フィリピン人に大統領のことを聞いてみた 2021 前編
お久しぶりです
TK工房です
コロナ禍になって、早くも1年が過ぎましたね
コロナのせいで、外出規制が出来てリモートワークが進んだり、失業者が爆増したり、アジア人差別が横行したりと、この1年で色んなことがあったなぁと
そして現在アジア諸国を担当している身として、いろんな国の事情を見ていたのですが、コロナ対策がうまくいっている国、そうでない国があり、もちろん後者は国民の不満が高まります。
で、アジアだと、インドネシアとフィリピンがダメダメなんですよね
インドネシアは担当国なので、ある程度ナマの情報は入ってくるのですが、フィリピンは残念ながら担当ではないので、よくわからない
ただ、コロナ対策の失敗で、人心が離れ始めているというような噂も聞く
ということで、帰ってきました人気企画「フィリピン人に大統領のことを聞いてみた」シリーズ
過去シリーズはこちら
今回は2021年バージョンということで、いつものオンライン英会話を通して、コツコツと30人のフィリピン人にインタビューを実施しました。
対象者:20~50歳(平均29.5歳)の男性15人、女性15人、合計30人
実施時期:2021年2月~3月
対象者属性:オンライン英会話講師(学歴は大卒以上)
出身島:ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島
質問:
①「大統領を支持するか?」
②「その理由は?」
③「大統領の良いところ、悪いところは何か」
④「大統領に直接話せるなら何を要望するか?」
まず、この記事を書いてみようと思うきっかけとなった、「最近は大統領不支持も多くなってきている」という噂。実際にフィリピン人講師からもちらほら聞いていたので、まずはネットで事前に調べてみた
「2020年10月の正式な調査では91%の国民が支持しているという結果になった」
みんな支持してるやんけww
なんやねんww
一方で、私のアンケート結果はどうだったかというと、この数字と大きく異なる結果となったので下図を見てほしい。
支持するのは47%となり、支持しないが30%、中立が23%となった。
まずは支持する方々の理由を見ていきたい
多く見られたのは、「麻薬関連の取組が素晴らしい」「有言実行でどんどん実績を作っている」「彼は仕事をしている」「この国を変えてくれた」「経済政策が成功している」「とにかくこの国を良くしたいという強い思いを感じる」というもの。
フィリピン人の一番の関心事だった麻薬事情。
彼の就任前2015年のフィリピン危険薬物委員会の調査では、10~69歳の推計麻薬使用者数は180万人に及んでいた。これは人口の1.7%ほどにあたる。
それが就任した2016年の1年間で、4万人強の薬物使用者と密売人を逮捕、70名以上の政府職員を違法薬物取引に関わった疑いで逮捕
そしてなんと100万人強の使用者と密売人が自首をしたので刑務所が溢れかえる事態に。
え、ヤバ過ぎひん?(笑)
実際にどうしたかと言うと、当選後すぐ、国内すべての町に麻薬の使用が疑われる住人のリストを提供させ、リストにあがった家を片っ端から警官が直接訪ね、自首と更生を促すプロジェクトを開始。
更に「麻薬捜査中に警官が人を殺しても罪には問わへん」と公言したんだと。
政府発表によると、2018年9月末までに取り締まり中に殺された市民は4,948人。実際は2万人以上が殺されたと主張する人もいるらしいが真偽は定かではない。
ちなみにドゥテルテが麻薬対策に注力し始めたのは大統領になる前のダバオ市長時代。(1988年~2016年※途中空白あり)
フィリピンで史上最悪の街と言われていたダバオ市をフィリピンで一番安全でクリーンな街に変えたことはあまりにも有名。
自ら町をパトロールし、「タタイ(お父さん)」と呼ばれたらしく、今回のアンケートでも、「国民全員にとって厳しい父親のように尊敬できる存在」という回答があったのは、ここから来てるんだろうなと。
また強権的なダバオ式政治を全国に広げ、強い大統領としての人気を確実にする手段の一つが麻薬戦争だったとみている人もいるらしい。
麻薬戦争を調べてて、凄いなと思ったエピソードがあったので紹介したい。
フィリピン中部レイテ島の町アルブエラに「麻薬王」カーウィン・エスピノサという人間がいて、武装密売人集団を組織して、町を支配していたらしい。もうすでに漫画の世界。
カーウィンが経営するホテルの前で、スクールバスの運転手がカーウィンの車を追い越したという理由で停車させられて、乗車中の学生らの目の前で射殺されたという嘘みたいなことも平気で起きていた。もうワンピースの世界やん。
2016年の町長選にカーウィンの父ローランドが出馬した時には、カーウィンの取り巻きの男たちが銃を手に、票集めに町を歩きまわったんだと。
今どきワンピースでも、この設定は古いで(笑)
上記の強硬手段で無事、町長に当選した父ローランドのもとで当時副町長を務めていた、現町長のローサ・メネセス(66)は後に「町長が麻薬密売に関与していることは誰もが知っていたが、怖くて動けなかった」とコメントしてるそうやけど、この人はしれっと町長に昇格してんのも、どやねん?(笑)
そんな折、16年6月に大統領に就任したのが、我らがドゥテルテ。真打登場。
ドゥテルテはこのエスピノサ父子を名指しして
「24時間以内に投降せぇ。さもないと射殺する。」と警告。
きゃああぁぁ!そこにシビれる憧れるぅ!
