no.06-01

AM6:01   月曜日   〖茶山花〗
今日、1億入る予定だ。ずいぶん前の依頼料。保険屋の調査が長くて…赤の他人だし…つながりは、住民と街の職員だけ。何故私なのか?孤独死…外傷も、体内の内容物も疑うものナシ。たった一つ調査員が解らなかったのが、受取人の変更。結局、不明と書類には書いたらしい。
  そう、大男の母の保険金だ。
「 一時金になるので、今年は銀行にしおづけにして、来年の確定申告まで使わない方がいいよ。君お金困ってなだそうだし、税金払ってから使った方がいい。私、ここ気に入った!君も…いや君は興味があるかな?知り合いからよろしく!」
 と、名刺置いたので、思わず私も名刺を出す。相手は私の情報は知ってるけどね。
  「ありがとう。コレ貰わないと、連絡取れなくなるところだった。もちろんトキオ君の情報は、有るけど個人的に使えないんだ。会社の個人情報保護の規約と、この国の法律でね。名刺くれたから…私のは、裏のプライベートの方ね。表のは会社のだから、トキオ君と関わらなくなると、非通知になるからさ。」
 裏に手書きで、メールアドレスと番号がある。几帳面そうな字だ。カウンター二人の前に、モーニングが並ぶ。ほんとに気まぐれだ。同じなのは、コーヒーぐらいで、プレートの上違うものが配膳されている。
  「そんなに警戒しないで!今日振り込まれるんでしょ?私の仕事は、報告書出した時点で終わり!ほんと個人的な興味だから…マスターとトキオ君…私と同じ匂いがする。いくら隠しても、ピリピリ痺れる様な空気…コレから、私、仕事で京都行くから!お土産何が良い?」
      カランコロン
  「グーモーニンエブリバーディ!」
  「ハイハイ、おはよー」
  「すげー皆練習したかのように揃ってんな~今週も、手かけさせんなよ~ おー怪しげな探偵君おはよー」
  「ホントすいませんすいません。トキ!はよー。っと…保険屋さん、まだ居たの?」
 ある種、凄い才能です。イツキに煙たがられるのは。イツキは人間全善聖の人。どんな人とも友達になる才能の持ち主に、煙たがれるなんて…
  「まず、たかだーのきもぐれいーちんぐ2つ」
  「それじゃ全く原型無いですから。気まぐれモーニング2つね~マスター」
  ストップウォッチを舌打ちしながら止めてるタマ…くっくっと笑う保険屋さん。
  「ね~トキオ君は、お友達もバラエティーに富んでて、刑事さんでしたよね?イケメンの方、そんなに邪険にしないで下さいよ。」
ケラケラノー天気に笑う。今は、こんなでも本当シツコかったからな~私まだこの男と話してない。そんな態度で解るでしょ?
  「返事無いけど、ここはポジティブにテキトーニおみやげ買ってくるね!じゃー」
      カランコロン
  「めずらしーね、トキが上辺だけトークしないで、完全シャットアウトするの。よほど頭に来たの?」
 ぷーっと深呼吸
  「御仕事の件は、今日び一円でも会社は出したくないだろうから、厳しい追求、調査があるとは思ってた。別にそれは…あの態度と目…何か違和感がある。事象以外に、私を必要以上に知りたがってるところも。時間止めて、持ち物みたけど、命令系統が在りそうも無かったし。マスター金払うから調べて!」
  「…………!」
  「よろしくお願い!」
  「未だに、……なんていってっかわかんねーな~なーイツキ!」
  「マスター翻訳機作って~タマ~」
 まあ、あの男の言った事信じるなら、しばらくは逢わなくて済みそうだ。とりあえず後で暇になったら、盗聴器探知機で、調べといて!タマ!
PM6:43   月曜日   〖茶山花〗
「……?……!」
 「外人部隊じゃなくて、イギリスの特殊部隊に居たの。SASかぁ~命令系統はない。ふーんなんで知りたがるのかな?」
  「はい」
 タマからのメモ。カウンターの下と、コンセントに盗聴器…?そのままにしてある…かあーメモ書いて渡し直す。名刺にチップが埋めてある。GPSらしい。と…さて呑みながら与太話しよう。
 「CR-X楽しい?コンセプトは?」
 「踏んで、反応するVtech!キャブ使用だ。FCRセットして、レスポンス重視。徹底的に軽量化。元気な峠使用にしようと…」
  「何で今、CR-Xなの?」
  「可哀想でよ~チョイと昔、峠の常連だったのに、スッカリ忘れられてよー。まだ現役で走って欲しいんだ!ボディー軽さは今の車に負けてねーぞ!特に、ホンダLOVEじゃ無いけど~」
  「ボク知らなかった。小さくてスパイシーな感じ…プラットフォームcivicと一緒何でしょう?まーボクは、プリウスとチョイノリで十分ですけど! ガソリン使い過ぎんなよ!」
 ホッピーをハーフ&ハーフで飲むイツキ。モータースポーツ興味なし。それなりに、2輪も乗れるけど、セローにアウトドアグッズ載せて、林道走るのが好き何だそうだ。
 そこいくとカオリ&マナブ&リョウジは、マシーン大好き派だ。耕運機ですら、チューニングしそうな勢いのマナブ。スコッチをストレートで、パカパカたばこを吸う。
  私は、どっちも好き、広く浅くタイプかな~バーボンストレートで、静かにたばこ吸う。
