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THAI女性HIV陽性者アンケート

Questionnaire

タイ国北部:
女性HIV陽性者のART治療における
ジェンダーと治療コストに関する調査
Region: Northern THAI
Research on gender and medical treatment cost in ART of Women with HIV/AIDS.
調査中間報告: Interim report.

はじめに…Introduction
History of the medical treatment in THAILAND.
タイ国の治療の移り変わり。
THAILAND Health Care System: Response to the HIV epidemic.( Wipit,p.other.2000’OCT. )が2000年時点で指摘しているARVの世界的治療傾向を工業先進国は、1987~1990年を、Mono Therapy , 1990~1995年をDual Therapy,1996年以降をHAART Therapyと指摘しているのに対して、
タイ国は1991年~1996年を、Mono Therapy , 1996~1999年をDual Therapy,1999年からHAART Therapyと指摘している。
日本国内では多くの日本人HIV関連研究者、医療従事者がHAART治療の転換期はPI(プロテーアーゼ阻害剤)が導入できるようになった1997年と指摘している。1年の誤差は日本厚生省での抗HIV薬、治験期間だったと思われる。
2003年からGlobal Fund AIDS結核マラリア基金の援助により医療開発途上国へ導入された、“ART”と定義された坑HIV薬使用による治療は、新しい解釈と臨床データーが無い未知なる方向性を示唆している。
( * THAI E.F.T 2004’. UN / AIDS.Othar. ,* 3×5 Million 2004’Report.Unicef.Other.,* AMDS 2004’.)
ARTという定義は単なる表現の違いではなく深く解釈すればHAARTとは違う欠点、リスクがあると提供者側が認めた投薬である。HIV国際医療支援組織には医者、社会学者など多方面の専門家が関与している。その専門家たちが利点、欠点、を評価し倫理問題も考慮に入れた結論であろう。

THAILAND and gender.タイ国のジェンダー
世界的情報交換の場で2003年~2004年にかけて女性に焦点をあてた発言、研究が多く報告された。最近の発表で世界HIV新規感染者数の男女比(15
才~24才)女性約730万人:男性約450万人と報告した。タイ国だけの男女比は男性1.33%(高い概算値):女性2.0%と報告されている。(国連Report. 2003’)しかしながら焦点は“感染予防啓発”分野でありHIV陽性者女性支援という視点では研究報告は見当たらない。感染予防啓発での性差の関係を「もしHIVとジェンダーの関係がよりよく理解されなければ、進展は難しいだろう。」
(Ms.M Bongusvej. ,29 June 2004’SEA-AIDS“Monogamous Women the New Victims of AIDS, UN Warns”)
と発言しているがHIV陽性者支援でも同じことが言えるだろう。一方タイ国の風習について「家長制の文化、沈黙の文化、といった文化的タブーを今より系統的に知らしめなければならない。」とジェンダー不均衡を指摘している。
(Ms.L Lazo.,29 June 2004´SEA-AIDS 国連女性基金) 
社会的ジェンダー不均衡を多くの人が指摘する中、女性HIV陽性者は多重の心理的重圧と多重な
性別役割分担をこなさなければならない。
タイ国においてめまぐるしく変貌をとげる
坑HIV薬治療は、HIV陽性者を翻弄させ混乱に陥らせる。リスクを負うのは患者である。特に女性に対する援助はいまだに「母子感染予防」のみ。タイ国内、女性HIV陽性者は200,000人(15~49才)高い概算数370,000人低い概算数110,000人
(概算数:THAI EFT 2004’UNAIDS,Other)
このアンケートではめまぐるしく変わる社会背景の中、医療現場を中心に、
* 女性ライフスタイルへの影響。
** 今後の援助プロトコル決定基準の設定。
*** 過去の援助活動の反省。
を検討するための評価判定を目的とする。
KEY WORD:
Global Fond HIV/AIDS,TB,Malaria & ART.
AIDS & Gender.

方法・The questionnaire method.
アンケートの質問紙は、HAW(HIV AND WOMEN)和名「女性とエイズ」研究・行動グループ(以下HAWと表記)の皆様の全面的なご協力により、そのまま使用させて頂いた。Teddy Bear Projectの関係者が質問紙を製作する選択肢もあったがその要素を経済問題、因子を医療コスト追求に視点を合わせる傾向があり、 
1.客観的な要素を考慮した項目が必要だった。
2.Peer的要素が見出せる多数の人が製作したHAWのアンケートは対象者へのニーズと合致している。
2点の理由によりHAWに依頼した。HIV陽性者支援という関係性、およびHIV陽性者同士の係わり合いもダブルPeer,トリプルPeer,(つまりPeer的要素が2つ以上なければ交流を持たない傾向にある。HIV陽性者+女性+母親。HIV陽性者+男性GAY+同年代。という意味。)要素が重要視される。この点においてもニーズと合致していた。
国籍によるズレが生じる懸念もあるため今回はプリテスト的意味合いが強い。
アンケート回答者は、5施設* のHIV陽性者支援組織とコンタクトを持ち2004年9月10日~12日にチェンマイ市内で行われた勉強会に参加可能者に限定した。
* 5施設
1. NGOタイコンサ-ンファンデーションチェンカム
(THAI Concern Foundation.ChiangKam. Phayao.)
2. NPOニューライフフレンズセンターチェンマイ市内
(NPO New Life Friend Center. ChiangMai,City )
3. NPOサラタイホーム、メーリム郡
( Sala Thai Home.ChiangMai, MeaRim )
4. NPOコミュニティ-ヘルスセンター、メーリム郡
( Community Health Center. MeaRim )
5.サルワン村保健所DCC*
(DCC*:ChiangMai. Saluwang Public Health Center. )
DCC:デイケアセンター*以下DCCと略す。
(注:便宜上、財団申請済み組織:NGO。無い組織:NPOとする。)

またこの勉強会参加条件として女性HIV陽性者とその家族であること。勉強会の中にアンケートを実施すると明記し各施設に配布し了解を得た者のみ実施した。アンケートは無記名自記式としタイ語の読み書きが可能な人を対象とした。プライバシー考慮の為アンケート記載時間中はホテル関係者の退室を促し、事情を知っている関係者だけが会場に残り、またアンケート対象外の人について会場後方の休憩スペースにて休憩を取って頂いた。配布時より茶封筒に入れ配布し回答終了後にはその茶封筒に再び入れてもらい封をして受付の回収箱に自分で入れてもらった。特に注意を払ったのは深く考察されたHAW( HIV AND WOMEN )の日本語アンケート項目をタイ語に翻訳する時に大きなズレが生じないよう細心の注意を払った。通常日本語からタイ語に翻訳する場合 日本語→英語 英語→タイ語と2段階の工程を踏むが、日本語=タイ語へとダイレクトな翻訳を可能にするために以下の手順をとった。
第1言語と第2言語を持つ4名**の関係者にて翻訳した。
** 4名
1.国籍タイ.男性。日本在留期間約5年間。第一言語タイ語 第2言語日本語。日本在留期間農業研修生(愛知県)里親プロジェクトの仕事(長野県)タイ政府観光局の仕事など他多数。
2. 国籍日本.男性。在タイ22年。1.日本語2.タイ語、英語。タイ財団ディレクター。
3. 国籍タイ女性。ニュージーランドに12年間在留、留学と職業経験を持ち製薬会社に勤務経験あり。1.タイ語2.英語。
4. 国籍日本属性は男性トランスセクシャルに近いGAY。 HIVプロジェクトに関わり8年目。HIV陽性者1.日本語2.英語。
翻訳時に用いた資料。
* タイ日・日タイ簡約タイ語辞典:松山納著:大学書林出版。 ** 日タイ・タイ日辞典:冨田竹二郎編:教育文化開発協会。
*** NGO日本シェア発行-日本在住タイ人HIV感染者へ 
「HIV/AIDSを学びましょう。」

この4名において1日かけた翻訳作業を行い、タイ語翻訳終了後、タイ女性保健士とHIV陽性者自助グループ男性、2名にアンケート書類を手渡し意見を聞き修正をおこなった。その後バーンラック財団(タイ国バンコク市)において女性事務員の手によりもう一度修正を重ね製作を終えた。2000年度、日本の女性HIV陽性者対象にアンケート調査を実施したこと。製作著作はHAW( HIV and WOMEN )にあり女性研究者・医者従事者が中心としたグループであること。個人が特定できない形の集計発表をすること。集計後は破棄処分することを明記した。

