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最愛の方へ

初めて想いを告げてから、もうすぐ16年になります。あの頃は何も分かっていなかったのです。ただ、好きだと伝えられれば、自分の心に抱えていたものを軽くできると思っていました。あなたの方がずっと大人だったから。あなたは薄々、気付いてはいたけれど、あのタイミングで私が告げるとは思わなかったというところでしょうか。一切、表情を変えることなく、最後まで私の望み通りに接してくれました。

一緒にいられた時間より、離れてからの方がずっと長い。いろんな変化がある中で、ただ一つ変わらないものと言っていいでしょう。私にとって、あなたが最も大切な存在であるということは。想いを告げるより遥か前にはすでに、私の心はあなたに持って行かれたのです。その時から、私には最も大切な人となったのです。

一緒にいられた時も、そのことの有難さや幸せ感を分かっているつもりでした。私が何とか一緒にいる時間をひねり出そうとしていることも、そのために多少のわがままを言っていることも、全部分かっていらっしゃったでしょう。それを分かってもなお、私を突き放すことがなかった。今、振り返るとなぜ突き放してくれなかったのかと思うことがあります。そうしていれば、私はあなたから離れられたかもしれない。今、こう言うのも、わがままだと分かっています。でも、あの頃に離れていれば、最も大切な人でありながら「一つの恋」として終わらせることができたかもしれません。

そして、そうしていれば愛することはなかった。今、どんなに離れていても会うことがなくても、あなたの存在はあまりにも大きい。”忘れて、次に進んだ方が良い”と(ごく僅かな)周りの人に言われたこともあります。それができるなら、とっくにそうしているし、どれだけ楽になるかとしばしば考えます。でも、私にはできません。私が愛するのはあなたしかいません。

すっかり面変わりしたあなたを見た時、喉元まで悲鳴が込み上げてきたのを必死で抑えました。人の顔を見て悲鳴をあげそうになったのは、あの時が初めてでした。でも、変わったのはルックスだけでした。感染症の流行で、また会えなくなっている今のあいだに再度変わったとしても、その変化はルックスだけでしょう。

誰に対しても優しいのに、たまに少ーし毒を吐くあたりも、仕事人間で自分の(身体の)ことは全部後回しにしてしまう点も、きっと変わってない。もともと細身なのに、またお痩せになってないか心配です。

直接的な言葉にできなくなりましたが、私が今も想っていることはお分かりですよね。なのに、なぜ相変わらずお変わりないのですか。こちらはあるだけの勇気を振り絞り、躊躇を無理やり振り切って送信ボタンに触れたメールに、律義に返信を下さるのはなぜですか。私は、どんな言葉を頂いているのでしょうか。

いや、その前に、私が今も想っていることをどう思われているのですか。驚いていらっしゃるのか、お怒りになっているのか。それとも「お前は変わらない」と思っていらっしゃるのか。それだけが知りたいです。

お会いできることなら、お顔を拝見したい。でも、本当はあなたが、あなたの思う幸せであってくれれば、ほかに願うことはありません。それが私の望みです。

いつか必ず訪れる、あなたのいない世界。順番がルール通りなら、必ずその日が来ます。その世界で私は生きられるのでしょうか。あなたのいない世界など、私には意味がありません。どこかで生きて、幸せでいて下さるだけで良いのです。それで私は支えられ、生きていられます。

あの頃と変わらず、ずっと私を支えて下さっているのです。離れてからも、ずっと。おそらく、あなたが思っている以上に。一緒にいられたあいだに、もっとちゃんと伝えるべきでした。私は(あなたに対して)何もできないけれど、その何倍も私に与えて下さいました。

私の命と引き替えても、あなたにはあなたの幸せが続いてほしい。

今も、私が愛していることを赦して頂けますか。

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水野うたさんの#あなたへの手紙コンテスト に参加しました。

最愛の人への出せない手紙を綴る機会を頂けたことに、心から感謝致します。ありがとうございました。

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