサンヴァ童子とシュリーマティ童女、
マイトレーヤ菩薩、
マンジュシュリー菩薩、
サマンタバトラ菩薩。


 特殊な言葉使いとして以下を覚え書き。

「普賢」…「普く優れた」を意味する形容詞。それが文殊菩薩が誓願した慈悲行の名となる。

「普入」…もともと「ともに来る」「集まる」を意味する語であるが、『華厳経』では主に、宇宙のすべての世界系がこの現実(娑婆)世界と融合し、統一され、一体化する意味に使われる。

「神変」…仏がその天穹を無限大に拡大し、あらゆる種類の荘厳によって無上に装飾すること、また菩薩が無限に遠い宇宙の十方の彼方から無数の眷属とともに仏の仏法会に飛来すること。「威神力」は、「神変」」を示現する仏菩薩の超自然的、魔術的な能力の意味。

 また、仏菩薩が他者を統御、支配、護持する意味で使われる。「奇蹟」「威厳」「遊戯」「威力」などの語がほぼ同義で使われる。


 上・中・下巻と分けて出版されている。一度は読み通してみるべき本。
 きっと画期的なのだろうなあ。

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