何清漣★習近平の「ゲーム制限」の考えの裏にあるもの 2021年9月2日



 米中両国の政治的変化を理解することは、世界のこれからの潮流の方向を知る鍵です。中国人にとっては今米国で起きている変化を理解するのは困難ですが、中共が今何をしたがって、何をしているか、習近平の政治路線が「紅色回帰」だということはわかっています。違うのは、民間は「大変だぁ」だと思っていますが、政府とその宣伝機関は「大変結構」。西側は自分のことで精一杯で、十分な注意を払っていません。

 ★「原点復帰」は「毛沢東時代への回帰」

 中国人が経験してきたのは毛沢東時代と鄧小平時代という二つの時代です。

 習近平の10年統治の特徴は、鄧小平時代の開放と社会生活に対する比較的弱いコントロールから、毛沢東時代の体外的な門戸閉鎖、社会生活に対する統制強化で主として中国人の娯楽と暮らしに対するものです。

 この種の統制はとっくに始まっています。人民ネット8月29日に転載された「誰もが感じる、大きな変化」という記事は人民日報の社説ではなく、李光满が習近平統治下の一連の動きを串焼きのように繋いだものででした。

 これは、ちょうどタイミングよく中南海の支配者たちの「痒いところに手が届くような文章」になったために人民ネットに転載掲載される「光栄」に浴したのでした。

 この記事は中央政府の一連の構成措置や政治行動の要点を「三つの回帰」として要領よくまとめています。

 「中国は今、重大な変化の時を迎えており、経済、金融分野、文化分野、政治分野全てで深刻な改革が起きている。これは資本家集団から民衆への回帰であり、資本中心から人民中心主義への変革だ。この深い変化は中共の初心への回帰なのだ」

 これは「人民日報」が言いたいことと同じだと言えましょう。しかし、筆者の身分といえばせいぜい、体制派の下っ端程度なのに、その政治的な「串焼き」文章を使って「人民の求めているもの」だと示したわけです。

 この文章は、中国が「虚(バーチャル)」から「実(リアル)」にシフトするために、国民経済の公と私権の比重を変更へ喝采を送っています。

 例えば「我々は、資本マーケットでの大資本による支配、システム基盤の独占、悪貨が良貨を駆逐する現象に打撃を与え、資金を実業、ハイテク企業に、製造業に向かって流れるようにする。『共同富裕』とは普通の労働者に社会の富を分配し、さらに多くの収入をもたらすのだ」と書いていますが、これは中共の宣伝記事からのうまい抜粋だと言えるでしょう。

 中共の最新の敵に対する「正しい理解」ではこう書いています。
 :「米国は今、中国に対してますます激しい軍事的脅威となっており、経済、ハイテクの封鎖、金融攻撃、政治、外交での包囲を行い、中国に対して生物兵器、サイバー戦争、世論戦、宇宙戦争を行ない、中国国内の第五列を通じて中国にカラー革命を起こそうとしている。もし、このような時に、我らが、反帝、反覇権を大資本家たちに頼って、米国の『甘いミルクで麻痺させる』戦略に迎合すれば、我らの次世代の青年から力強い男らしさを失わせる羽目になる。そんなことになれば我々は敵が来るより前に自分たちで倒れてしまう」。

 様々なネットゲームは「痺れさせる甘いミルク」に数えられているといえましょう。

 しかし、それを米国が中国の若い世代を腐らせようとする戦略だというのは、米国に対して不当というものです。米国の青年たちの「甘いミルク」の方がはるかに中国の同世代より多いのですけれど。

 ★習近平は「後継者を救い」たい

 毛沢東は後継者教育において、常に若者に「国家の大事に関心を持ち、プロレタリア文化大革命を最後までやり遂げること」を教えていました。文革時期には、多くの紅衛兵は、あまねくアジア、アフリカ、中南米、オーストラリアに紅旗を打ち立てる理想を抱いていました。

 この途方もなく高い理想は実現はしませんでしたが、ミャンマーでビルマ共産党(訳注;40年間ジャングル戦争を戦った)に入党してゲリラになった人たちは、革命の理想の劣化版に生きたと考えられるでしょう。

 それが、鄧小平時代の改革を迎えてからは、権力と利益の委譲、社会に対する強い統制の漸進的な緩和、社会全体の漸進的な開放という考え方が主流になりました。中共政権下で初めて、中国の若い世代が自由に西洋の思想に触れることができ、改革を志す世代が育ったのでした。

 中共は苦い経験を汲み取って、江沢民は天安門事件の経験を総括し、1969年(天安門事件)世代の青年たちはあまりにも過度に政治に関心を持ちすぎたので今後は、青年たちをもっと娯楽に導き、政治に対する興味を減らそうとしたのです。