アンケート項目。
1.基本属性/年令、職業、学歴、経済的ゆとり、結婚歴、子供と要介護者の有無、病院所在地、家族構成
2.健康状態/主観的健康度、CD4細胞数、CD4値検査の頻度、HIV・RNA量検査の有無。
3.HIV/RNA検査経験者地域別/坑HIV薬、社会背景
4.治療/HIV感染症に関する治療の有無。(GHQ精神尺度)
5.地域別データ/保険、生活費の支払い、医療費の支払い。 
6.抗体検査/告知に関する項目:検査実施における同意の有無、その際の説明の有無と内容、告知時の気持ちの準備。告知後の経過年数、陽性判明動機
7.医療従事者からの情報提供/11項目の情報提供の有無。医療従事者からの情報提供の内容についての満足度。
8.通院・入院における障害/14項目の障害を設定する。
9.医療者との関係/診察で症状や身体の変化を医師に受診する経験。
10.コミュニティー参加・自立/HIV陽性者の知人の有無。
11.心理サポート/心理的サポートの有無。GHQ精神尺度からの引用
* 枠内HIV and Women.2000’報告書より引用修正

結果・Result.
配布数は61部回収数は53部、86.8%と多くの協力が得られた。
1.基本属性
アンケート回答者の年齢は20代が8名、30代が38名、40代が6名、無回答1名。30代の占める割合が多く38名(71.6%)。平均年齢は33.84±5.15才。(最低値21~最高値48才)。5施設からの情報発信だけという限定された条件の中で勉強会参加者はチェンマイ市内を核に東西南北広範囲に及んでいる。
DCCサルワン村保健所、NPOコミュニティーヘルスセンター、NPOサラタイホームにおいては近隣住民へのサービスに限定されているが、NPOニューライフフレンズセンターが広範囲な領域のHIV陽性者へサービス提供を行っている事が実証された。パヤオ県チェンカム郡、チェンマイ県チェンマイ市内、メーリム郡、その他(サンカーペン郡、ドイロー郡、サンサーイ郡、メーテン郡、ハンドン郡、サンパトーン郡)、10郡からの回答があった。

Chart1. Attributive 表1.基本属性 n53
Occupation
職業 SelfManagementFamily.自営
Part time. パートタイム
HouseWife. 専業主婦
Inoccupation. 無職
daily employment.日雇い
Other. 他 5Per./9.4%
6名 /11.3%
13 /24.5
14 /26.4
8 /15.0
7 /13.2
Education.
最終学歴 No education. 無
Primary school. 小学校
High school. 中高学校
OT school. 職業訓練校
Other. 他
No answer. 無回答 3 /5.6
31 /58.4
15 /47.1
2 /3.7
1 /1.8
1 /1.8
Economic
経済ゆとり Few rich. ややゆとり
Average. 普通
Few poor. やや苦しい
poorest. とても苦しい
No answer. 無回答 1 /1.8
25 /47.1
21 /39.6
5 /9.4
1 /1.8
職業は無収入層である専業主婦・無職者で27名(50.9%)過半数を占めた。自己が感じる経済的ゆとり5段階回答中「やや苦しい」「とても苦しい」2因子を合計すると26名(49.0%)半数を占める。 
一方経済的ゆとり5段階設定の中央回答項目「普通」と回答した25名(47.1%)と近似値を示した。3数値50%前後。また結婚経験者、既婚者は49名(92.4%)と非常に高い数値。子供が居るとの回答は39名(73.5%)になり婚姻継続者24名を引くと、15名(28.3%)がシングルマザーと考えられ高い数値を示している。子供の養育人数は1名と回答した30名(56.6%)が一番高い数字、12才未満のプライマリースクール卒業前の児童保護者は32名(60.3%)にも上った。
* 本人含む家族構成3名以下17名(32.0%)
* 本人含む家族構成平均数4.04±1.75人(1~10)
* 子供平均年齢11.36±5.44才(1~26)
*1人当子供養育平均人数1.265±0.498人(1~3)

Chart2. Attributive 基本属性・表2 n53
Marriage
結婚 Get Marriage. 結婚してる。
Had got marriage. 離婚
No Marriage. してない。 24P /45.2%
25 /47.1
4 /7.5
Family’s
Care.
介護者 Not have Care 居ない。
Having Care. 居る。
Im Care Worker. 自身世話。 12 /22.6
40 /75.4
32 /80.0
Children.
子供 Don’t have child. いない
Bringing up child. いる 14 /26.4
39 /73.5
家族内に介護者が居ると答えた40名(75.4%)高い数値をあげ、その40名中32名(80.0%・ 60.0%全体比)が自分自身が介護者・ケアテイカーの役割を担っていることを意味する。

2.健康状態
主観的健康度は4段階設定、「とても良い」「どちらかというと良い」2因子合計で45名(84.9%)を占め、「どちらかというと悪い」「とても悪い」と答えた人数は6名(11.3%)に留まった。多数が健康であると主観的認知をしている。平均CD4値は319.23±183.75mm³(最低値21mm³~最高値807mm³) ART治療法において最重要指標とされるCD4値、6ヵ月毎の検査頻度が求められるが平均およそ11ヶ月(10.95)毎という結果になった。CD4値計測経験者39名(73.5%)に留まっている。
HIV/RNA量を計測したと答えたのが8名(15%)その8名中8名が400copies/μℓ以下と回答している。HIV/RNA量を「認知していない。」欄外記入の「1度も量ったことがない」合わせて42名(79.2%)。この環境でART治療服薬者32名(60.3%)。服薬無と回答者14名(26.4%)。
ARTを服薬中42名中の薬の種類はGPO-vir s30 or s40 が23名(71.8%)。また、定期的な検査実施が認められないHIV/RNA検査を実施した8名については別に統計をとった。

3.HIV/RNA量測定経験者
ART服薬状況:8名中8名ともART治療を受けており、内訳は表3Aにまとめる。8名中の社会背景を表3Bにまとめた。
Chart,NO3A:RNA inspection & cost
表3A:RNA検査とコスト n8
ART. / Persons. NNRTI NRTI PI
GPO** /3P NVP d4T,3TC
NNRTI(1+NRTI(2 /1P EFV AZT,3TC
PI(1+NRTI (2 /1P AZT,3TC RTV
NNRTI+NRTI+PI(2 /3P
4Cocktail. NVP AZT RTV
IND
Total. 8Persons. 2 kinds 2 kinds 2kinds
**GPO: GPOO-vir ○RS30.S40.
Chart,NO3B:Background.表3B:社会背景。n8
NO Question.
9 HIV 感染時期
infection. 6.57±4.19 old years.
平均値およそ6.5年前後
20 Age.年令 36.25±4.23 olds.平均36才
21 Area.
地域 City2. Mearim2. Doirow1
ChiangKam1. NoAnswer1.
22 Occupation.
職業 SelfManage自営3.HouseWife主婦4
Other1.他1
23 Living生活
Expenses. MySelf自分3. Husband夫3.
Brother姉妹1. Insurance公費1
24 Medical医療
Expenses. Myself2. Husbands3. Parents.1
ACTproject1. Other1.
25 Economic.経済 Average4. Few poor4.普通4やや4
26 Education.
教育 NoEducation無1.Elementary S小2.
High S中高3. NoAnswer無回答1.
27 Insurance
保険 Govement政府保険2.30B三十B保険2. GN・Private政府自己掛4.
28 Marriage.
結婚経験 GotMarri結婚中3.HadGotMarri離婚3.
NotGotMarri結婚したこない2.
2 CD4(mm³)値 261.5±108 mm³
8名のHIV陽性告知後経過年数、年令、経済ゆとり、においては全体との差は見られなかった。しかしながらCD4値が減少傾向にある。地域毎の回答者割合を考慮するとチェンマイ市内とメーリム郡の割合が高い。HIV/RNA量テストは地方都市チェンマイに近いことで治験投薬・検査の恩恵が受けやすい状況が予測できる。1名の方は海外派遣者で組織される薬剤支援プロジェクトACT Projectに参加していた。生活費・医療費の支払いが50%が夫の収入から、そして保険において決定的に違う差が見られた。政府自己掛け保険(政府申請1ヶ所病院を指定。審査が通れば無料医療サービス受診可能な制度。検査費投薬代は無料でないとの情報。)と政府公務員・企業従事者保険の割合が高い。職業は自営業か主婦か真っ二つに分かれた。2グループの1つは“結婚経験があり現在は独り身で子供を育て仕事もこなすグローバルスタンダード派”。もう1つは“夫に忠誠し男性から保護されている専業主婦”。2つの女性像が浮かぶ。また全体比は90%以上の既婚率だったのに対し「婚姻継続」「過去婚姻歴あり」「婚姻経験なし」3タイプが平等に票を分けている。
坑HIV薬多剤併用療法4カクテル使用者2名(3.7%)プロテアーゼ阻害剤を使用した治療者4名(7.5%)。6名:10%前後のPI群の使用が認められた。

