no.08-03

Am7:36 土曜日 【山の会社にて】
あらータマがはしゃいでる。
今週は、土日休業して山に来たオヤジとみゆきさん、とその服の裾に引っ付いてる…ミヤ……
山に来たのはこれだけではない。
「御主人、何処に設置しましょう。」
「ネーネートキ!マスター!何処にする?どこが良い?嘘みたい!」
ドードー落ち着け。山茶花にある、あの科学工場のような形の硝子細工…水出しコーヒー機具だ。設置しに来たのは、山茶花の器具を作った工房と同じ、職人も同じ。二人いる。誰が見ても親子だ。と少し離れもう一人にこやかにジーっとたってる。これが、マスターの考えた、タマへの退職金代わりらしい。
「棚の代わりに、アンティーク調の物入れ有りますから、どこでも良いですが、日の当たらない静かなところが良いですね。」
このセリフの時に、にこやかにたってる人が、深々と会釈する。ふーん木工職人なのかな?カウンターの一番端の、壁際に決まった。
「アノ~床に足を固定したいのですが、内装をやられた棟梁さんと御主人は?」
「オナー私!私!私は良いよ!おやっさんは?」
「しかたねーな~…んだよ!これ来るならオレっちが造ってやったのに…」
まーまーと、弟子にたしなめられ退散する、素直なおやっさん。
「はー恐縮です。でも、見てやってください。家具職人も棄てたもんじゃ有りませんよ。」
と、エアキャップと白い保護シートをおもむろに剥がす。足が四本鉄製で、精銅製の様な加工がされている。楽譜の記号の、フォルテのように滑らかな曲線を描いている。その上に、英国の家具調の形なのだが、塗りは日本の漆のように、濃い藍色…黒といっても過言ではない位藍色だ。引き出しは2段で5つ。
「ご免なさい。引き出し良いですか?」
と言いつつ、乾いたタオルで手を保護して、引出しを引いて、すぐ押し込む、すると他の引き出しが---飛び出た。
「うわー高級タンス並みの精密さ。」
「木でこれだけ気密性高いと、ほこりはおろか、湿度の管理までやってくれます。これが私の木工加工の特長です。ただ趣があるではなくて、機能も追求します。使ってみてください。」
水出しコーヒーの器具が上に乗る。ありゃ棟梁まで引出しをいじってます。はーって感心してるし。
「ヤッターこれで山茶花のコーヒーが再現できる!」
と喜んでるタマ台詞を奪うように、
「なんだって?山茶花と同じだって?ここ見てみ?いろんなお客さんのご要望で変更箇所がホレ!こことここ細いだろ?あとここも……」
バシッ
「すいませんこのアホ息子が大口叩きまして。使っていただけばわかります。後はお客様の腕次第。ご自由にお使いください。使用変更も 、修理も責任をもって死ぬまでやらせていただきます。タダじゃないこともありますけどね。」
とイタズラっぽくウインクされた。
「こっちこそ悪かった。同じじゃないんだ。日々進化してるんだよな悪かった。使い倒して自分のものにするよ。」
「イヤイヤ。これにもいってあったんですけどね。完成したら。もうそれはお客のだって。こいつの初めての作品…こっちですけど、…贔屓目に見ても見なくても、良くできてるので、つい感情移入してしまったんでしょう。ホレ!テメーも謝れ!」
「オヤジそれ本当か?これ良い出来か?な~オヤジ」
「バカ仕事中は、親方だろ!後でゆっくり誉めてやるから……」
結局謝罪の言葉はなく、親方にぶら下がって、顔除き混み、誉め言葉をもらおうとしている。その脇でにこやかな家具職人は、棟梁と話し込んでいる。
硝子細工職人は、水面 しずかと息子で見習いのゲン。家具職人は、田中 太郎。まるで特徴のなん名前だが、どうも静かなのに技術には頑固で一本筋のとおった人のようだ。水面さんにも、棟梁にも一目おかれている様なのだ。
せっかくこれだけ集まったので、出来たばかりのキッチンや、設備を使って、こっちも師匠と弟子の関係のマスターとタマでランチパーティーをすることとなった。アルコールありの………
