課長への手紙 #11

前略

例年になく穏やかな2月ですが、そのせいでしょうか。なんとなく愛について考えたりしている今日この頃であります。早くも脳内に春が来ている私です。

課長はいかがお過ごしでしょうか。

さて、そんな訳で愛。

以前手紙にも書きましたけれど、課長と初めてお会いした時のことです。

私は課長の真剣な眼差しに打たれ、この人のために頑張ろう。やれることは全部やろう。

——と思ったその、それです。

あなたのために私の出来ることはなんでもやりますという(心の)宣言なりスタンスなりは、今にして思うと、つまり、やるべき時にやるべき事をやれなかった今の私からしてみれば、それは「やらないこと」の言い訳にしかならないのではないか。なってないのではないか。と思うのです。

出来ることだけやりますというのは確かに現実的で実際的で、見ようによってはクールに見えますけれど、いささか節電モード的な、及び腰な、予防線を張っているようにも見えませんか。

ですからこの問いの正解は、おそらく、あなたの望む事を私は全部やります。全力で全部やります。ではなかったか。

スキルに差のないAさんとBさんそれぞれに1000のミッションが与えられたとして、Aさんは出来ることをやります、Bさんはそれ全部やります。全力で全部。

結果的にクリアできた数がAさんとBさんとで大差なかったとしても、実際大差ないだろうけれど、Bさんのその無茶で無鉄砲で真っ直ぐな、痛々しくも青臭いその情熱が、なんの形にもならず結果にも結びついていないけれど、それこそが、その余剰こそが愛なんじゃないか。

 (言うまでもなく仕事上はなんの意味もないのだけれど)

だから私のあの決意なり覚悟なりは、実は少々愛を欠いていたんじゃないか。足りなかったんじゃないか。

なんとなくそう思うのです。そう思っちゃうのですよ。悔しいけれど。

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