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ウエディングに寄せて


匠海くんは納得のいくものしか見せたくない人という印象があります。

年始に出演した番組で「楽しくやっていれば120点がとれる人なのにちゃんと100点だったかどうかを気にしてしまいがち」と占い師に言い当てられたことを受けて、本当はきちんと準備をしたいけれど限られた時間の中で仕上げなければいけないことも多く、それが出来なかった時の気持ちの折り合いの付け方が難しいのだということを後の雑誌媒体で教えてくれたこと。「グループの曲を1曲作詞する」という約束も、1曲まるごとやりたいというこだわりがあり時間をかけて作りたいからもう少し待っていて欲しいこと。

その完璧を目指すさまは、これまで匠海くんが胸を張って見せてくれたすべての作品やパフォーマンスを思い起こさせ、私たちからは見えていない膨大な苦労や葛藤と、やるからには期待を超えてみせると燃える匠海くんの姿を想像させました。だからその努力に出来るだけ見合うように、そのすべてに通った血肉を私のぜんぶを使って受け取りたいといつも思っています。

今年は個人としての魅力ももっと発信していけるようにしたい、自己紹介になるようなコンテンツを何か作りたいとハッキリと話し私たちに期待をさせてくれていたので、ソロカバーの動画が上がることが突然告知された時は「あぁ、ついに」と思いました。狙った的を外さない人が今だ、と思ってドラマが始まる前のこのタイミングでこれを出そうと思ったんだな……とか、匠海くんが抱えていた荷物を(世に出すことで)ひとつ降ろせるんだな……とか、いろんな感情が混ざりあい胸がいっぱいになってスーパーの唐揚げをトリスのハイボールで流し込んでそのまま寝た。

白いタキシード、教会のような場所、左手の薬指にはめられた指輪。これらから想像が出来るワードはアラサーである私の「現実」で、輪郭を否応なしに意識させられるトピックであり、胸にずるりと入ってきては心臓のあたりにじわじわ嫌なシミを広げるものでした。あまりに現実すぎたから"匠海くんと結婚"という思想に逆に乗っかることができなかった(お、おもー……)。対岸に渡った友達を見つめながらずっと同じ岸辺にいて、この世のすべての曲の「僕」と「君」に自分と匠海くんを当てはめてしんどくなっているようなどうしようもない状態(ほんとうにどうしようもないですね)の自分が、これを見たら一体どうなってしまうのかわからなかったから怖かった。怖かったけど、匠海くんの選び取るすべてはそれが正解であることを知っているから怖くなかった。





結論から言うと、私はアホみたいに泣いてしまったのです。

まるで割れものを落とさないよう運ぶみたいに、またはやわらかいパンをやさしくトングで掴むみたいに、その声色がいつもの匠海くんとは少し違うことがすぐに分かりました。これまで表に出ているカバー動画のように、レコーディング風景のような場で歌うだけでもあなたは私たちを充分特別に出来るのに、カメラの向こうにいる人を想像してこちらに視線を送ることを選んでくれたんだ!ってびっくりして、でもその選択をする人だということをすでに知っていた気がした。

驚くことになんとそれだけに留まらず、匠海くんは演じるという要素を取り入れストーリーを組み立てて、それはまるでカメラの向こうの私たちが匠海くんと一緒に人生を歩んでいること、そしてこれからも歩んでいけると思えることと重なる、やさしい手作りのエンターテイメントを届けてくれました。以前、まわりから求められていることとその上で自分はどうしたいかのバランスを模索しているところだと話してくれていましたが、匠海くんはこのカバー動画を通してその折衷案を採り今自身が持てるものすべてを使って「自分にしかできないこと」をひとつの形にしていた。

だから、私はアホみたいに泣いてしまったのです。人の心を動かしたいともがく匠海くんという人がほんとうに素敵だとこころから思えたから。




春。待ち合わせ場所にいた匠海くんは多分、30分前に着いてずっと待っていたとしても「全然待ってない」って言ってくれるような人だと思った。作っていったお弁当がどんなものでもあのキラキラした目で大きなリアクションをしてくれるし、大好きな卵焼きが一個しかなくても「食べる?」ってやわらかく語尾があがるみたいなあの関西弁で分けてくれる。首を傾げる時のお顔がかわいくてかわいくてジタバタしてしまった。シャボン玉をうつして見えた匠海くんの姿は、銀テープや紙吹雪の中で笑っていたあの顔とはまた違う温度感を持って光っていて、水仙の花言葉が「愛に応えて」であることを私はこの時はじめて知る。