   「イツキはよ~なーに楽しくて生きてんだよ~」
 いきなりドヨーンと、湿度が上がる。
  「ねー…楽しみ……かーボクは何処へ向かえば…」
  「しっかりしろーイツキ!今、新興宗教の勧誘されたら、スルスルついて行くぐらい落ちてるな!いいか?振られたんじゃなくて、フリーになったの!解る?選り取り見取り、伊藤みどりなんだよ!」
  「響かない…」
 止めた方が…マナブのショットグラス奪い取って、自分の口へ流し込む。私のも…
  「二人はいるじゃない!ヒッグ”パートナー…ボクには…ねータマ~ボクはこの写真達と生きていくのかな~」
 カバンから、…あータマの写真集2冊出してたんだよね~げっ初版で、両方サイン入り。あとは、スクラップブックに、タマ満載。
  「ね~コレって、もしや発売当日に本屋に並んだとか?」
  「えー並びましたよ!ボクの女神様♡様々なルーキーアイドル見てきたけど、タマが…でもスッカリトキのだし…良いんだ良いんだ!ボクは、コレがあれば…」
 趣味有ってよかった。アイドルオタクね~
  「それよこせ~私の黒い過去だ~ハズイジャネーカ!!」
  「ダメ!ボクのお宝♡このくびれから腰、脚に至るまでラインがなんとも…トキは触ってるんだ!舐めてるんだ!ヒッグでも、このポーズはボクの~」
   「いいじゃんタマ~有効活用してるんだから。ファンだよ~」
  「おま自分の彼女が、ネタにされてていいのか?」
  「別に、あれはファン様のポーズに笑顔だろ?私は……ねえ~」
 じーっとタマを見つめる。小さい声でばかやろと言いつつ、キッチンの奥に隠れる。照れてる?
 へーこーなるんだ~泥酔すると、絵に描いたような、真っ赤な顔。タマの写真集抱いて寝てるし。
  「マナブが変な事聞くから~“何楽しくて生きてる”なんてさ」
  「良いんだよ。コイツは自分より相手の事の馬鹿やろーだから、たまに自覚させてやらないと閉じこもりそうでさ…感情も吐き出さないと…なっ」
 はーお兄ちゃん気質爆発ですね。豪快な処と、よく見てるやさしさ…部下に信頼されるの解るナー。めんどクサいところも有るけど。
  スコッチとバーボンの違いはあるが、似たようなペースの私たち。話さなくてもイヤじゃない位の仲にはなった。呑むには良い相手とお互いに思ってる。
  「トキには……幸せか?と質問しよかな?」。
  「はい!幸せですよ。考えられないくらい。この国の人は、初めから普通のレベル高いから、鈍感になるんですかね~水がでる。電気が24時間使える。大量の人が死なない。まあコレは、みえないところで、3万人減ってますが…政治が馬鹿でも暴動が起きない。信じられないくらい、幸せなのに何で気が付かないのかな?」
  「物質が満たされると、感情も満たしたくなるんだな。その先に、”欲“があるんだろうな。良くも悪くも」
 2人して、それぞれ水割りにする。ほかの店ではしない。ここの水は、軟水。昔々から今まで続く、街中最後の酒蔵の仕込みの水である。何処にも角がない、特徴のない水。マスターはコレを汲んできて、使っている。故に、コーヒーも水割りも素材を邪魔しない。それが好きで水割りを呑む。
  「マナブ知ってる?パンドラの箱の話し。」
  「ああ、ミミック!」
  「それじゃドラクエでしょー!知ってるくせにボケる。ある国の王子が箱の中から聞こえる声を聞いたんでしょ!」
  「そうそう!いちまーい、にまーい」
  「何話し混ぜてるの~お願いします。ここから出して下さいでしょー。とても弱々しい声で懇願するので、可哀想になった王子は箱を開けた。すると…」
  「引田天功がぱーっと出て来る。あの人何歳だよ~ある意味イリュージョンだよな!あのスタイル。」
  「ハイハイ…怒り、憎しみ、悲しみ、と色んな感情が飛び出てきた。急いでふたを閉めたが、ほぼ世界中に広まってしまった。箱の前で泣き崩れる王子に”悲しまないで。私も出して“と箱の中から懇願する声。最後に箱から解放されたのは、“希望”でした。」
  「そうそう!ミリアム!希望!のぞみ?」
  「最後に助けた希望が厄介者でしょー。希望が有るから生きてゆけるけど、希望の為に独裁者や戦争、紛争…先に箱から出たもの達を強調する。厄介だけど、無いと困る…酸素みたいだ。」
  からん グラスの中の氷が、音を出す。
  「じゃー質問!マナブの幸せってなにさ」
  「笑顔に会う…または笑顔にする…その笑顔を守るかなー……何ニヤニヤ見てんだよ~たまにはマジになって良いだろ~其れともなにかい?俺には似合わないってーのかい?」
  「噺家カヨ!…一応突っ込んで…いや。似合うけどその台詞は、10年に一度で良いや。マナブにマジ顔で言われると、お腹一杯10年は保つ。あーそうだ!一つ聞きたいこと、ブティックの地下で拾った靴下…あれ本当に私の?タマが持ってたって本人しらんて…」
  「ヒミツひみつ秘密ヒミツ、秘密のアッコチャーン♬」
…………あーーーーっまいっか。

 

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