「な~私にも労いの言葉の一つくれないかい?あ~あ、屋上は涼しかったな♪ライフル野郎も以外と強かったしな♪」
こいつ……酒強かったはずだ!酔ったふりして誉めてもらいたそうだ。お忘れの方もいるかも…渡辺秀一郎。元SASで保険屋からの依頼がほとんどの生業の調査員……探偵?で、そこからネタを拾ってティーン 向けの小説の作家……つまりめんどさくて、訳のわかんない、ついでに山がしょうに会ったのか、ここにログ建てちゃった奴だ。
「本当に私が仕事で外国行ってなくて良かったね!いつも連絡3回に1回メール無視してるのに、久々にトキからのメールと思って見たらこれだもん。」
皆に見せて回っている。
『おーい暇?ネタ拾えるぞ!あの国…国交なくて、貴方も行ったこと無いあの国の国民に会えるぞ。これから皆で遊ぶから、いつものビルの屋上でスナイパーと遊んでから、そいつ山茶花に連れて来てくれ。 貴方の被害者の会0009号 トキことトキより 』
「ウソ言ってない。確かにネタの宝庫だった。でもこの最期のコレコレ……私の被害者の会……何で桁が4桁なんだよ~」
そこかよ!すっかり使いっパシリに使ったのが気に入らなかったのかと思ってたのに。
トコトコと近づくミヤ。手を頭に当ててグリグリ!
「よくが…よく頑張りました。ありがと…うございま…した!シュー」
言い終わると、バフっと抱きついている。照れている秀一郎始めてみた。どうして良いのかわからないのだろう、ミヤの頭グリグリし返して小声で、
「どういたしまして」
と言ってまた照れている。はーコイツ黙らすには、ミヤか、素直にめちゃくちゃ誉めれば良いんだ~秀一郎の抗議は、ミヤのお陰で、うらむやになった。
「まず、礼儀として、説明しろ!お前たちのやったこと、全て握り潰してきたんだぞ!面倒くさいったりゃありゃーしない。ほら説明!」
エリリンも付いてきてたっけ……しかもミヤ以外にはずーっと仏頂面で、酒入ったから目も座っちゃって…
「ハイハイ、エリリンには感謝してます。ホントに!あのね、あの子は、……」
かの国の第8婦人になる予定だった我が国の女性と、かの国の最高指導者の間の子だったのだ。
第1婦人に子供はなく、比較的仲の良い第3婦人に子供がいる。第1婦人は、粛正と称して4~7婦人達に子供ができる度に、殺してきた。婦人とその子供を……
それを察してミヤの母は、ミヤをつれてこの国に逃げてきて、街で隠れるようにホームレスをして、暮らしてきたが、この子の母は、心労で勤めていた街の飲み屋から帰る途中亡くなったそうだ。その後、ホームレス仲間がミヤに手を貸して生活していたらしい。
「で、狙われていたと……はーアホらしい。あの国に執着して…」
「てなわけで、彼女は、何処の国にも、戸籍が有りません。で、トキが私に頼んできたの。ま~手がないわけでないけど……エリリンも、あの5人も、何とかしろって私に依するつもりなんでしょ?」
あの5人……あ特殊部隊、私の教え子どもね。
「そうそう、あいつら表だって逮捕出来ないじゃない。今度のこと握りつぶすには。内々で、亡命させるようにはなったけど、警察で非合法スレスレはできませんからね。」
良いながら、クピーっとスコッチを流し込む。こんなとき役に立つ……たよりになるのはキミエだろう。
「わかったわよ。タダじゃないからね!」
「守銭奴イクラぶんどるつもりよ!」
健堅ゴーゴーやりあってる最中に…
「あんたたち一体何者だい?」
「話すと長いな~公務員4人、レストア職人とレーサーとバカ力のタマ。弁護士に日本食の板前、あーここの家族は、調有名な企業のトップだし。さっきすねてたのは、保険調査員件作家。ついでに元正規軍のエリート戦士。私とマスターは、元傭兵。有名女優とその旦那件マネージャーもいるし♪そんな普通の仲間ですよ。誰のせいだか、トラブルが良く舞い込んできますが。」
「オマエノセイダロ!」
全員でハモられてしまった。えー私は違う!

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