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無題

才能とは、一体。
この言葉を、手遊びしながら話す人達についてはなんだか、こちらの認識通りになんにでも姿を変える不可視の獣に首輪をつけて、それに繋がったそう丈夫でも無い鎖を、手で掴んでいるだけで、満足してる気配がする
そいつは、煙に化けるか霧にまぎれればその場をいとも簡単に去ることができるというのに、それなのに逃げも隠れもせずこちらをじっと見つめている、得体の知れない奴だ。
自分がその言葉について、どう思っているか、または自分の才能……(あるかどうか言うまでもなく分からないが)について、考えを巡らす時。
私はその不可視のけだものの前におん出され、周りの視線から、尻尾をいきなりひっつかめと命令されて、そうする必要性も感じないのに、断るならそれ相応より多額の贄税を要求される気がして、怯えた顔で、仮初の不気味な尻尾を掴むしかなくなる。
才の頭文字と能に続く首下を持つ生き物は、やはり此方を窺い知ろうとするどころか、娼館の太った遣手より踏みする目付きで、今まさに王に戴冠させられんとするダイヤが、硬質な威光の花を咲かせるに相応しい、私の肉の幹になれるのかという、率直すぎて切られてしまいそうな問いかけ光で、その目でじっと見られて、私はとても堪らない気持ちにさせられる……。
やがてそれが、侵食する水銀より毒気を増した鏡面だと嫌でも気付かされるのだ。

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