【楽曲解説】星間リニアに揺られながら【前編】

今回は曲作る上での抽象的な概念の話をめちゃくちゃします(予告)

曲を作った経緯

PriMewhanさん(@porygon987)さんの音ゲーシミュレーター段位認定企画「PriMewLAB DAN Courses Challenge!!! 2023」にて、最終コース「達人・天」の最終楽曲として書き下ろし依頼を受け製作しました。

シミュレーターゲームという事であまり深い言及はしませんが、元になったゲームの同じ立ち位置に君臨するボス曲に遜色ない曲を書こうという感じでこの曲の構想を練りはじめました。

レベルデザインから構築するサウンド感

今回は以下のようなオーダーをぽりみゅ〜さんから頂いてました。

・BPM240台
・偶数打(付点8分音符とか16分2打を入れられる)
・最難関譜面を作れる音の詰め込み

ということで、元となったゲームで言えば「Vixtory/CHUBAY」が近いかなと汲み取りました。このBPM帯で付点8分を使おうとすると楽曲がゴチャゴチャしかねないので慎重にサウンドデザインをしていきます。

僕が楽曲を作る際には、大まかに以下の2パターンから選んで細かいジャンル等のサウンドデザインをしています。

・生ドラムを主体としたバンド系サウンド
・サンプルキック等を主体としたEDM系

それぞれ楽曲の表現等において一長一短があるように思えます。例えばザッと思い付くだけで以下の様なポイントが浮かび上がります

「バンド系サウンド」
長所…抑揚、強弱など実際のライブでの演奏感を出せる
短所…ドラムにおいてBPMが高いと32分等の細かい連打等が配置できなくなる(演奏感を活かすサウンドデザインにおいて明らかに不自然なので)

「EDM系」
長所…バンド系に比べて高域が明瞭にしやすい、細かい連打等などの音ゲーライクな表現も可能、いろんなジャンルがあるのでバンド系に比べて様々な世界観をつくれる
短所…リアルな演奏感を出すのが難しい

今回は結果としてバンド系サウンドメインで要所要所でEDM主体の箇所を入れるハイブリッド形式を取りました。

話がだいぶ逸れましたが、ぽりみゅ〜さんからのオーダーを満たすためにサウンドデザインを細かく詰め、同時に展開も考えてゆきます。


こんな感じで大まかなスケッチを書きます。作ってる途中で変わる事は多々ありますが、今回は珍しく原案で最後まで書き通しました。

サウンドデザインにおけるマトリックス

楽曲の雰囲気は主に長調と短調で決められると言われがちですが、僕はその中にさらに幾らかの二項または多項から成る要素を考えて全体の雰囲気を形成するようにしています。

1つだけ例を挙げます。

・シリアス感…コード進行によって調整する。曲を聴いてる時に胸がキュッとするような感覚はだいたいこのシリアス感が関わってる気がする。

シリアス感と長調、短調の組み合わせで以下のような雰囲気を作ることができます。

❶長調+シリアス少なめ…幸せ・ハッピー・たのしい・爽快・キラキラ
❷長調+シリアス多め…切ない・エンディング・涙を拭う・最後・終わり・別れ・壮大
❸短調+シリアス少なめ…ダークヒーロー・快刀乱麻・天上天下・カラッとした・立ち向かう
❹短調+シリアス多め…絶望感・強大な敵・憎悪・カリスマ性・壮大・優美さ

他にも色んな要素があります(ex.BPM、ボーカルの有無・楽曲の空間の大きさ)

これらを1つずつ選んで組み合わせることで複雑玄妙な楽曲の世界観を作る事ができると思ってて、僕はこれを「サウンドデザインのマトリックス」と呼んでます。
元ネタは美味しんぼ88巻の「ラーメンマトリックス」ていう話です。気になったら読んでください。

今回のボス曲というオーダーを満たすために、以下のように要素を選んでます。

BPM…基本246(オーダー通り)
キー…F→F#(星の感じが出やすい気がする)
シリアス…多め(エンディングがテーマなので)
バンドかEDMか…バンド(ミソパンみたいな曲を作りたかったので)
音の詰め込み…細かめ(譜面で拾いやすくするため)
空間の大きさ…大きめ(星がテーマなので)

思い付く限りこんな感じです。星系の音ゲー曲を作る時は大体こんなマトリックスに基づいて製作しています。

楽曲のストーリー性って大事だよねという話

シリアス系の楽曲にはしっかりとした世界観、それを実現するだけのサウンドメイクの他にそれ相応のストーリーがほしいな〜と常々思ってます。

今回は段位企画のラスボスという事で、長い長い旅のラストを飾るという意味で「旅」「エンディング」を1つのモチーフにしてます。

そっから自分が作れる世界観、プレイヤーに感じて欲しい景色をミックスして楽曲のストーリー性を作りました。

星間列車というモチーフから始まり、BPMの速さ、疾走感を表現するために星間リニアという言葉が生まれ、それに揺られながら眠りにつくまでの光景が生まれました。

あとがき

後半では実際の曲の展開を題材に取ってどんなアプローチで曲を作ったか書いていこうと思います。長々とお付き合いいただきありがとうございました。


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