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vol.04 十四〜五歳で初めて読書をする

■十四、五歳で初めて読書をする

 根っから何もせんとおったんやけど、十四歳か十五歳くらいになったときに、近所のやつらはみんな本を読んでるのに、自分だけ読んでないのはさすがに恥ずかしいなと思ったんや。

それからホンマに読む気になって、田舎の塾へ行きはじめたんやけど、いうてそんな歳になって初めて、読み書きを学ぶんやから、だいぶ恥ずかしいわな。他のやつらはみんな「詩経」とか「書経」を読んでるのに、わしは一人で、基本の「孟子」を音読してるだけ。

 でも不思議なことに、その塾で「蒙求」とか「孟子」とか「論語」とかを題材にみんなで議論するってなったら、たぶん、わしはもともと賢いのもあって、めっちゃ内容理解してたんや。

朝に読み方を教えてくれた人と、昼になってそれを題材に議論したら、絶対わしが論破してた。まぁ実際、相手は字面だけ読んで理解してる気になっているだけやから、こんなん相手に負けるはずないわな。

 そのうち、塾も二、三回かえたんやけど、一番多く漢書を教えてもろたんは白石先生からやった。そこに四、五年通学して、漢書を学んで、すらすら内容も理解して、あっという間に上達した。
 白石先生の塾でどういうふうに漢書を勉強したかて言うと、儒教の最重要教科書である経書をひたすら読んで、「論語」「孟子」はもちろん、全部の経書の意味を研究したんよ。
特に「詩経」「書経」ていうのは、先生が好きな本やったらしくて、ホンマによく講義をしてもらって読んだのを覚えてるわ。
 それから、「蒙求」「世説」「左伝」「戦国策」「老子」「荘子」というようなものもよく講義を聞いて、その先は独学や。
歴史は「史記」を始め、「漢書」「後漢書」「晋書」「五代史」「元明史略」などを読んで、特にわしは「左伝」が得意で、たいがいの生徒は「左伝」十五巻のうち三、四巻で辞めてまうねんけど、わしは全部読破するだけじゃなく、十回以上読みかえして、おもろい部分は暗記までしてたわ。

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