no.09-05

Am6:38 木曜日 【Kaisya】
「何難しい顔して、メシ食ってんだ?」
最近余裕が出てきて、回りの物がよく見える様になったんだ。店主のタマとは5つぐらいしか、年が変わらないこと。ここのコーヒーは、雑味がなく、苦味と酸味とが、バランスがとれて美味しいこと。このガラスのタワーは、コーヒーメーカーで、時間がその回りだけ、のんびしてること。僕らもよく知ってる女優も暮らしていること。ここによくいる犬は、どーも人見下しているけど人が好きらしいこと。タマ姉は、結婚してて旦那が格好いい奴らしいこと。
色々見えてる。実はここ楽しい。自分が役に立ってる気がする。でもそれは、ここに自分の気に入らないやつが居ないからだ。
そんなこと考えてたら、俺らって今ま外には出てるけど、5人だけのコミュニティで排他的な引きこもりだったんじゃないかと……何でそうなったんだろうと………両親悪い訳じゃないのに、何であたり散らしていたんだろう。
「今日も、タマ姉は、綺麗なのにがさつだとふかーく考えてたのだ。じゃー又昼に来るぜ♪」
「惚れんなよ!悲しむだけだから。」
カウンターに座り、静かに朝飯を食ってるのは洗剤の香りを仕事着からさせている、弟子だ。
「おはよー、きばっていこ」
急に声をかけられ、ゴホゴホ言いながら、"オー"と返事してるように見えた。
Am8:02 木曜日 【山仕事】
畑ばかりではない。田んぼの準備。動物達の世話。森の管理。後これ、何これ!!
「ここは、2番目野池に併設してる水力発電装置。もっと上の方に1野池があって、湧き水もその近くから引いてる。この下に3野池。畑、田んぼに使うように作られてる。ここの整備するぞ~草刈りと、草刈りだ。」
つまり、草刈りねー……ちょっとどきどき、だって、芸能人が!地下足袋で、ほっかむりして手指しの姿で佇んでいる。そんな格好でも、スタイル良いし、いいにおいするし……響 リコさんだ。隣には、冴えない中年……マネージャー兼夫の響 ワタル。何でこんな男が………で、お子ちゃまのみくちゃんだ。良かったね父に似ないで。
「ふーん君達が、良かったね、トキに告げ口されなくて。言ってたら、もうこの世には……生きて会えたんだから、よろしく!リコよこっちがみくで、こっちが………誰だっけ?」
「んな事言ってると、仕事詰め込んで、ここに帰ってこれなくしてやろうか。わたくし、夫兼ジャーマネしてます。ワタルです。」
「良いわよ♪したら、あーたもこれなくなるね!」
キャイキャイケンカと言うか、なんと言うか。仲良いんだ。オーこの犬は、この家族の一員っだったんだ。犬も食わない……そんなクールな姿で、高みから見てるようだ。
小さい手が二人のおしりを叩いている。
「ハイハイ、お仕事ですよ♪ねー♪お兄ちゃん達」
たまに見たことあった。あの工場にいた。あの家の子だと思ってた。
「まー草取りよ。やろー」
て訳で、響家族と草刈りだ 。遊んでるんだか、草とってるのか、解らんくらいキャイキャ騒いでる。楽しそうだ。そーか、久しぶりにきっとあってるんだ。確か舞台1ヵ月公演してたはず。犬は、そのそばで、じーっとフセをしている。奴も楽しいのかも知れない。こんな緩さも良いかも。
「ホレ、10時の御茶だ!休憩せい。」
ば、ばーちゃん?ここまで?息切らせずに?有難いけど、大丈夫何だろうか。
「若いワタシ♪61歳の人より、一つ若い。なんだなんだ、私の事、無駄に歳食った、ババ~とでも思ってたんか?」
立て板に水のような、滑舌バッチリの台詞……誰に何回言ったんでしょう。
「逢う人逢う人に言われるんでな、軽く20、30人には言ってるな。なかなか、観察眼あるの~だから、大人の思ってること読んじゃってパターンが解って飽きたから暴れてやろう何て思ってたんじゃないか?」
スルドイ流石だてに年食ってない。
「ここのアホどもは、面白いじゃロ。お前さんもアホになってみたいと、思ったろ?」
それは考え中。ところで、毎日ありがとうな。何で、お茶にお新香に塩むすびなんだ?