 ですから、社会全体の非政治化を推し進め、各これまでになかった様々な娯楽を提供し、政治的な禁止事項を破らない限り、あらゆる娯楽や映画・テレビ作品への規制は前例のないほど最小限に抑えられました。

 こうして20年以上にわたる江沢民、胡錦濤時代を通じて、死ぬまで娯楽を楽しもうとする若い世代が育てられたのです。

 1980年代以降と90年代以降の2世代は、中国が最も豊かになった時代に育ち、学校や家庭生活以外では、インターネットの仮想空間がほぼ主な生活空間となっています。

 「中国ゲーム産業レポート2020」によると、中国のゲームユーザー数は2020年には6億6500万人に達し、「インターネット中毒」は「麻薬中毒」に次ぐ社会的な癌で、中国青少年の1割近くが、身体の健康だけでなく、認知障害が出ていると言われ、多くの親たちが子供のネット依存症をどうにもできないでいます。

 一方、習近平が育った文革世代は、苦難に耐え、ほとんど楽しむことがなかった世代です。今の若者たちの「寝そべり主義」には心底、不賛成で、ネットゲームに現を抜かすのは若者をダメにする道だと考えています。

 国家新聞出版広電総局は、「未成年者のオンラインゲーム中毒を効果的に防止するための更なる厳格な管理に関する通知」を発表し、未成年者にオンラインゲームサービスを提供する時間を厳格に制限することを求めました。(2021年8月31日、18歳未満を対象にオンラインゲーム利用を1週間で計3時間に制限する新たなルールを通知した)

 すべてのオンラインゲーム企業は、未成年者にサービスを提供できるのは、金曜日、土曜日、日曜日、法定休日の毎日20時から21時までの1時間のみであり、それ以外の時間はいかなる形でも使用してはならないと要求しています。

 中国の他の教育関連政策と照らし合わせてみると、習近平は「東が勃興、西は没落」する時代が来た、という判断のもと、「健全な後継者」を育成したいという思いから、ゲーム産業を制限する政策を採ったようです。

 では、エンタメ業界を取り締まる目的は何なのか。

 「文化は世相を表す」ものです。

 娯楽産業は世の中に見えないうちに影響を与えます。現代国家で国民思想に影響を与えるのは、教育とメディアの他に、映画などの娯楽産業とインターネットがあります。

 中国は、何が発信され、何をしないのか、誰がそれをコントロールするのか、という手段としてのインターネットの長所と短所を認識しており、この業界が始まって以来、ずっと飼い慣らそうとしてきました。だから、この10余年、「国境なき記者団」に「インターネットの敵」と呼ばれてきたのでした。

 しかし、西側各国も、最初は基本的にハイテクの巨頭たちがインターネットを支配するのを放任していましたが、2020年からその支配を制限する重要性を知って、現在、立法を通じて制限しようとしています。

 なぜ中共はエンターテインメント業界を支配したいのか?

 中国の歴史や文化を学んだことのある人なら、中国の民間劇が伝統的に民衆教育のための重要なルートであったことを知っています。

 歴史学者の傅斯年(1896年3月26日-1950年12月20日、五四運動の指導者の一人。国立台湾大学学長などをつとめた)は、中国の儒教社会は「礼は庶民のものではない」として、儒家の主流文化は下層民衆の思想や精神文化に関心を寄せなかったから、仏教や道教が深く民間に受け入れられることとなり、底辺社会の無政府状態が「儒教文化が最も不安定になる要素」となったと指摘しました。

 宋代以降、「礼」は次第に民間に浸透し、正統儒教とは全く異なる民衆文化が徐々に形成され、水滸伝に代表されるような任侠精神が生まれました。

 清代の学者である銭大心は、明代以降、「儒教・仏教・道教の三教」に加えて「新奇な宗教」が存在し、民間に浸透し、儒教の古典よりも影響力が大きいのが特徴であると述べています。

 例えば、民間では「三国演義」の方が、元の「三国志」よりはるかにウケました。金庸の武侠小説「鹿鼎記」(康熙帝時代の清を舞台に主人公、韋小宝が機転と運で出世していく物語)を読んだ人なら、主人公の韋小宝の善悪の価値観は、物語や劇、そして環境によって大きく形成されたことをご存知でしょう。

 この点を理解してこそ、ようやく習近平がなぜ娯楽産業の粛清に乗り出したかが理解できるのです。

  国家新聞出版広電総局の検閲にもかかわらず、映画やテレビ作品はますます厳しい基準に直面し、時代によって管理の基準が異なるため、常に何らかの「欠点」は指摘されます。作品から俳優までそうですから、これは中国的特色というべきでしょう。