夏。どうして海はきらきらしているんだろう?どうして、きらきらはきれいなんだろう?青い海と空、白いソフトクリームともふもふのわんちゃん。切り取られた景色すべてが愛おしいと思った。笑うとかまぼこみたいな形になる目がかわいくて、もう匠海くんしか好きじゃないと思った。私が彼そのものみたいに思っている海という場所に立っているところを、その時の時間を、空気を、目には見えないはずのものまでこんなに鮮やかに映像として残してもらえて私はなんて幸せものだろう。

秋。歌詞の「ぶつかり合う日もあったね」に合わせて、春夏秋冬と起承転結の四字熟語が重なってるのすごすぎる。誰かと食卓を囲むという日常はひとつの幸せの形であることを匠海くんも知っていて、それを取り入れてくれたことをとても素敵なことと思った。ごはんは笑って食べたいもん。匠海くんが怒った顔って全然想像できなかったけど、そんな表情にもやさしさが見え隠れしているみたいに見えて、やっぱり匠海くんしか好きじゃないと思った。

冬。マフラーでもこもこになった匠海くんの指に指輪がはめられていて、気付いたら彼は私の知らない人と結ばれていた。

だけど私は5分35秒の間、ずーっと幸せな気持ちだったのです。見るのが怖いと言っていた私は、結婚が怖いのだと言っていた私はどういうわけかもうここにいなくて、そんな気持ちなんてどうでもよくなるくらいに、これを届けてくれた匠海くんのことがただただ大切でした。匠海くんの声があって、そこにいる匠海くんがただ好きで、歌詞が、私から匠海くんへ贈りたいと思うような言葉ばかりだった。


もしも君に出会わなければ
流れてく時の中で
嬉しいこと、悲しいこと
それすら感じれなかった
答えが見えず泣いてた日も
手を取ってくれたこと
溢れる想い、ありがとうを
君に伝え続ける


世界中で誰より君に
伝えたい言葉があって
幸せだよ、愛しき人
ありがとう、生まれてきてくれて
互いが歳を重ねてまた
明るい未来があるように
君を愛し、君を守り
出会えてよかったと思えるように

これはまだ自信がなくて、傲慢だと思うから少し書くことを憚られるけど、Cメロでそれまでやわらかく聞こえていた歌にちからが入り最後のサビでは輝いた未来を掴むみたいに希望に溢れた歌い方をしていたのを見たときに、ほんのちょっとだけ、1ミリだけ、匠海くんから私たちファンに向けられた気持ちでもあったらいいのにと思ってしまった。


匠海くんという人は音楽という壁の無いものを愛し広い視野を持ったアイドルなので、自分が表現したものの受け取り方に制限を設けることをしません。匠海くんと恋愛を楽しむ自分にあてはめてみてもいいし、自分がこれまで経験してきた恋心を思い出してみるのでもいいし、その両方が難しくてもシンプルに匠海くんの歌声に耳を傾けるだけでもいい。あえて多くを語らないことで、その優しさに気付かせてくれるのが匠海くんでした。現にきっとたくさんたくさん考えて生み出した作品のはずなのに、動画が上がったあとに更新されたブログでもメールでも、この「ウエディング」を選択した経緯については何も触れられていなかった。

私はアイドルの、どれだけ愛したっていい、どれだけ恋したっていいところに助けられてきました。何枚扉を開けても行き止まりのない「好き」という曖昧な気持ちに、輪郭を描いてくれるのは匠海くんだった。どれだけ重たい気持ちを渡してもいつも明るく「ありがとう!」と、カラッとした優しさで受け止めてくれた。そうやってアイドルという形を私たち以上に愛して、大切に崩さないように努めてくれる匠海くんの姿勢が好きだった。そんな人がここまでハッキリと「結婚」をテーマにしたものをカバーとして世に出すのは、ヘイトを生みかねないのでは?とも思うのに、白いタキシードで、教会で、左手の薬指で、匠海くんがあまりに本気でそれをやってくれたから、きっと誰も何も言うことが出来ない。本気で何かを作り上げる人のことを人は笑ったり出来ない。


教会という場所は、嘘をつくことが許されないとても神聖な場所なのではないかなと思います。そこで匠海くんがマイクを握ったという意味の大きさのことを考えます。

「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

これは、いわゆる誓いの言葉の全文です。これの、真心を尽くすという部分を読み、あぁ、これは匠海くんが歌の神様と誓った指切りなのだと思いました。最初から私たちが入る隙間などなかったのかもしれない。匠海くんの決意はきっと伝わったことでしょう。だからその道のりを、神さまどうか護って欲しいのです。

匠海くんがだいじだから、ずっと一緒にいたいし、どうしたらそれが叶うのかを頭の片隅でいつも考えています。それでもいつか終わりがくるのだと知りながら、何十巡の季節をこれからも積み重ねていきたいと思いました。病める時も健やかなる時も、一緒に人生を歩んでくれる私のアイドル、尾崎匠海くんの挑戦がどうかたくさんの人のこころに届きますように。


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