見出し画像

ハーフフィクションストーリー

あいつ

もの心ついた頃から、あいつが居た。
俺はあいつが嫌いだった。
見た目はヒョロガリで、何かにつけて我儘なくせに小心者。
人の顔色をうかがってはへらへらして
そのくせ、下ばかりを見て安心していやがる。
何かにつけて、怠けるくせに自分を大きくみせたがる。
最悪なやつだ。
いつも気にしないようにしているが、目につく。
本当に鬱陶しい。
なんの因果かそいつは社会に出てからも俺と同じところに居やがる。
いっそ、居なくなってくれないかと思った時期もあった。
あるときは、酔っぱらい陽気に武勇伝まがいな語りをして、ある時はこの世の終わりの様な面をしていやがった。
そんなやつの事などいっそ無関心になればよいのだろうが、気になって仕方なかった。

俺は、これも縁と切り替えてみる事にした。
話などする事は無いだろうと思っていた。
だが、俺が決めた事なんだ。
話しかけてみよう。
「よう❗️」
そいつも返してきた
「よう」
相変わらず気に食わない顔していやがる。
あいつからは決して話しかけては来ない。
イラつく。
だが、こっちも負けらんないんだよ!
苛ついたら負けと、自分にルールを付けた。
なんとお人好しなこった。
俺は、毎日少なくとも一回は話しかけて、と言うか、そいつに言い聞かせてみる事にした。
ある時は辛辣に、ある時は丁寧に、ある時は優しくあいつに接した。
そんな事を続けていたら、俺もなんだか気分が良くなってきた。
あいつにも伝わったのか、最近は顔色がいいじゃないか。
なんか嬉しくなった。
そしていつしかあいつは俺の相棒、または友人もしくわ、信頼のできる存在になっていた。
はじめは、ウジウジして背中を丸めてだらしなく怠惰なやつだった。
俺が話しかけるようになってあいつは変わりやがった。

今日も、俺はあいつと一緒だ。

俺は朝起きて身支度を整え、いつもの出勤の時間だ。
今日も気合い入れていきますか!
さあ、いくか。

あ!忘れるとこだった。
俺は鏡の前に立つ
少し笑って声をかける。
「よし!今日もいくか、相棒」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?