no.06-03

AM6:12   月曜日   〖茶山花〗
 タマが、遠い目をして動きが緩慢だ。気持ちは解る。私は私でタマに隠し事作ってしまった。
   「ふぉーう」
 思わず同時に声が出た。それぞれの事情で気分が盛り上がらない。
  「大丈夫!ボク、タマから本当にトキ奪おうとは思ってない。2人が仲良いの見てるのが好きだから。でも、好きなの……トキが……ふくざつなのよね~今日の事は喋らない。けど、たまに独占させて…」
 ホント複雑……あー厄介なのが…
      カランコロン
  「トキオさん、お久しぶり!」
 ホント何者?名刺には”渡辺 秀一郎“と書いてあった。基本英国のロイズから依頼を受けて、調査するらしい。事務所は、コノ街のエスカレーターの無いビルの6階だそうだ。共同出資の事務所で、マネージャーのように仕事を持ってくるのは、関西弁を話す英国紳士だそうだ。
  「あーおはようございます。渡辺さん。」
  「名前…覚えていてくれたんだ。所で、トキオさん週末どっか行ってるんですか?土日ココにいないし。タマさんも」
  「プライベートですから。それに、盗聴好きな人にはそう簡単に教えられません。」
 カウンターの下に有る、盗聴器を取り目の前で解体を始める。
  「コレ、発信機じゃなくて、32GのSDカードに録音するタイプで、探しにくかったな~後、観葉植物の処にもあってさ~」
 顔色変えない。全く…不自然な仕草もない。さすがSAS上がり。
  「へーこういうのが最近の流行りですか。確かに、発信しないから、探知機に反応しませんよね。ここ不特定多数の人が出入りするから、これでも盗聴可能なのか~覚えておきます。私の仕事でも、コレ以外と盲点かもしれないので…」
 まーさりげなく私のじゃないよと宣言してる。
  「あー失礼しました。何でかな?すっかり貴男のかと…土日は、田舎に帰ってます。」
  「…田舎ですか…」
  わざとらしく、カウンターの下から、名刺ファイルを出して貰って、スキャンをスマートフォンでし始める。
  「あー私名刺無くすの天才的で、ここで預かって貰ってるんです。スマホでスキャンして持ち歩けば、無くさないし…ほら、渡辺さんのもココにあるでしょ!」
  「そうだね…私もそうしよう。…」
     カランコロン
  「めげないね~バレルっつーの」
 私のズボンの裾、黒っぽい針が刺さっている。これもたぶんGPSだろうなぁ~なんでそんなに補足しようとするんでしょう。命令系統浮かんでこない…個人的?同性愛者のストーカー?それはヤダ!!
  「最近”みちよ“来てる?」
  「ああ、来るよ。相変わらず可愛いんで、ついご飯奢っちゃうんだけど…」
  「このピン、みちよに持たせて!楽しみだ。」
PM7:07   月曜日   〖茶山花〗
 カウンターで、久々にノートパソコンを動かしている。
  「何でもスマートフォンと、タブレットで済ませてるトキ~何やってんの?」
  「すっとぼけてる保険屋、怒らせてやろうと思って…ホラー懲りずにここにまた在ったんだ、盗聴器。もうすぐココに来るよやつ…」
      カランコロン
  「コンバンワ。…もう終わり?刑事さんとトキオさんのグラス、まだ作ったばかりなのに?…営業時間外なんだ~私も混ぜて下さいよ。こんなの貰ったんですよ~」
 手には、スプリングバンクのカスク…マスターが同じのを出す。
  「ダメですよ!このマスタースプリングバンク好きだから、ボトラーズものから、ミニチュアボトルまであるもん。毎年スコットランド行って買い付けて来るから。おかげで、メーカーから、仕込水半月に1度贈られてくるんだよ。」
  「………」
 ぐうもねもでなそうだ。
  「詳しいんですか?英国?メインの仕事は、ロイズだと聞きましたが…」
  がっかりしてる振りして、盗聴器を付け替えているようだ。お持ち帰りして~よーくお聞き下さい!
「詳しいつもりでしたが、どうも、マスターの方が詳しそうですね。お見逸れしました。折角ですから、呑みましょうよコレ…あーリザーブ料ボトル代の半額で良いですか?」
  「………!」
  「特別にいらないってさ。コレに好きな名前書けってよ。」
  「少し…スコシ…Scotch!あれ?スベった?」
 見事にスベってます。本当に名札に書いてあるよ!!
