no.04-03

???? ??? ????
あれは、就職先も決まって、バイト代でフランスへ一人で卒業旅行の時。最終日にバーに飲みに言ったのがまずかった。柔和な老夫婦が、にこやかにボクに近づいて来た。相手はカタコトの英語と”アリガト“と“モウカリマッカ”。僕はカタコトの英語とフランス語。
  最後の夜と言うこともあり、羽目を外しすぎた。”自然保護の署名活動してる。日本人も書いてくれ。Kannjiもみたい“などと言われついサイン…落ちる瞬間に聞いた言葉が、”モウカリマシタ  アリガト“フッと記憶が…
  「起きろ!さー来るんだ!ジェイクの奴、良いガタイの日本人upしたじゃないか。酒クセー。ホラコイ」
  黒スーツにサングラス。黒いレインコートの3人組。
  「貴様は、本日より外人部隊に編入された。逃亡すれば銃殺だ。もう待たないぞ。ホラコイ!」
  「人違いだ!私は知らない。今日国に返るんだ」
 バサッと間の前に出される一枚の紙。僕の字、隣に漢字も…
  「騙されて、売られたんだ。あの夫婦はあれは仕事なのさ。月に2人やれば、ひと月喰えるそうだ。サイン…在るだろ。3年は貴様の命、体は私達の物だ。半年間基礎訓練。訓練中死んでも、それも契約内だ。」
 2人の男に腕を捕られ、連れて行かれる。
訓練中から、地獄だった。2週間に一人のペースでメンバーが居なくなる。僕のチームは、生き残った者は9人だ。チームで共に生き残ったのに、誰も口を利かない!ぺーぺーの歩兵は、YES!SA-かNo!SAしか言わない。それ以外、音を出さない。いびきまで矯正される。人が死ぬ瞬間も、死体もすっかり日常。僕も、徒手空拳の訓練中、2人殺してしまった。もう一人殺すと、訓練所タイ記録だったらしい。
 2年半…国に帰る事が支えだった。兎に角どんな事しても、生き残ろうとした。味方を裏切ったり、食べたり。死体の山の中で、3日過ごしたり。自身の尊厳より命が一番だった。
そして壊れた。
より生命の本質に近づいた…そう思いたい…”敵は消す“とか、“喰うために殺す”笑顔は忘れた。涙は眼球を保護する物。怒りも無い。哀れむと殺される。ダンダン体の動きがキレてきて、銃口の動きが読めるようになり、弾に当たらなくなり、白兵戦が得意になった。素手で、人を壊せるようになる。
   そして、面白くなってくる。体に意識がなくなる。少し上から自分を見てる、PSのコントローラーで動かしている感覚。ゲームをやっているようだ。ライフを温存したまま、大金を退役金に貰い、3年ぶりに祖国に帰って来た。
  3年の記憶を、退役する物は奪われるらしいが、上手く演技してカワした。筋肉馬鹿と思ってるから、詰めが甘い。
  戸籍復活して、郊外に一軒家。母とノンビリ過ごした。が、仕事がしたくなる。アルバイト、パート等、大学は中退、一流企業内定を蹴る。表向きコレだから正社員には程遠い。
 戦場では、ん百万ん千万円ん億の物を、使わせて貰ってた私にとって、時給750円は期待されてないようだ。故に、ドンドン首になる。
 そして、夜の街の、アングラな人たちと遊ぶようになり、抗争に巻き込まれ、昔の感覚を、昔の仕事をするようになる。そんなある日、血まみれになった、私を見て
  「イヤァ!!!お前まさか……モドッテオイデ…」
 年を重ねた母が、精一杯僕を抱きしめる。軽いし、痛くもない。
  「産んでくれてアリガト…母さんのせいじゃない。ボクが変わっただけ。これしか僕は出来なくなった。帰るよ戦場へ。サヨウナラ」
 この日以来、母には逢っていない。
  モウドウデモイイ  カエリタイ