「汗掻く塩分出るし、お茶はさっぱりするし……」
耳に子声でささやく
「上手く漬かったお新香の自慢じゃーよ。」
ほー
Pm12:01 木曜日 【Kaisya】
もう増やす手順無いだろ~?マッチが3本しかない。
「それで足りなかったら、1本500円で売ってやる。後、かたずけ入れて1時過ぎたら、1分につき100円な。こっち睨んでる暇あったら手を動かす!」
何故か俺が仕切っていた。2人火をつける。仕込み3人。やるど~
「ご、ごめん。マッチ買って良いか?」
「つけられなかったのはショウガねーダロ。いいよ買えよ。」
こっちは、もうすぐ終了。さてどうだ?げーっ、火力が。
「新聞紙丸めて真ん中に、少し火がついた炭を回りに。で、新しいの上に乗っけて、扇ぐぞ!」
んな訳で、俺も混じって火起こし。なんとか時間内に美味しいランチにありつけた。
「ごーかーく。良くできたじゃないか。どーかな?好きになったか?」
「いや…特には…でも作らないと食べられないし…」
「そーだな、大抵主婦そう思って料理してるのかもな毎日。やりたくないことでも、そこを工夫したり、楽しんだり、なんとかこなす。それが、世間の大多数の仕事の定義だろ。」
そーかも。
「ゴーカクなので、名前で読んでやるぜこれからは。一人前の人に、お前はないもんな♪テツノゾミツヨシミズキ一路!」
「繋げて呼ぶな!」
「進化した猿から人に。どうなるかねこの先。やりたいこと見つかると良いな!」
ハー。もしやタマ姉の、思惑どうり?今の俺、嫌いじゃないかも。笑えてるし心から。ここなら良いけど、なー
しかし、ちゃんと名前覚えていたんだ。覚えていたのに絶全然呼ばなかったって……
Pm1:21 木曜日 【工場にて】
あれ?BMがある。え?まさか!
キンカンコツコツ
パシャ!パシャ!
「や~青少年諸君。元気でやってるカイ?って何を?ってツッコミ入れんなよ♪今ハイになってるから。ハハ」
無精髭の中年。デブと痩せ。まるで、回りの評価を気にしない感じ。自分達の世界にドップリ……槌音が3日ぶりに止まる。
パシャ!
「オーイ!アユム、これ、ハメてみて。」
「終わったの?はめなくたって……ホラーピッタリ」
パシャ!パシャ!
「ハハ!今回も良い出来だ。顔…笑っ・……てる」
ドサッ!
「ゴメン。この臭いオッサン運ぶの手伝って。」
ドサッ!
「もう一人追加で。ハーこれで大人なのかね。コイツら。人の気も知らないで、好き勝手してさ!」
酷く呆れてる。
クセ~タバコと脂身の臭いだ。
何で、こんなに打ち込めるんだろう?何で、こんなに純粋に好きでいられるんだろう。たかが仕事だろ?と、思いながら、何で、俺らは涙止まらないんだろう。
スゲー嫌いだった。
対面を気にする大人。熱いんだけど、自分に酔ってる…自分よがりの大人。でもここの大人は………
なってみたいと思わせてくれる、大人達だ。虚勢を張らない。頑張りすぎてない。本当に自然だ。押し付けもしない。みんな受け止めてる気がする。
皆違って、それで良い。
それ実践してる気がする。歯切れがよくて、気持ち良い。
一つ気になること…タマ姉の男はどんな奴?
Am6:29 金曜日 【Kaisya】
すっかりここの生活に染まり、ここの考え方に染まった気がする。こんなんで、ここ以外の人とやっていけるかが不安だ。
「ただいま~これ土産。コーラ!と、何か食いもん」
へっ?この人って……げーっ?俺の他に2人立ち上がって指差して驚く。
「もしかして、田沢 カオリさんではありませんか?」
「…そだけど、誰?」
タマ姉が説明中。
「へ~そーなんだ。バイクちゃんと整備してやってね。ねー♪家のダ~は今日来るのかな?」
バイク好き…イヤ、モータースポーツ好きとても有名。ダート~オンの2輪、オンオフの4輪何でも良い成績の選手だ。しかし、それよりも元男。マスコミの前で明るく陽気にカミングアウト。その後、きっちり戸籍上も性転換した、伝説のライダーだ。元々華奢で、可愛い系のキャラだったので、全違和感ない。それどころか、メッチャ可愛い。2輪の時のツナギのラインもセクシー。
「カオリさんも、ここの住人なのですか?」
「んだよ!私の時の話し方と違うじゃん!訴えるぞ!差別だって!」
「だーってろ!タマ姉!ここに、雑誌に乗るような有名人……イヤ、大ファンです。カオリさん。」
「私だって、元モデルだ!」
「あーだから、無駄良い女なんだ。へー……」
「無駄とはなんだ無駄とは!」
すっかり仲良くなってしまった。うっかり?