4.治療
治療状態は21項目からなるHIV感染症が原因で出現する症状の有無、他科診療が必要な症状の有無、女性特有の症状の有無、を「症状有り」「症状なし」2件で回答「症状有り」の場合その症状を“医者の診察は受けましたか?”を尋ねた。表4A-E.に症状があると回答した統計数値とその症状を診察しなかった回答をまとめて記載する。
Chart NO4A.Symptoms. 症状出現項目。表4A
Gynecology. 婦人科 n53
項目 人数/%*1 受診しない数/%*2
3 生理以外の出血 2 /3.7% 1名 /50%
3 生理痛がひどい 27 /50.9 21 /77.7
3 性器発疹 22 /41.5 7 /31.8
3 性交時痛み 5 /9.4 3 /60.0
2 おりもの 21 /39.6 10 /47.6
2 生理時出血多量 9 /16.9 6 /66.6
1 排便時痛み 5 /9.4 0
1 排尿時痛み 11 /20.7 3 /27.2
1 性器かゆみ 15 /28.3 8 /53.3
(%*1全体数53人の割合 %*2症状出現数との割合)
3.2.1. 3段階で緊急度/危険度 患者の心理的 
負担を考慮し分類した。
3. 23疾患(日本)28疾患(タイ)に関する症状、 
外見に関する診療必須症状 
2. 平常時痛・他疾患の徴候、QOL低下症状 
1. 一般生活共存可能症状
一人当たりおよそ2個(2.2)の症状を訴えた。症状を自己認識していても50%(中央値)の人が医者の診断を受けていない。生理痛のひどさ、性器に発疹がある、おりもの異常、3項目の症状出現が高いパーセンテージを示した。これらの症状の診察率は47.6%(中央値)婦人科全体で2人に1人または2回中1回は診断を控える傾向が見受けられた。
出現指数0.33±0.27.未診療指数0.46±0.23

Chart NO4B.Symptoms,症状出現項目。表4B.
Psychiatry/Neurology.精神科・神経科 n53
3 不眠 23/43.3 12/52.1
3 躁鬱 30/56.6 13/43.3
一人当たり1個の症状を訴えた。44.7%(中央値)が医師の診察を受けていない。この2項目両方ともに高い症状出現率になっている。
出現指数0.49±0.09.未診療指数0.47±0.06

Chart NO4C.Symptoms,症状出現項目。表4C. 
Dentistry.歯科 n53
3 平常時痛 10/18.8 4/40
症状を自覚してるが40%の人は診察を受けていない。歯科においては継続、持続的な疾患は起こらない。症状出現は低くおよそ20%。しかし治療を控える傾向は他科と同様50%に近い数字となった。

Chart NO4D.Symptoms,症状出現項目。表4D.n53
Dermatology.皮膚科
1 皮膚乾燥かゆみ 32/60.3 13/40.6
10人中6名(60.3%)の人が皮膚の自覚症状を訴えたがおよそ40%の人はそのまま放置している。

Chart NO4E.Symptoms,症状出現項目。表4E.n53
Physici./Infection.内科/感染症科
3 高熱3日以上 10/18.8 0
3 一週間継続する咳 13/24.5 1/7.6
3 水様下痢1週間 4/7.5 1/25
3 毛が抜ける 20/37.7 10/50
3 体形変化 29/54.7 8/27.5
2 倦怠感 23/43.3 12/52.1
1 食欲不振 15/28 6/40
1 味覚変化 11/20.7 6/40
一人当たりおよそ2個(2.35)の症状を訴えた。
症状があっても33.7%(中央値)の人は診察を受けていない。
出現指数0.29±0.15.未診察指数0.30±0.18
全診療科の症状出現値はおよそ6個(6.35)となった。内科に関する症状2個、婦人科2個、精神科1個、皮膚科と歯科で1個という割合。常に1.内科・感染症科/ 2.婦人科/ 3.精神科・神経科3つの科に関わる症状を常に患者は持っていることになる。婦人科と精神科は50%前後のエスケープ傾向(診療を様々な理由から・諦める・拒否する)が視られたが感染症科はおよそ30%と開きがあった。

科 出現指数 未診療指数 
全科平均 0.30±0.17 0.39±0.20 
婦人科 0.33±0.27 0.46±0.23
精神科 0.49±0.09 0.47±0.06
内科/感染症 0.29±0.15 0.30±0.18

出現指数は精神科/神経科が高く感染症科が一番低い意外な結果。未診察指数は婦人科精神科が高い数値を示した。
危険症状3レベルにおいて婦人科の生理痛・精神科の躁鬱、不眠、感染症科の体形変化は症状出現が多いのにも関わらず、放置またはエスケープ傾向があった。リポジストロフィーについてはまとめに記載。GHQにおいては資源不足と知識不足のため統計不可。集計数のみ記載する。(最後に記載)

5.地域別データ
アンケート集計を全体統計と地域毎統計2つとった。2つの統計は地域毎のライフスタイルの違いをはっきりと浮き彫りにした。

Chart NO5A Questionnaire total by Area.
表5A アンケート地区別 
Province ChiangMai Phayao
District 1.City 2.MeaRim 3.Other 4.ChiangKam
(プライバシー保護の為パーセンテージのみ表記)
県Phayao / ChangMaiに別け、ChiangMaiではHIV臨床経験豊富な専門医のいるCITYとMeaRimを2つのカテゴリーに分けた。ChangMai市内 からアクセス(自家用車、定期バスetc)するのに1時間以上かかり治療アクセスが困難と思われた地域、また回答者中少数派をまとめてOTHERとした。OTHER地域は次の通りSan Kamphaeng. Doi Row. San Sai .
Mae Taeng. Hang Dong. San Pa Tong. 6地域をまとめた。(地図2P参照)

Q.Insurance. Chart NO5B 保険 表5B
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
GM*,Company 100% 5.%
30B, schem. 57.1% 50% 50%
GM* Private 42.8% 50% 10%
*GM : Government.
保険。1.)CITYに住居を構えるHIV陽性者は全員が政府公務員保険か企業従業員保険に加入している。全体総計比は13.2%と10人に1人の割合だがCITYは100%。4.)チェンカム地域では公務員及び企業従事者保険は5%、2.)メーリム地区0名 3.)OTHER地区0名。
政府申請自己掛け医療保険は2.)メーリム42.8%、3.)OTHER地区は50%、4.)チェンカム地区は35%。 一番医療公費援助が遅くれると予測される30Bスキーム加入者は2.)メーリム57.1%と一番依存している。3.)OTHER地区は50%4.)チェンカム地区も50%2番目に高い数値。

Q. Occupation Chart NO5C 職業・表5C
1.CIT 2.MeaR 3.OTH 4.Phay
SelfManageBusiness 16.6% 7.1% 5%
PartTime 33.3% 21.4% 20% 5%
HouseWife 16.6% 28.5% 20% 30%
NoWork 7.1% 30% 60%
職業。無職である人は4.)チェンカム地区の60%が一番高く、次いで3.)OTHER地区30%2.)メーリム地区7.1%1.)市内0。
専業主婦と無職である人2つの数値を足すと
1.)16.6% 2.)35.6% 3.)50% 4.)90%
となる。地方都市から遠のく程家計費は他者に依存傾向にある。
Q.Medical Expenses.Chart NO5D医療費支払.表5D
1.CITY 2.Mea 3.OTHER 4.Phayao
MySelf 50% 14.2% 50% 25%
public expenditure 16.6% 64.2% 30% 75%

