no.00-01(番外編)


「ね~ね~あれ見て!知ってる?」
「イヤ、知らない。」

はー。

親友から恋人…そう恋人になった。口数少なく、特にイケメンでも無い。愛想も悪いし、身長も私と同じ……ヒール履くと追い越すので、最近はベタ靴ばかり。
なんで好きになったのでしょう?
まあ、優しい。
まあ、嘘つかない。イヤつけない。
まあ、好みの香り。
まあ、私がいないと、と思わせる。
と、非常に曖昧だ。
「オレな、オレさ、オレはー!えーっと、分かんだろ!だあらだ!……そのー」
なんて訳のわからん告白を、ニコニコして、30分……我慢して聞いてたけど、流石に珈琲冷めて、だんだんイライラして
「ハッキリ言えよ!好きなんか?」
と逆ギレしつつ、この時点で、申し出は解っていて、もう早く返事したいのだ。今は一言が聞きたくて
「ウン……イヤ、……はい。」
「返事言い直さんで、あ~真面目さん。一言、二事さ、母国語で話さないといけないことあるでしょ?」
「そうなんだ……言わないと……んー」
ズズズっ。冷めた珈琲を、一気に飲み込む。こんなタイミングは、同じなのにね。
「すいません!ホットお代わり2つ……」
げ!汗かいて…今、秋ですよ。気持ちはわかってあげよう。でもここまで来たら、聞くまでは。
「ありがとう……だから~なっホラー」
かちゃんかちゃん
「お楽しみ下さい」
背が高くて、顔小さくて、可愛い!ココのたまにいる店員さん。いい匂いだし。でもカウンタ〜の向こう側、あの美人サンのなんだろうな。雰囲気で分かりますって。
って、コイツの言いたい事ぐらい、分かってるんだ!ただ、コイツの、口から聞きたいだけと、人睨み。
すると、イキナリ直立不動?
「おら…お…オレは、お前が好きだ!!どうか、け…けっ…婚して下さい。」
ポカーン
つい口に出そうになる。ポカーン…
「あのですね、その言葉の前には、何か無い?」
えーって、顔して真っ赤になって、あたふたしてます。
ポンッ! スゲー!生の人のポーズで、初めて見た。『気が付いた!』ってポーズ。あー寄席で、見たけど…コイツが目に前でするとは……
「指の太さ、いくつ?」
諦めました。スキ聞けたから良いか。しかしデリカシーの、欠片もない。太さと、聞くな!太さと。サイズと言いなさい。この辺から教育しないといけないのか?
まあ良いや。そのうち言わせてやる。コレから長いお付き合いにするのだから。

「なによ!まだ内容言ってないのに、カブるように、知らないなんて!」
思い切りジャケットの裾引っ張る。引き寄せて、腹に一発お見舞いしたい気分。
「いや…あのー僕あなた知りません!」
ん?聞いたことのない声?
あー
「ママ〜!なに若い男ナンパしてんだ!」
「…なん…わか…ちてんだー!」
思いっきり腰を曲げて、平謝り。笑って許してくれたけど、恥ずかしかっちょわりー!ユンボで穴掘ってでも、穴に隠れたい!
「お前何処行っても迷うから、ちゃんとスソ持ってろって言ったろ!」
「…どこ…チャン…てろ…たろ!」
アイツの肩には、私とアイツに似た子が、言葉のモノマネをして、これ以上ない笑顔で見下ろしている。
「何よー夕べはゴキブリから逃げてたくせに!」
本日結婚記念日。でも、遊園地行ってご飯食べて帰る。マイホーム持ちたいので、緊縮財政。
「ハイハイ分かりました。行こう山茶花。安いし旨いし、暖かいし。トキと、タマは滅多にいないけど」
告白されて、お客さん達も、マスターも、タマも、トキも、みゆきさんも、店中拍手してくれたあの場所だ。店を思い出すだけで、良い香りが漂ってくるよう。
オヤ?直立不動?肩に乗ってる者はありますが。
「まなみさん。今までありがとう。コレからもよろしくお願いします。待たせてゴメン。僕は、誰よりも貴方を愛している自身が有ります。」
馬鹿ですね。やっと言いやがった。
「ふん!気がつくの遅いって。」
目の前が歪んでるし。

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