なすすべなく警察に投降した町長のローランドは同年11月、刑務所内で警官に射殺されるというあっけない幕切れ。マフィアものの映画を見ているようだ。
カーウィン自身は国外に逃亡していたところを逮捕され、現在も裁判が続く。
誰も手が出せなかった麻薬王が一瞬で「退治」されたことは国民にとって、衝撃だったらしい。そらこんなん見せられたら熱狂的なファンになるよね。
今回インタビューに答えてくれた中でも熱弁してくれた23歳男性は
「他の政治家とまるで違う。他のやつらは外面だけは良いクズばっかりやから。ほんま口ばっかり。ほんでマフィアはこういうクソ政治家と繋がってるからな。
ドゥトルテは大統領になる前、ミンダナオ島のダバオ市長やってんけど、あそこは昔、犯罪やテロ、麻薬の巣窟で悲惨なところやったのに、彼が市長になってからは、それら全部一掃したんやで。犯罪減っただけでなく、物理的にも街をキレイにしてん。道にゴミ落ちてないねんで?すごない?今は国全体を綺麗にしてくれることを期待してんねん。
ほんで、インフラ整備もめっちゃやってくれてんねん。鉄道や高速道路をバンバン建設してくれて、慢性的な渋滞もめっちゃ解消したし。もちろんまだ渋滞問題は根強く残ってるけど、だいぶ改善された。ほんま今までの奴らは何やってんと」
と、私がしゃべる隙もないくらいしゃべり倒してくれた。
インタビューやから全然ええんやけど、一応これ英会話レッスンやからな!(笑)
彼の話に出てきたインフラ整備について、少しご紹介。
従来フィリピンは、脆弱なインフラのために失業と貧困に悩まされてました。というか、今でも解決したわけではないんですが。
リチャード・ジャヴァッド・ヘイダリアン氏がForbes(フォーブス)誌に寄稿したレポートによると、
「マニラの渋滞は脆弱なインフラにより引き起こされており、2012年には約24億ペソ(約50.6億円)の損失に、2030年には3倍になる」とのこと。
「2011年以降、フィリピンは、それまでの平凡な成長を抜け出し、(東南アジア)地域で最も急速に成長する国の中で主役に躍り出ました。しかし、同国の成長は浅く、包括的なものとはほど遠いものでした。失業、貧困と飢餓についてはほぼ触れられない状態となっています。インフラは明らかに同国のアキレス腱です。」
ということで、ドゥテルテ大統領は、「Build Build Build (BBB) プログラム」を発動し、インフラへの支出を加速させ、成長を促し、職を生み出し、フィリピン人の生活をよくするための産業の開発に着手。
BBBプログラムの主要なプロジェクトは、以下の通り。
(1) スービック - クラーク鉄道
(2) ラグーナのロス・バニョスから、マニラのトゥトゥバンとパンパンガのクラーク・フリーポートを結ぶ南北鉄道プロジェクト
(3) パンパンガ・クラークの1500ヘクタールの工業団地
(4) パンパンガのクラーク国際空港の拡張
そのほかのプロジェクトには、(a) エネルギー施設4か所、(b) 水源プロジェクト・灌漑システム10か所、(c) 洪水管理設備5か所、(d) 再開発プログラム3つがあるようです。
まぁインフラ整備は国の基本ですが、しっかりとやってるということですな。
さて、大統領を大絶賛している支持者たちに聞いた「彼の悪い点」は、ほぼ全員が口をそろえて
「口が悪いこと」と答えてくれた。
「ほんま、口が悪いのだけ玉にキズやわ。あれだけ直してほしい」
「ちょっと正直すぎんねん。もっと話す前に一呼吸おいてから言葉選んでほしい」
「大統領が口悪いと、子供らが真似するからホンマあかん」
「普段口悪くても良いから、公式な場でのスピーチくらいは言葉遣いを意識してほしい」
熱狂的な支持者であっても、口が悪いのだけは支持できないらしい。てか、どんなけ口悪いねん(笑)
ちなみに当の本人は
「わし、75年間これで生きてきてんねんで?今更変えれるかいな。死ぬまでこれでいくわ」
と公言している。
いかにもドゥテルテ節って感じですな。
その他の悪い点として挙がってきたのは「警察に甘い」「麻薬取締で人を殺しすぎてる」という2点が目立った。
彼は警察と軍人をかなりリスペクトしているらしく、2018年に警察と軍人の給料を2倍にしたのですが、このことに不満を持つ人もいるようだ。このあたりは後編でも述べたい。
さて最後の質問、「大統領に直接話せるなら何を要望するか?」についてですが、これには実に様々な回答が得られた。
「もっと厳しくして、だらしない国民を律してほしい」
「もっと権力をもってほしい」
「続投してほしい」という熱狂的なものや
「何も言うことは無い」「十分にやってくれている」という満足しているもの
「教育体制をもっと整えて欲しい。教師一人につき生徒50人とか、設備が古いとかが現状。教育こそが国の発展を成し遂げる力となるので是非!」という教育関連や※もちろん現役教師の意見
「セブ島に電車を通してほしい」「ネット回線を整えてほしい。リモートが必須の今の環境ではマスト」というインフラ関係の要望
「働く女性の環境を改善してほしい。120日しか育休が認められてないのは無理ゲー。日本の制度を見習ってほしい」というものまであったが、支持者達は基本的にこれまでの彼の功績に感謝しており、もし望めるなら、こういうことも頑張ってほしいというスタンスだった。
それでは、次回は「支持しない」と回答した人々の回答を見ていきたいと思います。
お楽しみに。
サポートいただいたお金は、こんな僕を育ててくれた母ちゃんに還元したいと思います。