Q.Living Expenses Chart NO5E生活費支払・表5E
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
MySelf 50% 71.4% 30% 60%
PublicExpe
no editor 16.6% 30%
医療費・生活費。医療費は1.)CITYと2.)OTHER共に50%・半分の人が自己負担。2.)メーリム4.)チェンカム共70%前後の人々が公費負担。
生活費は 1.)CITYと 2.)メーリム 4.)チェンカムが60%以上が自己負担。3.)OTHERが公費負担で高い率を示した。

5-1.性別役割分業
Q.Marriage. Chart NO5F 結婚・表5F
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
Had got Marriage. 66.6% 42.8% 40% 50%
いくつかのHIV陽性者が直面する金銭問題・保障などを比較してきた。次の3つの項目は社会的ジェンダー役割について。1.)CITY地域では金銭・保証では良い生活状況を維持している印象があったが「負」の要素に置いても66.6%と離婚経験者であり独り身で様々な役目をこなす。次いで4.)パヤオ地域が50%。

Q.FamilysCARE. Chart NO5G 家族介護
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.PHAYAO
I have care 66.6% 85.7% 70% 80%
ImCare Worker 75% 66.6% 71.4% 70%
介護者が居て自分自身がケアワーカーだと答えが多かったのも特徴だろう。2.)メーリム地区が介護者がいると回答者が多かった。しかし自分自身がケアワーカーであるという数値では全地区とも70%前後で推移している。
日本での2000年度の調査では変数64と近似値であり比較値は非常に信頼できる数字だが“介護者がいる”と答えたのは3名(4.7%)のみだった。
この数字は社会現象というよりも文化が大きく関わっていると思われる。1999年12月、当プロジェクトが調査目的で訪タイ時、1人の女性同行者は報告書にこう記載している。
「現地の風習として女性が自分の母親を面倒をみるのがあたりまえとされている。」

Q.Child. Chart NO5H 子供の有無 表5H
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
Bringing up Child. 100% 85.7% 70% 65%
この項目でも1.)CITYが100%を上げた。全員が出産経験者。 2.)メーリム地区が次いで85.7%という結果になった。ほとんどの女性が介護者を持ち子供が居る状態で仕事をし生活費を稼ぐと言うことは困難であろうことは間違いない。CITY地区の女性の健闘ぶりが垣間見えた。

5-2.診療
Q.CD4 check. Chart NO5I CD4検査・表5I
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
All ready. 83.3% 64.2% 100% 75%
No Check. 16.6% 35.7% 25%

Q.HIV/RNA check. Chart NO5Jウイルス量検査表5J
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phayao
All ready. 33.3% 28.5% 10% 10%
No Check. 66.6% 71.4% 90% 90%
HIV治療には欠かせない指標CD4値検査とHIV/RNAウイルス量。1.)CITY33.3%2.)メーリムが高い数字を上げている。これは治験による無料検査の可能性が高い。ART(AntiRetroviral Treatment.)治療ではHIV/RNA量の検査は定期的な実施は行わない傾向だが今後1~3年後に起きるであろう問題はこの検査ともう1つ薬剤検査が必要である。これも最後・まとめに記す。

Q.ART. Chart NO5K ART治療 表5K
1.CITY 2.MeaRim 3.OTHER 4.Phaya
GPO-vir○R
33.3% 57.1% 70% 40%
Other 3or4Cocktail 50% 14.2% 5%
No Recipe 16.6% 28.5% 30% 55.5%
最後に薬の種類ですが、単剤を使った第2ラインの薬を服用しているのは1.)CITYが圧倒的に多く次いで2.)メーリムです。この項目でも中コストの第2ラインの服薬者が多い。市内とメーリムは治験投与の可能性がある。GPO-virはコストを下げた一番初めのジェネリック薬ですが大きな問題がある。これも最後・まとめに記す。

このカテゴリーの最後に少し古い情報だが2000年前後のタイ国の研究の1章を記載する。
「3つの公共病院で369名のAIDS患者への研究では、日和見感染症などの治療を平均5.7回求め、1回当たりのコストは平均24$(1027B)と報告されている。44.6%の患者が自己家計を貧困層と自認し家計の23.8%を医療費にあてた。HIV/AIDSの患者及び家族が重い金銭負担を強いられている。この研究とは別に、AIDS患者の平均所得は1月当たり8,435B(204$)貧困層は878B(21$)だったとの調査結果もある。1$=42.866B.2003年4月現在」

今現在2004年、2003年に始まったART治療は低コストになったがGPO-vir ○R薬価代金1200B/毎月 支払わなくてはならない。地方都市から遠く離れた過疎地では物価も安く給与も月3000B前後だろう。今後予想される検査費用は避けて通れない。また薬剤を変更することは中コストの単剤カクテルとなり、より経済的に圧迫していく。今から見据えて生活設計を立てなければ大きな問題が生じる事は確実である。

6.抗体検査
感染告知を受けてからの経過年数は平均値5.34±3.96年。驚かされることは告知後10年以上経過した回答者が13名(24.5%)もいることであろう。 
感染判明の主なきっかけは他者が起因となっている。「3、夫、パートナーが感染しており抗体検査」30名(56.6%)「4、妊婦検査時の抗体検査」10名(18.8%)。婚姻関係からおこる2つを合わせ86%。“自覚症状は無いが自らすすんで検査受診”16名(30.1%)も高い数字を上げた。(複数回答)
抗体検査前の十分な説明に対して2件の質問設定で「説明があった」40名(75.4%)「説明が無かった」13名(24.5%)となった。一方、感染告知時の気持ちの準備は4段階選択だが「(大体)(とても)準備できていなかった」2因子合わせ20名(37.7%)「(大体)(とても)準備できていた」2因子合わせ33名(62.2%)。この数字62.2%はパートナーが先に感染、症状出現による「覚悟上での検査」との関連性と言えるが、十分な抗体検査前の説明有りのパーセンテージと近似値になっておりどちらの要因が濃厚であるか判断できかねる。

7.医療従事者からの情報提供
情報提供11項目においては「説明がなかった」数字に焦点をあて表6にまとめる。
Chart.NO6:Information offer from a medical staff. 表6:医療従事者からの情報提供。
情報内容 説明無。
1.婦人科検診の必要性。 11名20.7%
2.生理量・生理痛の変化の可能性。 27 (50.9)
3.坑HIV薬による体形の変化。 6 (11.3)
4.日和見感染症予防。(眼検含) 10 (18.8)
5.セイファーセックス。 3 (5.6)
6.自己の血液処理。 7 (13.2)
7.HIV陽性者の福祉制度。 9 (16.9)
8.パンフレットなどの情報入手方法。 9 (16.9)
9.患者会・ボランティア団体。 5 (9.4)
10.適切な治療による出産。 6 (11.3)
11.妊娠期の坑HIV薬。 17 (32.0)
11項目中一人当たりおよそ9項目(8.8)の情報提供を受けた。その中で婦人科関連の情報提供の無さが一目瞭然である。生理痛などの生死に関わらない症状は置き去り(2の次)にされる傾向はどこの国でも変わらない。それらの重要な徴候は患者を長期間悩ませる。特に婦人科検診は癌や筋腫といった重度な合併症の危険性をはらんでおり医師が再確認してアドヒアランスを促す必要があるだろう。
また、女性HIV陽性者の妊娠には社会的スティグマや倫理観と戦わなければならない。医療従事者の好意的かつ積極的な治療に対する態度は、戦士となった女性をどれだけ癒すことだろう。
医療従事者からの情報提供に関する満足度は4段階設定されている。「大体満足している」21名(39.6%)「とても満足している」27名(50.9%)2つを合わせ90%超える肯定的な結果となった。

