見出し画像

戦車不要論者不要論

2月末に発生したロシアによるウクライナ侵攻。ロシア軍はガバガバ運用により開戦より多くの戦車を失ったが、それに便乗して戦車不要論を唱える愚者がアリのように湧き出している。ここに筆者は

「戦車不要論者不要論」

を提唱する。

  • 戦車不要論者はどのような内容を唱えているか

  • それらの間違い、矛盾

  • 戦車の優位性と運用

について説明していく。

まず戦車不要論者は
「ジャベリンがあれば戦車なんて1人で倒せる」
「ドローンがあれば戦車なんて的」
この2つの意見(という名の妄想)が目立ったため紹介する。

まずジャベリンがあれば戦車は一人で倒せるという意見について。一人で倒せる、それ自体は間違ってはいないのだ。しかしそれは
・戦車が単独かつこちらを確認していない
・戦車が歩兵を随伴させていないor随伴歩兵がこちらを認識していない
・航空偵察や事前の掃討が行われていない
最低でもこれを満たす必要がある。ジャベリンは発射までに数分を要するため射手、周囲の警戒を兼ねた弾薬手の2名での運用が基本である。1名での運用も不可能ではないが危険は増大する。今回ロシア軍は掃討や偵察はほとんどと言っていい程行われておらず、歩兵との連携も全く取れていない。そのため、ジャベリンは戦車を討ち取れるのだ。先の中東戦争では対戦車ミサイルの前にイスラエル軍の戦車は大打撃を受けるが、同時に射手側の被害も相当に大きかったと言う事を知らねばならない。またジャベリンは非常に高価であり、平次の米軍では射撃シミュレーションを行いそれに合格したものがジャベリンの運用資格を得られる。今回のウクライナへの供与は非常事態故だが、平次にわざわざ戦車という強力な兵器をみすみす減らしてまで無理やり配備する必要は無いだろう。「ジャベリン最強!戦車いらねー!」と言ってる人間はウクライナ側が犠牲も無く非常に多くの戦車を破壊していると思っているフシがあるが、実際はジャベリン側にも少なくない被害が出ており、また戦車は多くが鹵獲されウクライナ側の戦力となっている。それを加味すると実際にジャベリンにより破壊された戦車の数は実はそこまで多くないのだ。

次に、「ドローンがあれば戦車なんて的」という意見である。今回有識者は知っていると思うが、ロシア空軍は(この記事が書かれた時点では)ウクライナ上空の制空権の完全掌握に失敗し、ウクライナ上空の制空権は両者拮抗している。そして地対空兵器も(この記事が書かれた時点では)効果的な運用がされていない。

https://www.ukrinform.jp/rubric-defense/2663614-ukuraina-juntorukokara-gou-rushita-wu-ren-zhan-dou-jino-shi-yan-fei-xingni-cheng-gong.html 
画像の引用元

今回運用されているバイラクタルTB2の最高速度は時速220kmである。指揮系統が麻痺しているロシア軍の地対空ミサイルの破壊に成功するなどの戦果を挙げているが、この220kmという速度はUH-1と大差がなく、戦闘ヘリであるAH-64には100km近くの差を付けられている。「ブラックホーク・ダウン」ではヘリがRPG-7によって撃墜されるシーンがあるが、実際にRPG-7によりヘリが撃墜された例も存在する。この220kmという速度、条件次第では歩兵の持つアサルトライフルや軽機関銃、無誘導擲弾などでも撃ち落とされるような速度なのだ。今回(この記事が書かれた時点では)ロシア軍は指揮系統が麻痺しておりまともな地対空攻撃がされていない&SAMや制空戦闘機に比較的強い低空を飛べるドローンが戦果を挙げているが、制空権を完全に掌握されていたり、まともに機能する携帯式対空ミサイルや自走対空砲などが存在する場合、ドローンこそが「的」となり今以上の損害が発生するだろう。

勘違いしないでいただきたいのは今回のウクライナ侵攻におけるロシア軍の戦車は運用がクソすぎてドローンとジャベリンの的になっているのである。仮にウクライナ上空の制空権をロシアが100%掌握し、随伴歩兵とまともに機能する地対空兵器を戦車部隊に随伴させた場合、ドローンは上がった側から撃墜されるか対空ミサイルの餌になり、ジャベリンを運用する歩兵は多くが発射前に随伴歩兵に見つかり射殺されるであろう。

戦車不要論こそが不要なのである。
 

追記:この記事はウクライナ侵攻に関連する記事のため、記事を開くとタイトル上で寄付先にアクセス可能となります。金銭的余裕のある方は寄付をお願いします。筆者は1200円と少額ながら寄付しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?