  「どーやって呑む?」
  「ショットの後、ミストかロック。あー仕込水有るなら、ハーフ&ハーフの水割りでも良いな~」
 げっ、気が会いそうな呑み方…いや~~
  「あーごめんボクはホッピーで、弱いんですアルコール。スコッチトキから舐めさせてもらおー」
  タマが、チョコとバタピーを出してきた。このバタピー、さっき作ったものだ。さすがに国産の豆ではないが、作りたては旨い!
3人…あら5人分のグラス…マスターとタマのだ。
AM6:16   火曜日   〖茶山花〗
 渡辺さん…私より速く来てる。営業用の作り笑いがない。機嫌悪そう…聴いたのかな?
  「トキオさん!」
  「ハイ?おはようさんです。」
  「…う~っ  おはようございます……」
 はは!聴いて、文句言いたいけど言えない…ホントに何者だよコイツ。
  「えーと…渡辺さん、常連客に認定します。特典は在りません。リスクだけです。次から店に入って2分以内に注文がない場合、自動的にフルパかチョコパのムサシになります。定価1575円です。ご注意下さい!」
  「ハイーッ?なにそれ!そのストップウオッチなに?」
  「そう言ってるうちに、頼まないと…あーあー」
  「はい!渡辺さん、ムサシですね~」
  ぶすーっと5分してる間に、デッカいパフェが、保険屋の渡辺さんの前に…
  「何で朝から…しかも1575円!理不尽だ!」
  「今度来たときは、速く頼もうね~秀一郎さん!」
 ウップと何度も言いながら、食べきった。結構言い人だ。残さないところが…次もあるらしい。新しいレコーダ残していったし。私より年上風だけど、いくつなんだろう?ちゃんと御馳走様言ったし、何が目的なのでしょう。
PM6:43   火曜日   〖茶山花〗
  「あーもートキオ君!普通にしてて!あ…シーザーサラダね!後ギネス1パイント!」
 意外と早く根をアゲましたね~
  「3時間×2般若心経入ってた!聞くほうのみにもなってくれ!GPS地図にない道歩いてるし!アーソーデスヨ私は興味があるんです!ほら、コレ」
  10インチのタブレットを取り出し、地図…まー見事に道の端、屋根づたい、横切る片側3車線の国道、肉屋と魚屋を言ったり来たり…
  「コレ…猫でしょう!…ナポリタン喫茶店風一つと、トースト追加で…」
  「ハア…いったい何の…」
  「誤魔化さなくて良い。勝手に捕捉してたのは私だから……取材したいんだ!私の本業は…」
  ドサドサと文庫本…D-rankって最近流行りの読み物書いてる人だ。アニメや映画化されてる作品も多数。そういえば、作者は、謎に包まれてたっけ。もしやまさか……
  「はい。私一人で、D-rankです。」
 どっちが本業だか…話によると、D-rankでデビューする前から、調査員の仕事はしてたそうだ。色んな調査していたら、今売れてる読み物より面白いとキズいて、脚色してネットにアゲた所、すっかり人気がでて、あれよあれよと作家先生となったが、ネタの為にまだ調査員を続けているとのこと。
  「トキオ君、良いネタ取れそうと思ったのに…やっぱり元同業者…バレバレでしたか?」
  「ええ、そりゃあもーただ、後ろに誰か居るのかと思って静かに見ていましたが…」
  「大丈夫!ネタ探しだけ。だってどうしても説明つかないことが…気になって最近の未解決事件ゴソゴソしてたら…トキオ君にぶち当たった訳さ。曲がりなりにも、保険屋の調査員だし、話してくれないだろうし、じゃー盗聴だ!ってなわけで、般若心経カヨ!って。そんなわけで、御手洗さんと、手合わせするとき教えて!力ずくで聞き出す!」
 はー面倒クサい人に捕まった…みちよさん国道を横切るのは危ないよ。白の割合多くブサ可愛い三毛猫のみちよさん、背中向けて、白い皿に夢中でこっちの想いも、喋りも感じない振り…
PM5:20   水曜日   〖警察の道場〗
 あちゃー…何!その横断幕“速いぞ強いぞトキオ!”だの”負けてどーする お前は街の防人だろ? アホWC“…妙に盛り上がってません?キャーキャーって…久々エリちゃん、相変わらずきゅっぼんきゅのスタイル…一般的にはセクシー何だろうけど、私にはん~と考える…イツキは好みらしい!性格もツンツンかツンちょいデレが良いらしいので、ぴったりだと思うのだが。
  「フリーで、当てたら負け、寸止めでマイッタ言わせるまでで良い?」
 白い胴着着慣れてなくて、胸元とか、オビとかしきりに直してる渡辺さんに問う?