8.通院や入院にあたっての障害
通院頻度を1.定期的2.定期的ではない。3.通っていない。3件で尋ねている。1.定期的に通院42名(79.2%)と8割を占める定期通院が認められた。不定期だが通っている2.を足すと51名(96%)となった。通院障害14項目は障害になっている数値を表7にまとめる。
Chart.NO7:The HURDLE which can NOT going to Hospital regularly. 表7 通院障害 n53.
毎月の医療費。 10p /18.8%
通院時の交通費。 16名 /30.1%
通院距離・時間。 15 /28.3
待ち時間の長さ。 22 /41.5
複数の病院受診。 8 /15.0
通院交通手段。 15 /28.3
仕事学業遅れ。 22 /41.5
家事。 15 /28.3
子供の世話。 19 /35.8
介護。 18 /33.9
職場学校への言い訳。 10 /18.8
家族へ言い訳。 3 /5.6
プライバシー漏洩。 13 /24.5
特定の医療者との関係。 4 /7.5
待ち時間の長さ、仕事学業の遅れが共に22名(41.5%)と一番高い数値になった。
2000年度HAWが日本にて実施した統計では、プライバシー漏洩54.7%、職場学校言い訳48.4%、通院距離・時間43.8%。40%を超える3項目中2項目は、自己のHIVポジティブという事実を他者に知らせていないことから生じる患者自身が感じる強迫概念であろう。また、日本におけるHIV拠点病院制度は関東圏の5~10施設・総合病院に患者が集中しており通院距離と時間を使っても多くの人々が通っている。この3点は今の日本を象徴しているのかもしれない。身内にも、コミュニティーの信頼者にも“言い出せない”社会背景があり、臨床経験の多い信頼出来る医者がいる病院に患者が集中してしまう。
一方タイ国では待ち時間と仕事だ。これは相関関係にあり、もし治療を選ぶのならば仕事時間は短くなり、もし仕事を選んだら治療は受けられないだろう。待ち時間においては日本も同様、日常的な話題となっている。しかしながらこの待ち時間の簡略化が進まなければ仕事をしなければならない(収入を生み出さなければ)人々にとってより通院困難、他科へのエスケープは促進されていくだろう。

9.医療者との関係
10項目に及ぶ質問は4段階選択になっている。“まったくそう思わない。”“あまりそう思わない。”2段階を思わない1つにまとめ、そう思うも2段階だが1つにまとめ表8にする。
Chert.8 Mental/ 表8 心理状態 (欠損あり) 
項目 思わない 思う
症状は放っておいても良くなる。 44(82.9) 9(16.9)
症状は自分で改善できる。 37(69.8) 11(20.7)
症状は気持ちの持ちよう。 15(28.3) 38(71.6)
体の変化の対処法を聞いた。 4(7.5) 49(92.4)
医師に専門外のことは聞かない。 29(54.7) 24(45.2)
症状を伝えるのは恥ずかしい。 47(88.6) 6(11.3)
対処法はない。 31(58.4) 22(41.5)
医療者は理解しない。 40(75.4) 12(22.6)
医師多忙遠慮を感じる。 47(88.6) 6(11.3)
病状を伝えて良かった。 3(5.6) 50(94.3)
“病状は気持ちの持ちようで改善できる。”思う38名(71.6%)“医師に専門外のことは聞かない方がいい”思う24(45.%)“対処法は無い”思う22(41.5%)高い数値3つの項目中、医者の存在意義を否定する回答2項目。自己解決型の気持ち次第が1項目。他7項目は医師に対し好意的かつ信頼をよせている。

10.コミュニティー参加・自立
アンケートからは同じ女性感染者の知人がいると回答した数、51名(96.2%)と高い数値だった。同じ設定で男性の知り合いはいるか?の質問は24.5%にも及ぶ故意な無回答になっており掲載は控える。この理由は様々に考慮されるが否定的な理由であろうと思われる。自助グループの数は北タイのみで200~300あると指摘がある。経済的自立のみ焦点をあてた場合、タイ国女性労働力率は1990年76.3%から2000年64.2%に低下。(ILO.2003’調べ)現在も同じ推移で解消されていない。理由は進学率上昇、経済危機。タイ女性に非常に多い内職業は低賃金・不規則労働が問題として上げられ社会保障の対象外になっている。

女性労働力率の変化
国 1990年 2000年 変化率 男女間格差
1990年 2000年
香港 46.6 48.5 1.9 -32.3 -27.0
韓国 47.0 47.4 0.4 -27.0 -27.0
バングラデシュ 65.4 55.9 -9.5 -22.6 -32.9
パキスタン 11.3 15.2 3.9 -73.6 -67.2
インドネシア 44.6 51.5 6.9 -38.1 -33.1
マレーシア 45.2 44.7 -0.5 -36.7 -38.1
フィリピン 47.5 50.0 2.5 -34.3 -31.8
シンガポール 50.3 51.3 1.0 -28.9 -26.2
タイ 76.3 64.2 -12.1 -11.4 -16.1
Sause.ILO 、Key Indicator of Labour Market 2001-2002

先のカテゴリー「医療コスト」で、4地域に分け医療コストと治療QOLを関連付け統計をとったが地域毎の特徴が表れた。
当初、田舎に行けば行くほど既婚率が上がり、その中に死別や浮気などで独り身になった母親が増加傾向と予想していたが、地方都市中心に住む女性達の数字値と文字メッセージからは「そんなに甘いもんじゃないわよ」と苦笑されているようだった。 
アンケート回答ではチェンマイ市内女性、仕事は無職者が「0」で何らかの職業に従事していた。保険は全員が国家公務員保険か企業従事者保険に加入。2002年タイ政府社会経済省はこの2保険から医療費控除を進めていく計画がある。市内女性達は50%の人が生活費を自己負担しその他は夫、兄弟などに分かれた。16.6%が公費負担だった。この数値は医療費でも同じくほかの地域とは一線を置いた社会参画だった。それらと治療を考えた時“阻害要因”となるケアジェンダーの束縛は、離婚して現在独りが66.6%となった。他グループより一番高い数値を示す。介護者は66.6%がいると答え、自分自身がケアテイカーとの回答75.0%。最後子供は100%が育てていた。他グループとは20~50%は上回る高い数値を示した。
最後に結果である治療。CD4値テストは83.3%測定済み、HIV/RNA量は33.3%が測定済み、ART服薬率は83.3%。総てが他グループを大きく上回りトップだった。ジェンダーフリーだ。すごい、と意気揚々する前に一枚の紙があった。それは自由記載から気になるキーワードを振り分け数値化したものだった。
“Community・・・コミュニティー 
can not participate.“参加することが出来ない。

KeyWord.Chart NO5L キーワード 表5L.
Key Word./Region. 1.CITY 2.Mea 3.OTHE 4.PHAY
Husband DIES by AIDS 16.6% 7% 20% 20%
Community.
cannot participate 50% 21.4% 10%
Stigma. 16.6% 21.4% 20% 25%
Child. 35%
AIDS Education to Society(Community) 14.2% 15%
5割にもおよぶ地域との関わりが持てないというオーラルヒストリー(沈黙の声)。仕事で恵まれても、愛する子供がいても、そうだからこそなおさらAIDSという特殊な秘め事はスティグマから開放されはしない。
“Stigma”: 直訳すれば侮辱・汚名 だが、この一言に汚名をかけた加害者の行動・思想。被害者心理の抑圧、強迫観念。大衆の反応や政治的動向、社会的制度にまで“スティグマ”で片付けられる威力を持っているように思える。この“スティグマ論”を解明し認知されて対処法までルーティン化した教育が行わなければ解決できる問題ではないだろう。
日本において、国立国際医療センターHIV診療科コーディネーターナースによるTVでカミングアウトする陽性者に対して“自分の性病をぺらぺら社会に公言する人”(なんか)には協力できないと取材協力を断られた事例。(性感染症に対する個人思想からのスティグマ。) 障害者訓練センターで研修を終え就職斡旋になると「後はご自分で…」という態度(免疫機能障害と他障害者対応での差別)は変わらない事例。何名もの証言がある。5体満足に見えるからなのだろうか?この方々は看護論・患者の肉体的対処方法・精神的な対処方法・専門分野別のルーティン化した教育は受けてきているはずである。患者負担の疑似体験も肉体的・精神的に体験してきているのに、この対応だ。
患者支援に関わる、医療関係者や社会福祉士など他専門職と言われる訓練機関(大学・専門学校)でStigma論の10時間程度のカリキュラム導入は容易でないだろうか。この教育をしなければ理解出来ようがない。日本社会が体験した事が無い(前例が無い)事柄が今一番世界の話題だ。日本では過去感染症と言われた病気に対し隔離政策を引いた。これも全く参考にはならない。
タイ国では公務員・企業従業員採用時に任意の抗体血液検査が実施されている。また多くの女性達が従事する“内職業(Home – based Workers)”は労働保護法・社会保障法の規定外。経営者=従業員・関係が認識されていても制度が認めていない。民法の「財を生産する契約」のみが頼り。
北タイ部の女性達は男女平等を求めて社会変革を求める“戦略的ジェンダーニーズ”(モーザ1999’66貢)では無くささやかな保健衛生と雇用の確保、実質的に受け入れられている性役割を通じて気付く“実際的ジェンダーニーズ”(モーザ1999’67貢)を寺院や集会場で輪を作りクロスステッチをしながら願っている。こつこつ日銭を稼ぎながら。
ジェンダーとAIDS、生活自立(経済的問題)と心理的自立(本人が幸福と自認。HIV陽性を受認)を得るためには並大抵の努力では出来ないだろう。

