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夢の話 - あの娘の温もりの話

夢の中のあの娘。とうとう顔も思い出せず、背格好すらも記憶からすり抜けていってしまった。何処かから抱えて逃げ出して、そしてやはりそこから先は思い出せない。ただ、とても愛おしく、親しく、求め合っていたであろうことは内蔵のHDDに強烈に焼き付けられている。

抱えていた時の温もりが残っている様で辛い。今の私には到底訪れ得ないシチュエーションと配役。にもかかわらず(夢の中ではあるが)、現実として目にした数々のビジョン。緊張してるみたいで伝わってくる速い脈動、スベスベな肌、ほのかに汗、体温。
決して無機質なものではないと確信させるだけの条件と、目が覚めてしまった後の手元にそれらがないという「あったはずなのに、今やその存在証明も叶わない」という精神的な幻肢痛とでもいうべき愁傷が、大袈裟にいうまでもないものの、確実に心に穴を開け、ジワジワとかじりついているのだ。

マインドセットや精神的条件、現実的な挙動という意味での肉体的条件が現実とは異なる夢の中の自分。ともすれば、より深いところの自分(無意識)が映し出した自己満足のための手段なのかもしれない。
あまりにも理想に近くて甘美なので、そうした夢をいつも心待ちにしている。すり減っては時間経過で治る心の具合と、新たなインスピレーションのために求めているのかもしれない。
それはハートマン博士が家族に会うために何度も死んで蘇っていた様に。

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