PM6:09 木曜日   〖 在るビルの前 〗
 一般から電話があった。暴力団のビルから銃声があったそうだ。俺らは、拳銃携帯命令のせいで、腰や脇の下が重い。オレこれ苦手。年に250発以上、拳銃の訓練が義務づけられている。それがなきゃ撃たない!イツキも嫌いらしい。どうも俺らは少数派で、撃ちたいがために職に付いた奴もいる。嫌いなタイプだ。かといって、”私は市民のために“これもヤダ。だったら、議員になれ!ボランティアしろ。
 何となく、自分の正義のためが好きだな~。今日は、灰皿持ってるぞ……
  「なあイツキ。大男いたら…やっぱりやり合いたいのか?今日こそ、腰の物使おうぜ。あいつヤバいよ。素手だぞ?肉千切ってあったり、手足もいであったり。なあ」
  「ははは  怖くなったら逃げますよートキじゃ強すぎて、自分の力計れないんでスよ~署内じゃいないし~」
 と武者震いのイツキ。素人の目にも気合いが迸っているのが解る。
  「あのな、俺っちよ~3年前に……」
  「知ってますよ!コンビの原さん、独りで現場に突っ込んでいって、お亡くなりになったんですよね。あれはマナブさんの」
  「せいなんだ!俺がちゃんと話し聴いて説得できていれば…より、もっと信用されていれば…」
 「信用してますよ~だから少しだけ!ね?御願い」
     ザーピピッ
 各位に告ぐ。620に作戦開始以上
     ピピ
  「わーったわーった。好きにしろ。行くぞ2階の扉まで!」
          ダダダザザスッスッ
 入り口に近づくほど、足音気にしてゆっくりになる。やべー息があがる!何だよてめーらもう”ととのいましたー“。なのかよ~年かな?やっとこ、息がととのい始める。
     ドッ ドッ  バキンッ  ガシャン!
 ここの急襲部隊は、珍しく、93Rを使っている。小回り利くから、バースト出来るから。の理由だそうだ。部屋の灯りは付いてないが、表の看板のネオンで、部屋が見える。ゴロゴロ人が転がって居る。
  「ねー君!その子下ろしてやって。まだ若いんだ!本気で付き合った女の子がまだ居ないんだって。可愛そうじゃない?ねー僕と手合わせしよー!ほら下ろさないと出来ないぞ!ボクが勝ったら、大人しく捕まって!君が勝ったら…ココの人誰も立ってないでしょ~!逃げ切れる。どう?」
  「イツキ!抜け!」
  「ヤダナーマナブさん、時間くれるって」
  「言ったけど撤回。あの目を、正気に戻すのは時間がかかる!」
 と、いつきが大男から、目を離した瞬間、俺とイツキ以外、銃を持つ手に、何らかの傷害を与えていた。うずくまる9人。
  「待ってマナブさん、まだ、殺されてないでしょ!署員もあの野郎も、説得させて。」
 言い終わるや否や、ほぼ瞬間移動に近いような脚裁きで、大男の足元に、膝裏を左右蹴り!がくっと落ちたと同時に、右腕を決める。顔は床にキスされ、左腕は、左足で踏んでいる。
  「ねー!さっお話しよーかー。ウーワッすげー力」
  左手から、左足を振りほどく。と片手腕立てのように体を起こして、イツキをふりほどく。大男は両手で、右の手足を捕まえに来る。当然、イツキの方が、動きは速いので、捕まらなかったが、着地を間違え、死体を踏んで転ぶと…
   ぎゃっっつ  パンパン!   ガシャーン
 一気に、ことが起きる。イツキ掴まれ右手右足骨折、と同時に俺発砲2発窓から、大男逃げる。ココ4階……おっと無線
  「被疑者逃亡、東方面追ってくれ、田沢2発発砲内1発ヒットした模様。救急車要請!捜査員10名負傷!繰り返す!東だ!わりー逃がした。デケー男だ。俺の弾一発食らってる。お願いだ!救急車速く、御手洗が、意識在るけど、手足握られて砕かれた。上手くつながんねーと…速く救急車を…」
 最悪の日だ。狭い部屋に、ゴロゴロとあーこの子…大男が窓から出るとき、頭踏まれたか。俺達、誰も救えねーなー
 バタバタと、立ち尽くす俺の脇を、捜査員が入って来る。
 「エリちゃん…」    パシッ
  「甘えるな、お前が悪い。すぐ発砲すれば…いくら、部下に頼まれたからって、部下の言うこと聴いてばかりでどうする?コイツ付けるから、捜査に行け。仕事で取り戻せ…長ーいコゴトはそれからだ。」
  「はい!…てコイツ一番俺とそりの会わない、パソオタク」