11.心理サポート
4項目の質問設定を表にまとめる。 n53
項目 いる いない
1.病気も総て話せる人がいる。 39(73.5%) 14
2.身の回りの援助。調理、送迎。36(67.9%) 17
3.病気の情報をくれる。 46(86.7%) 7
4.周囲の精神的なささえ自己認識44(83%) 8(欠1)
4項目とも高い数値を上げたが、10名中2名は3項目とも援助がない孤立状態。 1.心理的援助(カウンセリング、または告白による精神安定。) 2.物理的援助 3.情報提供 4.コミュニティー環境の自己認知。4.患者本人の周囲との関係において“ささえられている”と患者自身が認知:1番高く83%となった。本人が孤立感を感じていない結果になった。他3項目で物理的援助が低い傾向。3.情報提供と1.カウンセリングは病院やNPO団体からの援助が予想されるが 1.が若干低く病院でのカウンセリング提供、NPOのカウンセリング技法の習得が求められている。ここにGHQ精神尺度項目から数値の高かった項目を記載する。
* 心配事あり眠れない。
あった29名+たびたびあった2名。(58.4%)
* いつもよりストレス感じた。
あった31名+度々あった7名。(71.6%)
* 問題解決出来なく困った。
あった32名+度々あった5名。(69.7%)
* いつもより気が重い、憂鬱。
あった20名+度々あった4名。(50.8%)
カウンセリングにより対処できる項目が多い。ひどい場合は精神科医師による薬剤治療を選択するべきだが未診察数値は一番高かった。

自由記述
自由記述欄に記載があり承認をもらえた回答は全て記載する。女性を主婦、母親と位置づける社会規範とそれを前提とする社会構造はカミングアウトは難しい。一人一人が特殊な体験をしてきた経験を一般の人々に伝えるのは重要と思われる。このような機会に積極的な発言と引用許可を願う。

症状を医療従事者に伝えて良かった事、悪かった事。42名の回答が寄せられた。
*優しい医者がカウンセリングしてくれ、援助してくれている。精神的にすごく助かっている。
*医師が診察するときに、細かく診てもらえない。すぐ診察が終わってしまう。もらう薬も違う薬だったり数を数えると日数分出ていない時もある。長く診察したがらない。とても嫌な思いをしている。
*医者の中にはAIDSのことを説明できない人が 
いる。
*医師の診察はカウンセリングをよくしてくれて、とても優しい。薬もよい薬だし私の医者はとても優しい。
*自分の病気の症状をいちいちいろんな人に説明しなければならないので億劫になる。「今健康ですか?」とよく聞かれ煩わしい。
*医師が適度な運動、栄養のある食事を取るようアドバイスをくれ、何も心配しなくてもいいと言ってくれた。
*体の具合が悪い時医者に行くが医者は病気に詳しいので満足しています。しかし社会が受け入れてくれるかどうかいつも心配しています。
*病状を正確に伝え、はずかしがらずに勇気を出して聞くこと、伝えること。
*薬の副作用がでて血管が浮き出てきた。リポジストロフィー(体脂肪分布異常・高脂血症)になり、HIVの陽性者と医者に聞いてみたら副作用だと説明された。医者は薬を変えるため薬代5.000B/月あるかとたずねてきた。
*医者があまり詳しい説明をしてはくれない。薬や身体の症状についてなど問診も短く医者が聞くのは「元気ですか?」だけ。簡単な薬を処方されていつも終わってしまう。
*医者が何故熱があるのか?たずねてきた。薬を飲んでも効かなかった。
引用不可だったものにも医師への信頼感や情報提供の良さを書いたものが多かった。しかし診察時間短さ、病院システムの不備、を指摘する意見もあった。医師に関する事が多い反面、他医療従事者の記載はなかった。

抗体検査 感染告知の「気持ちの準備」。
38名の方の記載があった。
*夫がHIVに感染したのを知っていたので、自分
も覚悟していた。
*心をリラックスさせ、何も考えず何とかなると
考える。
*感染を知って、しょうがないことだと受け入れ
ること。
*自分の健康を維持するための治療の説明がもっとあればよいと思った。また近所の人々にHIV陽性者の偏見をなくす啓発活動があったら楽になれると思う。
*家族が病気のことを理解してくれている。AIDSは夫から感染した。告知直後はショックでした。長い時間いろいろ悩み今はくよくよしてもしょうがないからと考えられるようになりました。一番うれしいのは家族の理解です。
*感染告知を容認することは出来た。でも今後生活費や健康を維持するための治療費について悩まなければならなくなった。そのような助け(援助)の情報があればよいのに・・
*症状が先にでた。血液検査の後、看護婦が親切に病気について教えてくれた。普通の生活が送れることなど
引用不可の中には家族友人の励ましや自己の心理状態を良好に保つようにする、との自己完結型の回答が多かった。少数ではあるがHIV陽性者への社会的差別への改善を求めるものもあった。

医療従事者からの情報提供。
9名の方からの記載があった。
*村の前の友人はHIVに感染したことを知ると遠ざかっていった。友人が減った。村の保健所の方がカウンセリングに来てくれている。

医療アクセスの障害。
7名の方の記載があった。
*吹き出物が顔に出来るのでエステに通わなくてはならない。
引用不可の回答には友人との障害、交通手段、仕事の遅れなどがあった。中には深刻な国籍問題もあった。

女性で良かったこと。悪かったこと。
37名の方の記載があった。 *知り合いが私が感染していることを知ると男遊びをすごくしている、売春をしている、と勘違いされる。でもいいことは、HIV陽性者の友人が増えたこと。
*病気を持ちながら仕事に行かなければならなくて、とても大変。
*近所にHIVに感染してることを言いたくはない。もし知られれば付き合ってもらえないと思うから。
*いいことなんて何もない。家族の重荷になっていると思う。
*良いことは体と心を合わせて治療してもらえること。この病気になったことで死を冷静に認められるようになった。悪いことは、もし自分が死んだら年老いた両親と幼い子供を誰が面倒をみるのか?と・・とても不安になる。
*夫から感染したこと。
*人々の噂話になるのが、とても怖い。
*自助グループが形成されお互いの経験交流ができたこと。
*感染していない人と共にうまく生活できないでいる。感染を知ってから新しい生き方を見つけられないままいる。前と比べると家族が冷たい。昔が嘘のよう。死ぬまで薬を飲まなければならないと思うと辛くなる。よく考えすぎてしまい、子供と両親についてそして将来に不安があります。
*HIVに感染しAIDSを受け入れられるようになり自分が感染者であることをOPENに出来るようになったが村の人々が感染者のことを認めてくれない。
引用不可の回答にはHIV陽性者への差別が圧倒的に多かった。そこにジェンダーによる差別が加わるような意見も見られた。
その他プライバシーの漏洩不安、治療費の援助の要求そして夫からの感染、夫の看病など性役割についての記載も多かった。