 習近平も当然、民衆には娯楽、レジャーが必要だぐらいわかっています。彼が望むのは民衆に「前向きエネルギー」を注入したいのです。

 この2年余り、「覚醒した世代」とか「1921」、「紅船」など文革時代の無茶苦茶な「八つの革命模範劇」みたいな多くの中共党の歴史教育映画が作られています。

 中共のシンクタンクは、もちろん欧米の若者の現状を把握しており、欧米諸国の調査を分析した研究を行っています。

 この前提のもとに、9月1日、習近平は中共中央委員会党校の若手・中堅幹部向け研修コースの開講式でスピーチし、次のように宣言したのでした。

 :「現在、世界はこの100年になかった未曾有の大変化が加速して進行中だ。…我々の直面する危険は明らかに増えており、いつも平穏無事に、争いを避けるのは現実的ではない。闘争しなけらばならないならば未来に目を向けるべきだ」

 習近平の構想では、中国はネット中毒や大麻中毒など各種の「生活不良」の趣味をもたない共産主義思想に染まった「健康な後継者」が必要であり、そうしてこそ中国は未来に勝利することができる、というものなのです。

 しかし、人間というものは生き物です。快適な暮らしになれた青年世代に欲望を抑えよと言うのは、欲望に溺れるより途方もなく難しい。毛沢東の「闘私批修」(文革時のスローガン)の「前者の轍」がある中で、習近平が果たして本当に「健康な後継者」を育てうるかどうかは、ただ見守るしかありません。(終わり)

何清涟:习近平的“红色回归”与培养“接班人”
2021-09-02

理解中美两国国内政治的变化,是把握未来世界潮流方向的关键。对中国人来说,很难理解如今的美国正在发生的变化,但理解中共此刻在做什么、想做什么,知晓习近平指引的政治路向是“红色回归”。区别只在于评价:民间认为“糟得很”,政府及其喉舌认为“好得很”;西方现在自顾不暇,舆论对此关注不多。

回归初心,就是回归毛时代

目前的中国人, 其实经历的就是中国共产党统治下的两个时代:毛泽东时代与邓小平时代,习近平的十年统治就其政治特点而言,主要是结束邓小平时代的开放与对社会生活的弱管制,回归毛时代的对外封闭,加强对中国人社会生活的部分管制。这种部分管制,主要落实在对中国人娱乐生活的管制。

这种管制早就开始。人民网8月29日转载的《每个人都能感受到,一场深刻的变革正在进行!》并非人民日报社论,只是作者李光满对习近平治下的一连串行动做了个串串烧,正好挠到了中南海主人的痒点,于是获得人民网转载之荣。挠到痒点共有三处:

文章对中央政府一系列整治行动与政治活动做了提纲挈领式的理解性总结,并概括为“三个回归”:“中国正在发生重大变化,从经济领域、金融领域、文化领域到政治领域都在发生一场深刻的变革,……这是一次从资本集团向人民群众的回归,这是一次以资本为中心向以人民为中心的变革。……这场深刻的变革也是一次回归,向着中国共产党的初心回归,向着以人民为中心回归,向着社会主义本质回归。”——这段话,算是想《人民日报》之所想,但作者身份最多算体制边缘人,用他的文章能够展示这政治串串烧是“民心所向”。

为中国脱虚向实、改变国民经济的公私权重战略叫好。例如,“我们需要打击资本市场上大资本操纵、平台垄断通吃、劣币驱逐良币的乱象,引导资金流向实体企业、流向高科技企业、流向制造业,共同富裕是要让普通劳动者在社会财富分配中能够获得更多收入”,堪称党报文章精句摘编。

正确理解中共最新的敌情观念:“美国正在对中国实施越来越严厉的军事威胁、经济及科技封锁、金融打击、政治及外交围剿,正在对中国发动生物战、网络战、舆论战、太空战,力度越来越大地通过中国内部的第五纵队对中国发动颜色革命。如果这个时候,我们还要依靠那些大资本家作为反帝国主义、反霸权主义的主力、还在迎合美国的奶头乐战略,让我们的青年一代失去强悍和阳刚的雄风,那么我们不用敌人来打就自己先倒下了”——各种网络游戏均被算在“奶头乐”之列,但要说这是美国败坏中国年轻一代的战略实在太冤枉美国了,因为美国青年一代的奶头乐项目花样远比中国同代多。

习近平想拯救“接班人”

