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死刑制度を考える

こんばんは。今日もお疲れ様です。

重たいテーマですので、タイミング的にいつアップしようかと実は悩んで
いたのですが、日本では新年度を迎える今日にしました。

下記は、2018年9月9日に書かれた記事なので、少々古いのですが、世の中の議論はそれから少しも発展してないようですし、朝日新聞にしてはいい取材元に取材していますので、ご紹介します。

1.ロバート・キャンベル東大名誉教授の意見

米国生まれで、国文学研究資料館長を務めるロバート・キャンベル東大名誉教授のご意見が紹介されています。

日本の倫理観には、「命を大切にする」という考えが脈々と受け継がれて
います。被害者や遺族の痛みを他人事と思わず、思いを寄せ、共感する。
日本社会はそうやって悲惨な出来事を乗り越えてきたわけですから、「凶悪事件を起こした加害者は命をもって償うのが当然だ」という道徳観も、正面から否定することはできないと思うんです。
 ただ、私自身は、死刑が廃止に向かっている海外の考え方に整合性があると思います。冤罪(えんざい)の問題や、死刑が犯罪抑止につながるデータがないということに加え、民主主義国家が人の命を奪うことにくみすることができません。
日本の死刑執行の方法にも違和感があります。すべてベールに包まれて
いて、清潔に、においもなく、きれいに処理されていく。来日して初めて
知った時、とても驚きました。執行の直前、死刑囚の目を布で覆い感覚
器官を一つ奪うこと、絞首刑そのものの残忍さも無視できません。
 米国では執行に記者や被害者の家族、時には加害者の家族も立ち会い、
何が行われたか、詳細に報道されます。命を絶つということが可視化され、報道を通じて知ることができます。
 執行の現実を直視するため、日本でもまず情報を求めることが大事だと
思います。死刑制度に賛成、反対のいずれの立場であるにしても、議論の
ための情報があまりに不足しています。
 情報に触れた上で議論すれば、少し変化が生じるかもしれません。被害者の痛みに共感する気持ちと、死刑制度に反対する考えは、両立するものだと思っています。

2.各国の死刑制度は

次に、一橋大大学院の王雲海教授が各国の死刑制度に言及しています。

日本は道徳や義理人情など、文化的価値観を共有することを重視する社会
です。その価値観から大きく逸脱する殺人などの凶悪犯罪を起こし、かつ
反省の態度がないなど、例外的なケースに限って死刑を適用し、執行して
きました。情報公開に消極的なのも、「隠す」というより、死刑囚やその
家族らへの配慮のためでしょう。
 中国は日本と違って、政治的な理由で死刑を維持しています。対象となる犯罪は、殺人などだけではなく、麻薬の製造や販売、公務員の収賄、横領、経済犯罪も含まれます。麻薬犯罪に厳しいのは、アヘン戦争で英国に敗れ、列強の侵略を許した歴史が影響しています。また、国家として「中国共産党こそが人民の利益を守る」という立場を取っているため、公務員犯罪は
もってのほかです。こうした犯罪に強い姿勢を示すことで、一党支配の
正統性をアピールしているのです。
 中東や東南アジアでは、宗教的な要因が大きく影響しています。イラン
では不倫が、マレーシアやシンガポールは麻薬犯罪が、それぞれ死刑に該当します。
 一方、欧州では政治家主導で死刑廃止が進みました。背景には、「我々
こそが世界に人道主義や法の精神を打ち出し、広げた」という強い自負心があります。欧州連合(EU)が存置国を非難するのも同じ理由からで
しょう。ドイツはナチスによる大量虐殺への反省から廃止となりました。
注意したいのは、死刑を廃止・停止する国の一部で、他の刑の厳罰化が
進んでいることです。終身刑が増えたり、性犯罪者を対象にGPS(全地球測位システム)による監視制度を導入したりしています。単に「存置か廃止か」を議論するのではなく、「人道的な刑罰は何か」という視点が必要だと考えます。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本によると、2017年末現在、198カ国・地域のうち142カ国が死刑制度を廃止・停止して
います。経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国で制度が残る
のは日本と米国、韓国の3カ国だけで、韓国は1997年の執行以来、停止しています。米国でも半数近い州が死刑を廃止したり、停止したりして
います。米国のNPO「死刑情報センター」によると、米国内の執行数は
99年の98人をピークに減少傾向にあり、17年は23人でした。
 制度を廃止する主な理由は、冤罪(えんざい)だった場合、取り返しが
つかないことや、どんな理由であっても殺人を肯定しないとの考え方から
です。英国は執行後に真犯人が現れた事件を受け69年に廃止しました。
欧州連合(EU)は「生命の尊重」との基本理念から、死刑の廃止を加盟
条件にしています。
 死刑制度の維持が、凶悪犯罪の抑止につながることを示す証拠が少ない
ことも、廃止を進める要因の一つとなっています。アムネスティによると、制度廃止国で「凶悪犯罪が増えた」との報告はないそうです。
 一方、制度を維持する国はアジアや中東に多く残ります。アムネスティ
によると、昨年は中国、イラン、サウジアラビアなどの国で執行が多かったとみられます。ただ、中国は死刑に関する情報がほとんど公開されて
おらず、実態が不明とのことでした。

死刑制度は、その国の歴史を背景に運営されている、ということですね。

3.私の意見

ロバート・キャンベル東大名誉教授も指摘しているように、冤罪の可能性が完全に排除できない以上、少なくとも死刑の適用は慎重に扱わなければ
ならないでしょう。

そして、凶悪犯罪を実行する人間が、我が国に死刑制度があることをもって犯罪の実行をためらうというデータもない以上、犯罪の抑止にはつながっていないことも重要です。

ちなみに、カソリック系のNGOが主催する「シティズ・フォー・ライフの日」運動というのがあり、その昔、トスカーナ大公国のレオポルド1世が
死刑を廃止した日にちなんで、毎年11月30日が活動日と決められています。

また、10月10日は「世界死刑廃止デー」と定められています。

こうした世界の潮流も注視していきながら、議論を尽くしていかないと
いけないでしょうね。


では、また。

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