no.09-04

Am6:46 水曜日 【Kaisya】
まあ、朝だ。この時間にも慣れた。ってか腹が減る。で起きる。朝のワンプレートと汁物、サラダに保温ジャーのご飯。今日は、ジャーの中空になった。
「おー結構結構。早起きにも慣れてきたか?顔色も良くなってきたし。明日ご飯増やすか?」
「そうしてくれるなら。お願い致します。」
すごく小さな声で、勇気を振り絞ってうつ向いて答える。見て見ぬふりしてるんだろう、ごく普通に
「あいよ!少し増やしてやるよ」
おっさんかよ!その言葉使い。でも、美人というよりは身近な近所の綺麗なおねいさん。足のラインはもろ好みだ。なのにこのオヤジのような軽さ……ざっくばらん過ぎる。このオヤジ的落ち着きで、21だって。信じられない。
「何?私に惚れたか?今はソールドアウト中。」
「んだよ!そんなんじゃねーよ。ってかそのバカ力で、オヤジ的な性格で良く彼氏出来たな。見てみてーな、ゴリラみたいだったりして」
目を反らして悪態ついて俺を見て、ニヤけてる。
「もー少しかな。アホ言ってないで畑行ってこい。トキは金曜の夜か、土曜の朝には要るぞ。因みに、ここの男には喧嘩売らない方が良いぞ。ってかマトモに買う奴居ないけどな♪」
何がもう少しなんだか……
Am8:00 水曜日 【畑】
「おはよう!!………あれ?……おーはーよー」
昨日突然帰ってきた、俺らが使ってるログの持ち主の渡辺さんだ。
「うっす……」
「おーはーよー」
「おはようございます」
「やっと言った!」
「あの~……えっと……」
「ああ、ハイハイ。良く眠れた。外も良いぞ♪気にすんな。使って良いよ。条件1つ増やそう。ちゃんと挨拶すること!他の人は知らないけど、ボクやなんだ。折角出会えた同士が、言葉交わさないの。だって、いつこの世から居なくなるか誰も解らないんだぜ♪ナー、えっと、名前出来た?」
「オーもう少しって、言ってた。希望は2・3個出してあるよー。もうしこし言葉うしくならねーた。」
この、ノー天気な人にも、喧嘩売らない方が良いののかな強そうには見えないけど。なんだなんだ?この3人組、名前無いの?何で?
「渡辺さん、炭焼最近やってないでしょ。当番ねー

「良いよ。ちょうど寝るとこ出来る。若いの貸して」
てなわけで、2・3に分かれて今日は、作業。炭小屋組は午後も作業だ。俺は炭小屋組行くことにした。
Am9:27 水曜日 【炭小屋】
「釜に入れるの手伝って。ソコの薪の山から運んで。」
名前の話。聞きたい。名前ない奴何て要るのか?
「はい。」
この小屋に来るまでに、この人にも喧嘩売らない方が良い事が良くわかった。坂道を、息も切らせず登って来た。多分この人にとっては、ペース遅めだったのだろう。俺らの様子見て、ペース配分してたように見える。それを俺らには言わない。嫌いじゃない大人だ。さっきの挨拶のくだりも、"ボクやなんだ"って、言ってる。
良くある光景で、親が子供に怒ってる怒り方。
「…お店のおじちゃんに怒られる……」
だの
「…誰もそんなことしないでしょ!」
「…恥ずかしい…」
って、正直じゃない怒り方だ。自分が、好きじゃない。分かりやすくて、ツッコミずらい。
「お前が恥じ掻く」
「お前のため」
あほか、そんなんお前に解るんか!よっぽど渡辺さんの言い分は心に響く。
そういえば、ガス使ってないよね、ここ。
「渡辺さん。質問して良いですか。」
2つ有った。1つは炭のこと。もう1つは、さっきの名前。
「ガス使わない。電気も極力賄うのがここの目標!後、田んぼももうすぐやるし、小麦も、野菜も肉も、自給自足したいんだそうだ。もう1つは、本人に聞け。君達だって、他の人から自分達の事言われるの平気かい?ディープなプライバシー。ボクはやだね。だから言わない。本人に聞くのが筋でしょ。」
解りやすいお言葉ありがとー♪いいねースッキリ爽やか。
Pm12:02 水曜日 【Kaisya】
げっ。とうとう火が起きてない。折角美味しいランチの光明が見えてたのに。なんだこの棒?
