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夢の話 - 浮遊する人狼の話

どこか工場の敷地内を彷彿とさせる様な所。
車が2、3台は通れる様な道が一本通っていて、その左右に4、5階くらいの建物が建っている。
そう思い出すのは海辺のかつての職場。
雰囲気はそのままで、違うのはどこか山の方というか、かつて通った八王子の学校の敷地が、そのままビジョン内の工場にすり替わっているというような感覚。
土地の雰囲気というか、「今ここにいる」という自覚としてそう思ったのだ。

30mもないであろうその道を、私は件の四足走行で何往復か走っていたのだ。
見た目は違和感のない人の形をしているが、走る姿はは獣そのもの。
人の形をしているので犬の様には走れないが、不釣り合いな程の腕部のパワーによる推進をメインに、後脚でバランスをとりながら走っている。
短距離を滑空している様にも見えるその姿は、「キングコングが走る姿を人の形にスリム化し高速化したもの」とでもいうべきか。
私の振る舞いは、そうした形容の難しい前例のない獣的な姿であった。
しかしその様子はどこか本調子でないようだった。
直進方向に腕の力がうまく伝わらずにジャンプをしてしまい、満足できるスピードは出ていなかった。

男と女が一人ずつ、そんな私をみている。どうやら私と親しい仲らしい。
(面識はないはずだったが、そのように感じた。)
私は彼らが私をみて話をしているのを尻目に走り続ける。

そこに中学時代に私をいたぶった例の3人組が現れる。もちろんあの当時の姿で。
私の様子そのものには違和感は感じていないようで、「いつも通り」いちゃもんをつけにきただけのようだった。
瞬間、その術を知ってか知らずか、私はそのうちの一人を(毎秒10cmくらいだろうか)空中に浮遊させるよう何かを行った。
奴が10m程の所まで浮上した途端、唖然としていた奴らは私を睨み、こちらに向かってくる。
以後奴等を含め政府機関に追われるようになってしまった。
(その様子はGTAで星がつく様に)

気付けば私の体は獣の様な出立ちになっており、人狼と形容するのがふさわしい姿になっていた。
目の前の事に処理が追いつかないが、気持ちはすっかり悪役である。
追われるのだから逃げるまでである。
小高いフェンスをジャンプで飛び越えたかと思うと、最高点に到達後、そこから落下しなかった。
(横方向にかかっていた力も消え、完全に浮遊していた。)
こうなるとまさに「姿を人狼に変えることができる能力」と「自他に浮遊状態を付与することができる能力」を持つ能力者になった様である。
数秒、フェンスを越えられない連中を俯瞰した後、地面に降り逃走を始める。
途中、(何故か)消防車に見つかり出てきた消防隊員を無力化した。
(恐らく死んではいない。)

宿泊先のホテルに着くも、姿は人の形に戻りチェックインした当時と同じ姿ではあるが、部屋の鍵を含め主要な見回り品は手元になかった。
ロビーにて鍵がない旨を伝え、ひとまずは部屋に入れた。
急いで荷物をまとめ、ロビーを通らない様にキャリーバッグを抱えたまま窓から脱出した。

次の目的地、祖母の家に着く。
身内は恐らく政府からの連絡によって敵に回っていると思われたが、回収せねばならない荷物があった為、リスクを承知で回収に向かった。
ボストンバッグにまとまった荷物とキャリーバッグを持ち"いよいよ高跳びの準備が整った"と家のドアに手をかけた瞬間、母と祖母が向こう側からドアを開けた。
すぐドアを閉めようとしたが叶わず、とうとう連中の手に落ちてしまった。

電車の中、リュック一つの所持を許され、手錠はされていなかった。
傍らには祖母がおり、責任を持って自首させに首都へ同伴するという。
どうやら私がいたのは山間の田舎だったらしく、到着までは今しばらくかかるらしい。
しかし私の考えは祖母のそれとは異なり、いつ逃走するかを図っていたのであった。

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