死神

昭和3年生まれの祖母は、だいぶまえに亡くなった。弱っていき、老人しかいない病院に入院して、最期は多臓器不全で逝った。いわゆる老衰だったと思う。突然倒れてそのまま死んだ父方の祖母とは違って、死に向かっていくみちのりを、家族も見ていたし、本人も感じていたと思う。

入院生活って、いろいろと周りのひとが面倒を見てくれるものだから、例えば食事も、おさんどんせず、決まった時間に用意してもらえ、お金を払えば、寝間着もまいにち、洗濯しなくても、支給される。だから痴呆が進むというのを聞いたことがあるし、やはり終末期なので朦朧として、たしかではない。

さいごのあたり、祖母がしきりに話していたことは、女学校時代のおともだちのことだった。何年も会ってないひと、先に亡くなったひとのこと。疎開してしまって悲しかったこと。そんなひとたちが、今日はお見舞いに来てくれたというはなし。実際は家族以外見舞いになんて来てなかったけれど。死の前に思い出していたのは、少女の頃のおんなともだちだった。祖母より先に亡くなった祖父のことなんて、覚えてはいたけれど、そんなには口にしなかった。

朦朧として夢見る祖母が語るおんなともだち。わたしが、死ぬとき、走馬灯でも、最期の日々に想うのは、わたしが勝手に盟友だと思っているおんなともだちだといいなと思っている。

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