「いい加減にしてくれよ。火が無きゃ焼けない。ライターは?」
新聞紙に、小枝。後この棒が、一杯箱に入ってる。
「マッチ知らないのか?こーやって擦ると……な?火が付くんだ。じゃー」
「じゃーじゃねーよ。点けたこと無いんだよ!」
「で、?」
「点けてくれよ!」
「モノには言い方がある。考えてみろ?」
腹が減ってるので、頭の中怒りで一杯だ。でも、実力行使ではかなわない。ちくしょう!
「ここに来てから、私にいってない言葉があるんだ。素直になってみろ?」
なんだそれ。そーいや、渡辺さんにさっき言ったの久しぶりだったな。そーだ。
「教えてください。火の付け方。」
「良いよ。こーして……」
新聞紙丸めて、その上に小枝。でその回りに炭。マッチとやらを擦って、新聞紙へ……メラメラと火がつく。それが小枝に……で炭に移る。
「まーこんな感じだ今度はやれよ。」
「解った。ありがと。」
「どういたしまして。」
スゲー、久しぶりに大人と普通に会話が出来た。これが言葉のキャッチボールというものかな。と、えーと野菜仕込んで、おし!火はおきた。鉄板温めて、油敷いてニンジピーマン、キャベツの芯投入。次肉。で、麺入れて野菜の水分吸わせて、粉ソース入れ終了♪
「オーヤッタヤッタ、旨い飯にありつけた。」
「良かったな!明日自分達で火が付けられたら、サル卒業だ。」
「ハア?なにそれ」
「いいか人とサルの違いは火が使える事と笑顔が出来ることだ。だから、ホレ今お前ら笑顔ダゾ。で、自分達で火が使えれば。自立の始まりだ。回りの事考えられれば、大人の始まりだ。」
「そんなもんすか?」
「私は、そう思う。」
確かに、うまくできて腹一杯で、顔見合わせて笑いあってた。こういうのも悪くない。
「そーだ。名前ってなんですか?」
調子に乗ってきた。解らないことは聞けば良い。分からないことは恥ずかしいことじゃない。ここの人たちは、きちんと教えてくれる。
「あー……ん~」
「言いたくなければ……」
「そんなけとい。ほんの2か月前まである国の殺し屋だったな。番号しかなかった。幼い頃から、人の壊ししかしぬなきった。ここで、こんな事してたら、生きる事解ってきた気がしむ。そんなかんじ」
………陽気だったから、どっかの金持ちが遊びに来てるのかと……
「オー サンキュ。泣いてくれてウニ。えーと、ありがとーだっけタマ…!」
「そーだよありがとだ。感動ステージやってるとこ悪いけど。昼休み終わりじゃねーか?」
あわてて、それぞれの場所に散っていく。人の事で泣けたのは初めてだ。てか、やっとここが見えてきた気がする。ここの大人は外の大人たちより子供っぽい。でも、何かに夢中になってる。後共通してるのは、自分に自信を持ってる。だから、他人に慣用なのだろう。
そう考えると、口うるさい文句ばっかりの教務主任とか担任の人としての熟成度が分かる。少なくても、俺分かられるようでは、よっぽど薄っぺらい。
許してやるか。どうせ、あいつらは、俺の人生の中では一瞬しか出てこないエキストラだ。そんなことより、俺は何がやりたいのだろう。それを探そう。
Pm1:23 水曜日 【炭小屋】
「んだよ~遅いよ腹減った!」
「すいません。だったら、めんどくさがらずに一緒にいけば良かっショ」
渡辺さん、下りるのめんどくさがって、俺らに出前してと頼んであったのだ。
「あーゴメンゴメン。ありがとーもってきてくれてもう少し速いともっと嬉しかったな~」
ありゃ?スゲー大人な人と思ってたのに、この人以外にめんどーな人?一言多い。そうそう、我らの焼きそばも少し持ってきた。