Am8:07 金曜日 【畑】
今日卒業する豚1頭と、鳥3羽がいる。ここの子供達とのお別れは、夕べやってたらしい。つまり、殺されて、肉になるのだ。豚は流石に近くの屠殺場で処理される。鳥はこれから……
「お疲れ。ちゃんと最後まで食べるから。」
と、2羽手慣れた感じで、首と、脚の血を切って、血抜きをして吊るす。
「さて、やれよ。そんな嫌そうな顔してないで。命を奪ってみろ。誰かにやってもらってることだけど、肉を食う為には、しないといけないことだ。」
短い変わった形のナイフの柄を、こちらに向けるじいさん。
「野菜だって生きてるぞ?でも刈り取って食うよな?人は、命を奪わないと生きていけないんだ。いただきます、良い言葉だろ?日本語以外でこの言葉無いそうだ。ほら、これも仕事だ……」
自分の手の中で、暴れている生き物。思いきって首を、脚を。押さえているツヨシも固まった。初めてではないはず。もっと小さい頃に、虫とかカエル、殺してるはず。無邪気すぎで、遊びで殺していた。でも今は……手に生ぬるい鮮血このまま染み込みそうだ。
あの外人3人は初めて人殺したとき、どう思ったのだろう。
「ごくろうさん。どうかな?何か考え方変わったかな?」
「ああ、ハンマーで、頭叩かれた気がする。食材大事にする。生きてる者大事にする。」
「そっか。これも、屠殺場で処理される豚も、口に入るのは、2週間後だ。食いに来い。」
価値観変わった気がする。
Pm7:07 金曜日 【Kaisya】
「お帰り~トキ!」
飛び付いて、肩車の顔の見えないバージョン、つまり顔に抱きついてる。でもこの男そんなんされても、微動だにしない。普通首の骨折れるだろ。この華奢な体の何処に、そんな筋力、能力が有るんだ?
タマ姉がこんなに無邪気になれる奴……気に入らない。
背の高い男二人に、あーこっちの人がカオリの好い人か。確実に人種が違う。このちっちゃい子は?後、色っぽい女性が一人……
男がタマ姉の、綺麗な太股を、タップしてる。
「ッ酸素って有難い。ただいま~元気……だね……ところで、この青少年達は?」
げーっ?広域警察の署長に、一課の刑事? で、タマ姉の男は、役場ねー。
「ハーッハ!どうせ、タマを甘くみて悪さしようとした、近所のガキどもだ俺はな~」
スゲー腹に響く声。怖いやっぱり刑事だ。一線の。迫力が……
「お前らみたいの大好きだ!ハーッハ!カーイーなー」
3人ほど無理矢理抱きつかれている。もう一人の良い男が
「ほら、いやがってますよ。本当自分勝手というか、人たらしというか、離れなさい。ごめんね。悪い人じゃないんだよ。」
妙に腰が低い。
「なによっていに。速くご飯かビル」
「それを言うなら、"なにやってるの?速くご飯食べたい。でしょう?ミヤ」
「そうそう、エリママかしこい」
綺麗なストレートの、ボブみたいな髪型の、頭を、グリグしている。今日のメインはカレーだ。ほぼほぼ俺たちが作った。この豚肉も、2週間前には、この世にいた豚の肉だ。野菜だって、じいさんや婆さん…ここの他の人が育てた野菜。それを知ったら、感慨深くなった。
後、母や父の事も。食事作ってみて、洗濯してみて解ったこと。やるのがきつい仕事をして解ったこと。わりーことした。帰ったら、伝えたいことが有るんだ。
てかここにいる人数作るの大変だったんだから、旨いって言えよな♪
「そーだ!タマコイツらレンタル!明日良いか?」
と言い出したのは、刑事の、マナブさん。
「荷物持ち、タンデのバイクも1台持っていって、脅すのも良いな~。小さいコース1日借りたんだ。CR-X目一杯踏みに行くんだけど。」
てな訳で、サーキットへ

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