被写界深度 09

《2020年4月》
今日も今日とて、イイコ演じてる。
最近は、スマホに手が伸びる回数が減っている。
原因はこの子?
戸籍上は男。ハートは女の子。で、可愛い女の子が恋愛対象という、複雑な"森川みさき"先輩のせいだ。

図書室の住人。職員のボランティアしながら、司書を取る気らしい。ついでに大学6年生……
「みーずき、今日もパフェいこーよー♥」
気に入られたらしい。
まあ、パッと見は男の子だし、かわいい系だし…でも、ヒゲない、のど仏ない。不思議な生命体に出逢った感覚で、遊び始める。みさきに気に入られたという事は、可愛いのか?私は……
一緒にいると、私が年下なのに、お世話したくなる。抜けてる所が多すぎて、ツッコミ入れて手を貸してしまう。男役を私が、してるみたいだ。一人っ子の私に、こんな特性が有るとは思わなかった。

「ま〜たムサシいくの?マジ63.4㎝あるよ。おとといチョコパ食べたばかりじゃん。」
じーっと懇願の目のみさき…
「ハイハイ、フルパでムサシ行きましょう。」
「はー だから好き!みーずき!」

飛びつくな!絡まるな!歩きづらいだろう。先週見つけた"喫茶店山茶花"非常に居心地が良いのだ。ここで、並んで座って読書デート。
デート?一緒に居て楽なのだ。みさきに告白された時は、驚いた。
「女っぽい?学術的にはオス。付いてるし……ね〜ぇ。恋愛対象も女の子。
でもね…自分〜男と思った事、無いんだよね。親に言っても、母は泣くだけ、父怒鳴るだけでさ、自分達の子供なのに、理解しようとしないのさ。女として、女の子と付き合いたいのに…んで、みずきが好き。」
唐突に言われた。私はみさきの事よく知らないから、お友達からという事で、現在に至る。
何でも話せる。……気がする。どことなく親との距離が似てそうで。
世話焼きは私なのに…色んなこと吐き出し合って、2人して心のバランスが取れようとしてる。相互依存……そんな言葉もふとよぎるが、解ってもらえる人がいるのは、嬉しいのだ。
カランコロン
「…らっしゃーい♡」
やる気があんだか無いんだか、小ぶりの女性がこっちを見て挨拶。〔"ミヤ"店主見習い〕と、胸のネームプレートに書いてある。他に店員いないのに、見習いも何もないじゃん。

「美人2人はいりまーす。常温2つと、
ムサシフルパでね。」
「はいはい。オネー様方BOX空いてる。今日は何時間?〔ラブホの休憩かよ!〕ってツッコミはもういいよ。」
最近の常連なのに、とてもフランクで、優しい。ベッタリでもなく、大声で呼ばなきゃ来ない遠さでもなく、猫の距離感の接客?気持ちいいのだ。
ミヤには、女性同士の友達と写ってるんだ。スゲー見る目有る。若いのに……
《10に続く》

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?