自由な記載。15名の方からの回答があった。
*可能な限りAIDSのセミナーには参加していきたい。非陽性者は陽性者のことを理解してほしい。AIDSは簡単にはうつらない事を、わかっている人はまだまだ少ない。
*HIVに感染したことは将来の見通しがたてられないし、はずかしいと思ってしまう。
*村の保健婦がカウンセリングのために訪問にきてくれるのでとても助かっています。
*子供の奨学金と生活していくため、職業自立のため、援助してほしい。
*薬や生活費、治療費またカウンセリングなどの援助を政府やNGOにお願いしたい。
引用不可のものには非陽性者への社会啓発の願い。自分の死を予期した、そこからくる子供介護者への心配が多かった。全体的に見て援助が欲しいとの回答が多かった。

まとめにかえて… Conclusion and more.
AIDS & Gender.
保険の種類と家計収入による治療の質の不平等と、性別役割分担における「負」の要素が著しく現れたアンケート結果だった。49名92.4%が既婚歴あり25名(47.1%)が離婚し現在独り。子供が居る人は39名73.5%。シングルマザーと考えられるのは少なくとも15名28.3%以上…。2000年度首都圏3病院での369名のAIDS患者の研究では44.6%の患者が自己家計を貧困層と認めている。アンケートにおいて経済的ゆとり「やや苦しい」「とても苦しい」の合計値26名49%離婚者47.1%と近似値になっている。
プライマリースクール卒業前(12才以下)の児童保護者が32名60.3%。12才以下の児童は乳児期、幼児期、一次性徴期を通して“母親”を頼り自我を発達させていく。「3歳児神話」“3歳までは母親が育てた方が良い”という育児規範の中でもし夫がいなければ働きつつ育児をこなしたであろう。
プライマリースクール入学前の幼児期には、近所の子供や育児施設で子供同士の友達関係における強制的な母親同士のコミュニティー参加が要求される。「○○ちゃんのママ」と本人の名前が使用されない付き合い。本来であれば母親・親同年代・子供同年代・3Peer関係が成立し貴重な情報交換と育児労働の愚痴をピアカウンセリング出来る歓迎される関係であるが、「AIDS」があるばかりに本当の事が言えない罪悪感と孤立感・家庭訪問も含む近距離での付き合いは服薬行動、通院行動が出来ない、または言い訳が必要になり関係性の距離を遠ざける。子供のために差し障りの無い付き合いを強いられる。HIV陽性者だということは母親コミュニティーには消して言えはしない。それは子供のイジメに発展していくのは容易に予想できる。残された“小さなカミングアウト”の可能性は相当親密な1名か2名の友人に対する告白だろう。決して失敗は許されない賭けなのだ。
プライマリースクール在学中には組織的なPTA、学校行事の参加。仕事を持ち・病気を抱え・強制的な「○○ちゃんのお母さん」としての“公務”は本当の事(HIV陽性者)を決して言うことが許されない孤独で重い任務に違いない。特に3割以上いると思われるシングルマザーにおいて、タイ国では母子家庭への保障もなく主婦の性別分担役割と父親の稼ぎ手としての2重役割が求められ“生活費・養育費”を稼がなければならい。そこに「HIV/AIDS」“治療費”が必要となり、自分の体の事など考える時間など無いのではないだろうか。
ジェンダー論で必ず出てくる日本の「家(イエ)意識」- 明治時代に民法、学校教育で具体化され敗戦まで継続した。“1.血統集団である。2.家長(父親)が支配し家族員がそれに服従する”掟があった。日本の夫婦関係は一夫一妻制の生涯継続型が多数を占める婚姻関係制度重視だが、タイ国においては一夫一妻制の短長期変換型が多数を占め本人告知重視である。(今回調査:婚姻継続者24名45.2%、1名自己申告と記載。因子別にした場合数値が上がることが予想される。)また一夫一妻制において男性の売買春の社会的容認度、妾を持つ事を男の甲斐性と自慢する男性社会の傾向は「男性の性行動の容認範囲」がとても広いことが特徴である。短長期変換型婚姻スタイルは結果として子供は母親が継続して面倒を見る事を要求される。(今回調査:以前婚姻現在独り25名47.1%子供所持数39名73.5%)これは社会的規範と母性本能が関わっていると思われる。この社会常識の中で血統は必然的に「“母系”家意識」となる。要(かなめ)は「メー」タイ語で“お母さん”である。北タイ部からまたは山岳民族・過疎地域から都会へ出稼ぎに出ている子供達は「メー」のために働き田舎に仕送りし、テレビや冷蔵庫といった過疎地域では贅沢品とされるお土産を抱えて里帰りする。「ポー」(お父さん)はいる人もいれば離婚・死別などでいない場合も見受けられる。父母揃っている場合は「メー」が財布の紐を握り「ポー」のことを立てながら暮らしている。日本のような風俗にたまに行く、つまみ食い程度の“遊び”であれば母親は舌打ちしながらも許せる度量を持っている。中にはAIDSに感染しないようコンドームセットを持たせて遊びに行かせる夫婦関係も見受けられた。この環境で母親は内職業をしながら小銭をこつこつ貯めて生活している。しかし父親が収入を家庭に入れない、新しい恋人、2号3号と呼ばれる愛人を作りはじめたら母親は別れを決意するだろう。その時は子供はほとんどのケース、母親と新しい生活を始める。離婚し、また再婚すケースも非常に多い。この離婚再婚は男女認められ、ジェンダーバイアスは見られない。このケースのデータは見つけることが不可能だ。戸籍上の制度化された婚姻を選ぶ人もいるが自己申告で事実状の結婚生活を送る夫婦もタイ国では一般的に認められるスタイルのため。母親に育てられる子供達はやがて成長し娘は母親の面倒を見ることを伝統規範として受け入れ、男児は社会規範と自発的敬愛から仕送りを続ける。女から女へタイ国の「家(イエ)意識」1.母血統集団である。(子供の父親が違うケースが多々見られる)2.家長は“メー”であり支配関係は無い。(父がいる場合母は男を立てる。しかし実権は母にある。)3.伝統文化は女から女へ続いていく。この社会形態が母親との同居を当たり前にし子供が「祖母の育児」によって育てられていく傾向を見せる。これは育児を1人で背負い込まない・育児という緊急課題が、家意識のしこりを超えて世代間の協力を促し“共同の仕事”に取り組ませる。「今回調査:家族内に介護者が居ると答えた40名(75.4%)自分がケアテイカーと回答32名(60.0%全体比)60%という高い数字は風習・文化という側面と子育て意義における共存関係を維持させているとも言える。平均年齢33才、祖母が25才で出産していたと仮定すれば51才。タイ国の平均寿命は女70.1才(タイ経済企画庁調べ2000’)母系2人の子育ては10~20年は続くだろう。
女性性産業従事者の戦略的ジェンダーニーズによる政府に向けた保険制度の認可要求や、女性企業従事者の戦略的ジェンダーニーズによる政府に向けた経済危機時女性解雇の責任要求など女性の権利獲得を目指す動向が見られる。しかし北タイ部女性HIV陽性者は「母系・家意識」を守るためささやかな子供の養育費、3食たべて屋根のある暮らし、実際的ジェンダーニーズしか求めていない。そして母性は命を亡くしても子供を守る心積もりだ。ニーズには“治療”は入っていない。美化では済まされない自己犠牲をどこまですれば良いのだろうか。自由記述から読み取って頂きたい。