「焼きそばねーこれが一番簡単だもんな。……ん~旨く出来てるじゃん!ねー飲み物……誉めたでしょ隠してないで、保温のソレソレ。ちょうだい……いや、わざわざありがとう。そちらも頂けませんか?」
これなんでしょ?マックのシェイクみたいな…
「フローズンダイキリ。カクテルっすタマのダイキリうまー」
「ふん。不良中年。昼間っからアルコールかよ。でもそれ、旨そう。飲めるようになりてーナー大っぴらに。」
「タマの所なら自分で稼いで、国の税金払ってる奴は、酒もタバコもOKだぞ。あの店の隣の、店舗建ててる親方の弟子、確か君らと同い年だぞ。」
へ~……おっと、この人食い終わるまで、釜の入り口うず高く薪を積んでやろう。フフ。なんここの人たちが、この人いじり倒すの、分かる気がする。
Pm6:34 水曜日 【Kaisya】
「タマ姉と呼んで良いのか?」
「好きに呼べよ。気に入らなかったら、裏拳飛ぶだけだから。」
「じゃータマ姉、それ教えてくれる。」
又カレーを……つまりこれ言わせたいんだろ。素直流されてやろうじゃん。
「のってくれてありがとう。そっちは、皮剥いて一口大に、カットそうそう、こっちは、メシ炊くか。こーやって米を研ぐ。でおいとけ。20分」
とま~望んだ分だけちゃんと教えてくれる。カウンターには、頑固者そうな親方と弟子が飲んでいる。酒もタバコもやってるね。歳は同じらしいけど、俺らよか……認められてるんだ。
「タマ、うちらもそれ食わせろよ。今なら2人分増やせるだろ。金払うから。食ってから判断させてもらうけどな。」
「もーちょい野菜とにくふやそう肉増やそう。ご飯は、こっちのもあるし。良いよ。お客のために、喰えるもん作れよ!」
「げーっ…イキナリハードル上げるなよ。初めてのカレーで、売れるもん?出来るわけ……」
「出来る出来ないじゃないダロ?やるか、やらないかだ。気楽に丁寧に作ってにみろよ。万人に旨いもの何て無いんだ。その人の趣味に合ってるかどうかでしかないんだ。でも、良い傾向だね。人に比較され事に、緊張する様になったんだ。」
そーだ、前は、キレたふりしてそこから逃げてたのに、良いもの作ろうとして気負ってる。認められたい欲求が、出てきたんだ。
「親方!250円が、最低ラインだよ。」
「750円だなぁ大敗けに敗けて。」
つい5人HIタッチしてしまった。素直に嬉しい。そーか、流されるのも、自分で選ぶんだよな。誰か言われて何かをする…これも自分でそれ選んでるんだよな。その中から何を得るか何だろうな。
「これ、お前んちの味なのか?だとすると、お前の母ちゃん、良い母ちゃんだな。」
ふと、弟子が、俺に話しかける。
「んだよ~お前の母ちゃんだって、喜んでんダロ?ちゃんと仕事しててさ。俺らなんか、泣かしてばかりだ。笑顔最近見てねーや。きっとお前の母ちゃんも良い母ちゃん何だろう?」
「ああ…喜んでると思う。」
ん~。何か奥歯に物がつまったような、地雷踏みそうな……
「いないのか?」
「ああ……両親知らない。施設で育って親方に厄介になってる。因みに、暗くなるな。それが一番ムカつく。ボクにとって初めから居ないのだから、これが普通なんだ。まー産んでくれただけ有難い。こーやっていろんな人に会えるしな。」
やっぱり大人だ。俺らより……
「な~同い年じゃん。友達やってみないか?」
「ボク……無口で、暗いぞ。」
「自分で解ってるなら、変えられんだろそのうち。まーイーや。たまに遊ぼーぜ。」
こんな言葉が出てくるとは……そうなんだ。気がついてることは、変えて行ける。そう信じたい。



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