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秋田に負けた日に14年前を思い出す。

現在開幕から20試合負け無しの首位秋田との1戦。秋田の連勝を止めるのは勿論岐阜だと自信満々で挑んだ大一番。
結果は0-5という大敗中の大敗。
秋田の完成されたサッカーに見せ場は作ったものの歯が立ちませんでした。
岐阜には日本でも1番の刃物の町でもある関市があるので、次までにしっかりと刃を研いで歯が立つようにしましょう。

さて、大一番で秋田に敗れて一番最初に頭をよぎったのは14年前の出来事。
僕にとってFC岐阜との15年の中でも、ベスト3に入るくらいの思い出の出来事。

それはJFLを目指して東海リーグを優勝し意気揚々と昇格を賭けた大分で行われた地域決勝大会の出来事です。

※以降の写真はFC岐阜アーカイブよりお借りしました。


決勝に残ったのは、FC岐阜、Vファーレン長崎、ファジアーノ岡山、TDK(今の秋田の前身)の4チーム。1位は昇格、2位は入替戦の総当たりリーグ戦。
下馬評では岐阜と長崎が有力で、秋田のTDKは全くのノーマーク。大切な初戦の相手は秋田のTDK。
大会前の戸塚哲也監督はこんな事を言ってました。
「普通に戦えば上に行けるが、勝負は100回やると1回2回は絶対が起きない場合がある。その1回、2回は大一番に起こりやすい。そこを気をつけないと。」
正に予感的中。
ノーマークのTDKの徹底した組織の守りに、元JリーガーだらけのFC岐阜の攻撃が次から次へと防御され、間隙を突いてTDKの大友慧(翌年FC岐阜に移籍)にスーパーゴールを決められ0-1で完敗。

ありえない敗戦に呆然の選手。
試合後のぶら下がりでも名将戸塚哲也監督も歯切れが悪い。
そりゃそうだ。4チームの中で1番弱いと踏んでいた秋田に敗れたんだから。
残りは、昇格に向け大補強をした優勝候補の長崎、そして2m長身FWジェフェルソンで爆発的攻撃力を誇る岡山。
俄然昇格に黄色信号が灯ったんだから、選手や監督にしてみれば1年の頑張りがフイになりかねない出来事に正気でいられるはずもありません。

14年前の36歳の僕も顔が死んでます。
(実際その日、投宿して仮眠した夢の中で伊藤哲也選手が「今までありがとうね」と夢枕に出てきてビックリして起き、当時FC岐阜を色んな面で支えてくれた先輩が、動揺している僕らを大分の屋台のおでん屋に連れてってくれたのを覚えています。)

こりゃまずい。誰もがそう思って、昇格も半分諦めていたそんな時に沈んだチームを救った選手がいました。
それが李成浩(リソンホ)選手。


大阪府出身、立命館大学からFC岐阜に入団した李選手。後に町田ゼルビアに移籍。
サイドバックとして何試合かに出場するもレギュラーは奪えずこの大会でもベンチ外。
TDKの試合に敗れ、宿舎に帰るバスの中。
勿論お通夜状態。戸塚監督も言葉をかけられなかったそうです。
そんなどうしようもない真っ暗闇のバスの中で、突然李成浩が立ち上がって母国韓国の誰も知らない民謡のような歌を大声で歌い出したそうだ。
突然の出来事に言葉を失う一同。
李成浩にしてみれば伸るか反るかの大博打。
チームには森山泰行選手、伊藤哲也選手という大ベテランで鬼教官がいる訳で、そんな中で大卒ルーキーが突然こんな事をする訳だから、もしかしたら歌いながら走馬灯の様に幼少期からの思い出が彼の頭に過ぎっていたかもしれない。
しかし、もう引けないし、何とかしなくてはと恥ずかしがることもなく大声で誰も知らない歌を何度も歌う李成浩。
次第にバスの中は大きな笑い声に溢れて、宿舎に到着する頃にはTDKに敗れたショックは無くなり、明日明後日勝てば良いんだ、勝てるに違いないという自信に溢れた雰囲気になったそうだ。
そしてチームは池元選手(現北九州)、高木和正選手(現讃岐)、片桐選手(現大垣)の活躍で翌日の岡山、翌々日の長崎に勝利して大会を2位(優勝は秋田のTDK)で勝ち抜け、JFL最下位のホンダロックとの入替戦を勝ちJFLに昇格を決めました。
※この話はFC岐阜がJFLに昇格を決めた後に
CCNの番組で戸塚哲也監督に聞いたお話です。李成浩さん勝手に引っ張り出してきてすいませんでした。


つまり何が言いたいかと言うと、今日みたいな日の試合後に李成浩は現れたかなって事。
奇しくも14年後に、またもや秋田にショックな負けを喫し、監督も選手もサポーターもガッカリで、優勝はおろか昇格も怪しいんでないかと思ってもおかしくない時こそ、あの日から14年後の李成浩になるえる誰かが今のチームには必要では無いのかな?と思いました。
あの時の李成浩は、試合にも出場せず、ボールにも触れずにチームを救ったんです。

極端な事言えば、あの時に李成浩が歌わなかったら、今のFC岐阜は存在しなかったかもしれないんです。
試合に出られなかった李成浩がチームの為に自分の出来る事を精一杯出した答えが、沈黙のバスの中で誰も知らない韓国の歌を大声で何度も何度も歌う事だったのです。


残り13試合。
ベンチ入りした選手もベンチ外の選手も監督もコーチもサポーターもクラブの人も、自分の出来る事をして、みんなで闘う事が大切だと思います。
皆んなが14年前の李成浩になる必要があると思います。

まだ諦めない。
絶対昇格する!優勝だって出来る!
14年前みたいに、秋田に負けて目が覚めて、信じて皆んなで勝ち取りましょう!
何が昔の話引っ張り出してきて優勝とかあり得ん話してんだと思う方もいるでしょう。
僕はサッカーの応援はロマンチストかリアリストのどっちかしか長く続くもんでは無いと思っています。
因みに僕は超ロマンチストです。

新しいサポーターの皆さん、昇格は本当に楽しいよ。
絶対一生の思い出になるよ。
これを味わうと一生FC岐阜から離れられなくなるよ。

またビールかけしよう!

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