ようかい

さっきから頭と踵がひっくり返ってしまったように目がぐるぐる回っていて、手と足は綿菓子みたいにふわふわと溶けていってしまった。逆さになった胴体だけが残った状態は、気持ち悪くはないけれど、決して心地よくもない。誰かに見つかったらどうしよう、という思いだけが片足で地面に立っている。その時、花瓶に刺さった花びらが宙に浮いて行くのが見えた。ああ、そうか。あれは散ったのか。花瓶のように音を立てて割れるわけでもなく、ひとりでにはらりと生涯を終えるその光景が厭に美しく見えた。

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