毛泽东秉承接班人教育,总是教导青年人“要关心国家大事,要把无产阶级文化大革命进行到底”。文革时期,不少红卫兵的理想是要将红旗插遍亚非拉美澳,这高入云天的理想虽然没实现,但最后到缅甸加入缅共打游击的人算是实践了革命理想的低配版。邓时代的改革,以放权让利为主导思想,逐步放松对社会的强管制,整个社会逐步开放。这是中共统治时期,中国青年一代首次不受限制地接触西方思想,因此培养了一代以改革为志向的中国青年。中共痛定思痛,江泽民在六四之后总结经验认为,1989年六四一代青年过于关心政治,今后要引导青年人多娱乐,淡化对政治的兴趣。于是,有意推动整个社会的非政治化倾向,各种前所未有的娱乐、不犯政治禁条的影视作品都极少限制。历经江胡两代20多年,养成了一代娱乐至死的中国青年。

80后、90后这两代人成长于中国最富足之时,网络这个虚拟空间几乎是他们在学校与家庭生活之外的主要生存空间。据《2020年中国游戏产业报告》,2020年中国游戏用户数量达6.65亿人, “网瘾”成为一个仅次于“毒瘾”的社会毒瘤,中国青少年网瘾发病率已近10%,它不仅体现在影响身体健康上,还体现在造成认知障碍。不少家长都苦于无法让孩子戒除网瘾。

习近平成长于文革时期,这代人历尽磨难,极少享受,对如今的年轻人主动躺平是真心不赞同,认为沉迷于网络游戏是玩物丧志。国家新闻出版署下发《关于进一步严格管理 切实防止未成年人沉迷网络游戏的通知》,通知要求,严格限制向未成年人提供网络游戏服务的时间;所有网络游戏企业仅可在周五、周六、周日和法定节假日,每日20时至21时向未成年人提供1小时服务,其他时间均不得以任何形式向未成年人提供网络游戏服务。

通过限制服务强制戒除青少年网瘾,结合中国其他与教育相关的政策来看,习近平应该是基于“东升西降”的判断,出于培养“健康的接班人”之考虑,采取了限制游戏产业的政策。

那么,打击娱乐业又出于什么目的?

“文变染乎世情”:娱乐业对世风有潜移默化之影响
现代国家影响国民思想的行业除教育、传媒之外,还有影视等娱乐行业与互联网。互联网作为载体,传播什么、不传播什么,控制权由谁掌握,中国一开头就深知其中利弊,从互联网诞生之时开始,就在想法驯服这个行业。也因此,近十余年以来,无国界记者组织将中国称为“互联网之敌”。西方各国最开始基本放任科技巨头控制互联网,自2020年开始,已经知道限制科技巨头管控互联网的重要性,正在立法解决中。

中共为什么要管控娱乐业?研究中国历史文化的人均知道,中国民间的戏曲历来是教化民众的重要渠道。历史学家傅斯年曾说过,中国传统的儒家礼法社会主张“礼不下庶人”,儒家主流文化并不关心下层民众的思想、心灵与文化,于是每当佛教、道教等深入民间后,民众便被席卷而去,底层社会的这种无政府状态成了“儒家文化最不安定的一个成分”。宋代以后礼仪逐渐下渗民间,一种与正统儒家思想大异其趣的大众文化逐渐成型,以《水浒》为代表的游民精神出现。清代学者钱大昕曾说,自明代以来,在“儒释道三教”之外又多了一个“小说教”,其特点是深入民间,比儒家经典的影响更广泛。比如,民间受《三国演义》伦理观影响,远多于受正史《三国志》的影响。读过金庸武侠小说《鹿鼎记》的人都知道韦小宝这个人物,他那亦正亦邪的价值观的形成主要依赖说书与戏曲,以及他生活的环境。

了解这一点,才知道习近平为何要整肃娱乐业。尽管有广电局审查把关,但因为各时期的管制尺度不同,影视作品面临日益严苛的尺度,总能被挑出毛病。由作品清算到演员,实在算是中国特色。

习近平当然知道民众需要娱乐休闲,他想出的方式是向民众灌输“正能量”。这两年新拍了不少党史教育片,比如《觉醒年代》、《1921》、《红船》,颇有当年文革时折腾“八个样板戏”的架势。

中共智库当然也了解西方青年的现状,在分析西方国家的调查报告基础上,出过一些研究报告。在此前提下,习近平师毛“培养社会主义新人”之故智,打算培养“健康的接班人”。9月1日,习近平在中共中央党校中青年干部培训班开班式上发表讲话,宣称“当前世界百年未有之大变局加速演进,……我们面临的风险挑战明显增多,总想过太平日子、不想斗争是不切实际的。”既然要斗争,就得着眼未来。按照习近平的构想,为中国培养一代红色思想、没有网瘾、大麻瘾及各种不良生活嗜好的“健康接班人”,方能在未来国际竞争中克敌制胜。但人是活的,让舒适惯了的青年一代克制欲望比纵欲难万倍。毛的“斗私批修”前车之鉴犹在,习近平是否真的能培养出“健康的接班人”,只能走着瞧了。

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