  「いいよ 何でも!はーっ久々にマジだ!筋肉が喜んでる!」
7人のオタクの内村光良ですか?
  「まあ、私シードね!何時間でもどうぞ~」
  知ってる私も変だ。パンクラチオン?レスリングの御先祖でより実践的でちょっと間違えると相手を制するより、壊す方が強い、打撃系少なめのグラウンドタイプの格闘技だ。やりにくそうなイツキ…が…25分後に行き脚が止まる渡辺さん…
  「ゼー…ンバー ふー若さに負けた!アホか!汗位かけ!」
 汗だくで、畳の上に仰向けで転がる秀一郎さん。その55分後…
  「アホトキ~右手脚まだ動かせねー汗かけ!」
汗だくで、あぐらかいて座り込むイツキ…キャーキャー黄色い声も悪くないけど、警察の皆さんに面倒かけている私としては、ちょっと心苦しい。かわいい子多いのに…しかもこんなにキャーキャー言われてるのに…彼女居ないイツキって……
  「目良いんだ~天才的なディフェンス…てか打撃見てないから解んないけど…ココイイネ!特に婦警さんの普段着…イツキ君はいい男なのに何であの中から選ばないんでしょう?」
 本能に正直な目で女性陣を見ている。初めて素顔を見たような気になった。私より仮面被ってるから。
  「秀一郎さんは、年いくつ?結婚は?」
  「トキオ君、イツキ君より年上で、マナブさんより年下。個人情報ですので。取材させてくれたら…教えてあ.げ:る♡」
  「じゃーいいです…」
  「ナンだよ~もっと興味持てよ~悪かったよ~しつこかったり、ストーカーチックな事したのも!じゃー組み手で、撃って来ていいから…久々に殺気出して良いから!私も…」
 ブワッと、道場の空気が暗く重くなる。イツキとは軽く当たった…三味線弾いてた?気を張り直して…両手両足もちゃんと使う気で…マナブとエリちゃんは私たち見て舌打ちしてるし、観客も静かになったし…
 げっ、はやっ!腰から下をタックルのように捕まえに来る。低く移動してるので、こっちの打撃が…ついでに殺気…つい昔に……気が付くと、秀一郎さん仰向けで気を失ってた
  「トキ~ボクの時は、それ出さないでね。」
 その一言で、ふっと我に返った。周り見渡すと、3人意外凍り付いて時間が止まっている。どうしたもんでしょう?
  「な☆な~んちゃって…テへ!」
 誤魔化せるわけも無く、皆さん苦笑い…まー次から少なくなるでしょう。それはそれで良いかも。
AM7:39   土曜日   〖里山予定地〗
 ついて来ちゃった。この保険屋は~……
  「元々、イケメンじゃないけど、痛いな~ぁ!痛いって!あそこまで本気なんて聞いてないし~…お詫びしてほしーなーぁ!田舎?山?みたいなぁ~……ね~トキオ君!」
  「アーハイハイ、すいませんでした!!秀一郎さんが先に殺気出したでしょ?つい…引きずられて…引き出したのは秀一郎さんでしょ!」
  「何のこと?他の人に聞いて、多数決で決めようか?人の主観なんて、解んないし~…事実は、私がトキオ君に、大怪我させられたってことでしょ?お詫びしてくれないと、訴えちゃオーかな!」
 疲れる…やりたいことやって、癒されるためにココにいるのに…
   税金、一時所得の分は、65%とられた…いや…支払わせて貰った。私の給料は、コレで面倒みれそうな金額…2500万分 土地を広げた。とうとう国道……三桁…400番台後半の番号だけど、国道沿いまで買えた!平面の土地は初めてだ!
  「ね~トキ!ココ頂戴!ログ建ててカフェやりたい!私今プーでしょ?事務所無くなって~他の事務所は、TVTVってうっさいの。元々それが夢だし」
  「私は良いけど、みんなに聞いてみよう。」
 そんなこんなで、ログ建てている。さすがに重機を使って…
そんな時に、お客様一組と、保険屋がはじめましてナノだ。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?