〖同時期の向かい?のビル〗

 「ふー当たって良かった、ココ遠すぎるでしょ」
 プロポを持ったリョウジが、つぶやく。
  「へー御手洗さん強いんだ。」
 グレフルソーダ呑みながら、緊張感のないカオリ。エンジンラジコンヘリにカメラと、炭酸ガス銃搭載。で、窓破って飛び降りる瞬間に髪の毛にプスッとGPS。頭洗ったぐらいじゃ落ちない。
    ジリリリリン
  「トキ?良いよ付いてる。無理スんなよ。」
  「あいよ、久々に、マジになんねーとな。カオリ拾ってくれ。」
 やっぱり、強いんだ。あの男。戻ってきたヘリのタンク…空だ。ツイてる。きっと大丈夫!トキも…
PM10:23   木曜日   〖太平洋に面する岬〗
  「誰も来ない。てか世界中で、動いてるのは私達だけさ。じっくりやろー。とりあえず私が死んでも動き出すと思うけど…見たこと無いから解らない」
  「おまえは?」
  「君のお母さんに、頼まれた。止めて。殺してって」
 海に突きだした灯台のある岬。ココから20分も車で走れば、この男に用意された、タンカーがある。ここから出国の予定を無理やり伸ばして貰って、ココに来てもらった。。
   「さっきの刑事と言い、今日は不思議な日。ボクと話そうと…」
  「私は、違う。お前を穏やかに終わらせるために来た。私に似てるしな。私も元傭兵。自分から死ぬために入った。私はこの国で、親代わりの人と友人に出会えたお前は、一人だったんだろ?」
  「あの刑事にも、お前にも速めに会いたかった。」
  「甘えんな!探さなかっただけだろ?さて、この国では、やりすぎた。お前のお母さんの依頼どうり」
 何年ぶりだろう、構えをとっている
  「やらせてもらうよ」
フッと、男の胸元に侵入。肝臓らへんにしょうてい一突き。寸ででかわされ、その手を握ろうとする。それをカワし元の位置に。
  「大体解った。じゃあ、このくらいは?」
 フッと、今度は気配まで消えてる。右左と、素早く確認してるが。私は、上…男が気が付いたときには、かかとが、右の鎖骨を折っている。ガクッと、落ちる体でも、声は出さない。そう訓練されて居るから。
  「もう自由に、右は動かない。そして」
 見えない!気配も殺気も消えてて、移動に目がついて行かない!左の鎖骨も砕かれる。
  「これで、ゆっくり話せるな。怖いもんその怪力。それを奪えば、ただのデブだよな。」
  「無い。話すことなど。」
  「そっか…○○教官殺したくなかった?」
  「………?」
  「お前と私は同じなんだ。でも、私はあのリアルな地獄には、戻りたくない。…何となくお前の帰りたい気持ちも分かる。ここは見た目平和で、平等に見えるけど…私達には、差別的で、複雑なヌルい地獄だよな。最初の3カ月は、私も慣れなかった。」
  「上品ぶってさ~学歴、容姿、という武器とか、人付き合いが、広く薄く立ち回る方が有利とか、めんどくさい。此処は、ボクの場所じゃ無い。」
  「そっか、母ちゃんの為に、やり…」
  「治さない。この国に居ても、終身刑か死刑。だったら好きな場所で、死にたい。」間合いを詰め、
  「そっか…」
  「ココでも良い。解ってくれた君になら、やられても良い。君強いし、さっきワクワクした」
 ニヤリと、目を反らさずに立ち上がる。構えるだけでも痛いだろうに。よく見ると、足から出血。
  「当たったんだ?」
  「痛くない。気持ちが、痛みを凌駕してる!負けてもこれのせいじゃない!」
 スウーッと、素早く間合いを詰め、精一杯のコンビネーション。全部よける。覚悟が出来てる顔だ。それじゃ~
  「終わりにしよう。考える時間もあげよう。」
 と、見えない移動から、右左の脚を折る。最後にみぞおちにしょうていを、この国に来て始めて目一杯入れる。体が、20メートル下の海に向かって落ちてゆく。最後に、優しい笑顔を残して……
 落ちる寸前に、時を動かす。じゃないと、海に帰そうと思った私の心意とはとは違ってしまうから…
  ヤッパリ、嫌な感じだ。救えなかった。

????   ???   ????
 “オギャーオギャー”
 生まれたての赤ん坊…看護士さんが、ベットに足を固定された、女に見せに歩く。
  「良かったね~元気よ~良く来てくれました。何でも見ていってね!」
 ベットの女が、笑いながら
  「何それ、大体おめでとうとか言うもんじゃない?」
  「アメリカ流よ!むこうだと一言”Welcome”なのよ。それに感動してさ!私は、そう言うの。嫌?イヤなら普通に…」
  「ううん…それ好き…名前ね‥“希望…のぞみ”にシタの」
 あっ…母さん…じゃーあれはボク…  ブワッと涙はでるが、頬を伝わない。ここは、まるで羊水の中のよう……浮遊してる感じ。僕は、望まれて産まれてきたんだ…僕の殺してきた人達もきっと……僕は…僕は…じゃあ、戦争って……一人一人は望まれて産まれてきたのに、優しいのに、何のために、……解らない。気にしたことがないから。今は、殺してきたことを後悔している。アリガトー!もう一人のボク。気付かせてくれて、止めてくれて。君のこれからを、アンジているよ。
 穏やかな顔をして、光から遠ざかる。闇へと……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?