タイ国では初のAIDS患者は1984年に報告され長い期間“Thai-to-Thai Transmission is not in evidence.”タイからタイの送信は証拠が無い。の責任逃避解釈のもと政策的に何の対処もとらなかった。1989年~1990年期間この地北部チェンマイ地域で性産業従事者間で感染爆発がおこり、全国では注射による麻薬使用者グループで広まった歴史がある。1991年Mr.Anand Panyarachun.首相から緊急問題として扱われた。感染告知から10年以上経過した参加者は13名(24.5%)5年以上をまとめると25名(47.1%)潜伏期間を考慮すると“タイからタイの送信は証拠が無い。”と対策を拒否した1990年初期時代に感染した人々がほとんどであると予測できる。ロングトリートメントタイプの女性が多い中でAIDSに対する社会インフラが出来ていなかった時代を多くの人が歩んで来た。差別や偏見は凄まじいものがあったと思われる。AIDSで夫を亡くしたと記載した人は18.3%(中央値)、25名(47.1%)は離婚している。子供は授かった。
しかし、男はトンでもない落し物をしていった。
北タイ部は特殊な地域だ。2004’UNAIDS THAIが発行した最新の統計ではパヤオ県チェンマイ県とも性産業従事者のHIV感染率は40%以上地域に指定されている。カンボジアにはこのレベルに達している地域はみられるがタイ国では特別だ。これは何を意味するかというと大衆から語られる揶揄は、HIV感染者=性従事者と同じ行動をした。または性従事者だったと関連付ける。“売春パラダイム”(本人の自主的な選択で「醜業」に転落した。)というスティグマを浴びせられる。
セクシャリティー=性と、性産業に寛容な国であることは性の自己申告制を社会が認知(男女共トランスジェンダーの多さ、トランスジェンダーの公務員採用)セクシャルマイノリティーの多様性
(“Gay男性におけるトランスジェンダー区分。”
4.睾丸摂取他すべて・全構造女性化 
3.睾丸保存シリコン注入・半構造女性化 
2.ピル(女性ホルモン)投与のみ・微構造女性化 
1.化粧、服装のみの女性化。
その他一般的に語られている呼称として、ゲイカトゥ-イ“女性役Bottom”。モンカトゥ-イ“僧侶出家中MSM行為をする男性。”などがある。)
性産業店の絶対数の多さ、その他2次性産業の多様性(マッサージなどでチップをもらうため性関係を提供)、などから明らかだが、HIV/AIDSが関連すると揶揄からスティグマまで発展する。同性間においてはスティグマまで心理的発展する傾向が見られる。女性同士、男性同士(男性GAYがMSMに対し)において痛烈な批判対象とされる。過疎地域では「何軒先の何々さんの家」の詳しい事情まで伝わってしまう。一度侮辱を受けたなら“AIDSの家”“AIDSの子”と祖母もスティグマを受け、秩序の分別がつかない子供においては格好の遊び材料として“いじめ”を受けるだろう。
婚姻継続者において、母親は“家長制”のなごりを利用し実際的ジェンダーニーズの役目を演じる。しかし実権は母親であり「男を、手のひらで転がしている」。しかし性生活だけ焦点を当てると、とたんに父親家長制・沈黙の文化といった女性の性規範を求められる。短長期変換型結婚スタイルは夫婦間でのコンドームを使用した避妊否定を男性が望み家族計画は成功していない。結果として10才以上離れたきょうだいが同居し母親との血縁関係で結びついている。
既婚・離婚・未婚3タイプ女性共、母親・主婦・女・としての自己3欲求・他者3責任をAIDSがあるばかりにポジティブシンキングには向かず肩の荷を重くする。
夫がいない離婚女性と未婚者にとって一般的な社会スタイルのように数回再婚を繰り返すことも困難が付きまとう。まずは感染告知をしなければならない。女性としてのアイデンティティー、HIV陽性者としての人生設計をめぐって志向の分岐、多元化、ジレンマは異性との関係を望みながらも自己逃避しがちになる。子供が居る離婚者は特に女児が、母親と位置づける社会規範とそれを前提とする心理状態が、母親女児共に新たな父親との距離を遠ざける状況が起こりえる。女性HIV陽性者が一番恐れる事は、主婦(村・同僚)コミュニティーの井戸端会議の話題にされること、娘の親子間の感情規範、そして仏教の教えから“カルマ(業)を積んだ”(HIVに感染に対して)という母親、同性から向けられるジェンダーバイアスかもしれない。
1.家族基盤が女性3世代による維持傾向が見られる社会背景において母親の喪失は子供、祖母への直接的負担が増大する。
2.女性HIV陽性者が結婚または再婚を躊躇し婚姻率の低下が具現化された場合、家庭文化の崩壊に結びつく。
3.性行動における男性(支配者)→女性(服従者)という図式は家族計画の阻害因子となりその結果である不均等な子育ての責任はすべて女性が追うことになる。
4.母子家庭の不備は母親の役割負担を多重化し自己の治療を二の次にせざるを得ない状況になる。

Global Fond HIV/AIDS,TB,Malaria & ART.
タイ国坑HIV薬服薬者の今の話題のトレンドはリポジストロフィー。日本においてリポジストフィーが話題になったのは2001年~2002年だ。1997年PI(プロテアーゼ阻害剤)が登場しそれから4~5年は過ぎた頃だった。タイ国はHAART治験導入があった2000年に3,000名のみ坑HIV薬を服薬経験してる。しかし一般に出回ったのは2003年のGlobal,AIDS結核マラリマ基金が導入されGPO-virが発売されてから。まだ1年未満の服薬期間経過で過剰なまでの反応は異常事態と思われる。またタイ国メディアはリポジストロフィーについて大衆に向け報道したため、一般生活者にも知られており“痩せる手足、削げ落ちる頬”と表現し、「リポジストフィー」と臨床名までは熟知していないが、体形変化の詳細を知っている。これは外見変化=AIDS大衆への無言のカミングアウトになりHIV陽性者にとってリポジストロフィーの症状出現は美とカムアウト、2つのリスクを負うことを意味する。
特許権の関係とコスト削減のため3剤を1カプセルに詰めてしまったのが“逆効果”になった。大きな問題は3TC+d4Tにある。工業先進国では代替治療とはっきり区分され他コンビネーションとの比較も出ている。“リポジストロフィーと脂肪異常”が高頻度に見られる。と明記されている。タイ政府薬科局はもう1種類の“定式”と訳される同じ3イン1の薬を製造中との情報がある。しかしコンビネーションに出来ないことはまた選択肢を狭める可能性がある。
保険導入も数年は望めず保健インフラ未整備なまま。検査・薬価代金の全額負担・診療の簡略化・他科への診療エスケープは増進されるだろう。タイ政府は坑HIV薬需要者数に追いつくように薬剤供給投資に重点をおいた予算計画を立てている。平等な薬剤分配を選択するか/公平な治療の質を提供するべきか、とても難しい問題であるが投与した患者はもう止めることは出来ない。女性(トランスジェンダー含)にとって3TC+d4Tが嫌なら毎月5,000バーツ払えと言われることは“強迫”である。高く見積もり全国収入平均の8,000バーツ所持していても家計の62.5%を占めコスト・ポテンシャルは望めない。美を取るか/死を選ぶか=社会的死を取るか/存在を抹殺することを選ぶか、迷わせる。この迷いは患者自身の強迫観念に変わり人命第一という当たり前の定義さえ定義では無くなる。
30%前後のドロップアウト率。30%前後に診られる脂質異常。この“30%”がキーポイントらしい。平均およそ11ヶ月毎のCD4値検査、73.5%に留まる測定者。HIV/RNAウイルス量は8名15%のみ測定経験者。予後を予測する指標が無いという事は、臨床症状が出現した投薬が増えるであろう。そうなるとリカバリーするのにまた医療コストが必要となり政府予算と患者家計の悪循環が続きそうだ。患者は常に社会動向を見極めなければならない。保険制度について国会はもめている。医師はコストと生命倫理を両天秤にかけながら治療を進める。治療選択について信じられるのは自分だけ、責任はすべて自分の身体に現れる。それは死も含めて。
医者、保険、薬、医療費、すべてが政治次第。
1.保健インフラの未整備は女性患者の他科受診を阻害する要因となっている。また医者からの他科診療の重要性を患者に認知させるアドヒアランスが無い。婦人科は免疫低下による発ガン率の上昇、筋腫の発生は早期発見による治療の簡易度・治療コストの点において患者側、医療従事者側両者の利点に成り得るにも関わらず実行されていない。精神科は服薬、通院、治療に対する態度を前向きでありなおかつ効果的に維持するには患者自身の行動が重要であり精神疾患はマイナス的行動変容に結びつく。
2.女性を意識した治療体制を考慮しない場合、治療効果は激減する。女性が一番恐れることは外見の変化であり薬剤製造(政府薬科局)治療方針(医師の判断)において十分考慮される問題である。
情報提供をどこまでするべきか躊躇していたが
Dr. Virat, Ms.Tengmanee,は世界最新情報を積極的に提供していた。生死を分ける深刻な“かけ引き”に必要な薬に関わる世界的情報、医者・保険に関わるタイ国内情報と世界援助基金動向、今後も変わらず情報提供を薦めていく。

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